メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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18.最果ての孤島

12.巨竜の縄張り

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 ドラゴンの名前は単純なものが多い。体が赤いからレッドドラゴン。水の深いところに棲んでいるからディープドラゴン。

 ではこのドラゴンは?
 体が大きく、どこか威厳があるように見えたようでグレートドラゴンと名付けられた。
 その話を母から聞かされた時、コストイラは何とも思わなかった。しかし、今は違う。強さは一級品だが、顔が呆れている。威厳なんてものが、この顔のどこにある。

 コストイラは力一杯に刀を鼻先にぶつけた。






 グレートドラゴンの体は、その顔と同様にブルードラゴンと似たような様相をしていた。しかし、異なる部分もある。ブルードラゴンと違い、体は土色で属性は地。体長は15mほどで、ブルードラゴンの5倍近くある。背中に翼が生えているが、1t越えの体で飛べるのだろうか。

 グレートドラゴンが首を捻り、コストイラを打ち上げる。元々浮いていたこともあり、コストイラは抵抗できずに宙へと放り出される。

 グレートドラゴンの口が開く。奥から泥が充填されるのが見えた。また泥か、と思いつつ、この巨体から口出される規模に危惧する。泥のビームが吐き出される。刀で何とか合わせるが、やはり空中にいるせいで、弾かれてしまう。
 コストイラは砂浜でバウンドして海水に頭から突っ込む。

「くっ」

 アストロが手をグレートドラゴンに翳すが、アシドが手首を掴んで下げさせる。

「何?」
「オレには分かる。お前、魔力酔いしかけているだろ」
「だったら何?」
「無理させられるわけねェだろ。行くぞ、シキ、レイド!」
「ん」
「おう」

 アストロはアシドの男らしい一面を見せつけられて、瞳を揺らした。常に強気でいる少女は、自分よりも強い発言に心を震わせた。しかし、仲間であり、自分の好きな人を助けたいとも思った。

 恋する乙女は人の言葉と、好きな人の危機のどちらを取ることを選ぶのか。

 そんなものは決まっている。仲間の命にしか天秤は傾かない。

 その時、何かに抱き着かれた。いや、何かというのは止めよう。エンドローゼだ。頬を膨らませて息を止め、アストロの動きを止めようとしている。
 エンドローゼの腕力などどうということはないし、動きが完全に止まったわけでもない。そもそも魔法使い相手に左腕を自由にした状態の拘束は、果たして意味のある行動なのだろうか。

 左手に魔力を集約させようとした時、ぞくりと背筋が凍った。
 あぁ、これ。フォンが見ているな。ここでもし魔力なり魔術なりを放ったら、重大な裏切りとしてフォンから天罰が下るかもしれない。五指を広げていた左手で手刀をつくり、エンドローゼの脳天に落とした。

「てい」
「あう」

 エンドローゼが天頂を押さえて蹲った。エンドローゼが涙目で訴えているが、アストロは鼻を鳴らして一蹴した。アストロは尻が汚れるのを気にせず、エンドローゼの隣を陣取って座った。






 なおもコストイラしか目に入っていなかったグレートドラゴンの横っ面を叩いてやる。テメェの相手はコストイラだけじゃねェからな。

 少しばかり私怨の篭った一撃に、グレートドラゴンの体が傾く。傾いたとはいえ、流石は1t越えの巨体と言うべきだろう。数㎝しか浮いていない。
 流石グレート。と思っていると、後ろからシキが追い着いた。なんてことはないただのナイフ一閃。だというのに、スパァと首の皮膚が斬れた。反則級の切れ味に舌を打つ。その切れ味、オレにもくれよ。

 レイドがグレートドラゴンの頭にタックルする。グレートドラゴンの首がメリメリと剥がれていった。グレートドラゴンの血がどくどくと砂を汚す。その地に誘われるようにモゴリと地面が盛り上がった。少し顕わになる土色の肌。体の大きさに合っていない小さなつばさ。何を考えているか分からない顔は、こちらをとことん苛立たせてくる。

 グレートドラゴンは2体いた。

「シキ!」
「ッ!」

 名前をだけですべてを察したシキが、ナイフを薙いだ。ナイフはいともたやすくグレートドラゴンの首の上部を切った。しかし、そこに重要な血管がない。出血はしたが、構わず行動する。

 今出現したグレートドラゴンは、先ほどの奴よりも大きい。18mくらいはあるだろう。
 アストロも参加したいが、再びエンドローゼに抱き着かれてしまい、今度こそ動けない。アレンは圧倒的なまでの実力差・戦力差に悲観していた。この先の僕は何もできない、ただのお荷物なのではないか?

 アレンの心は荒んでいくばっかりだ。
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