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18.最果ての孤島
6.行きたかった海へ
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洞窟の出口が近づくにつれ、潮の匂いが強くなってきた。海に行くことを言い始めたアシドの足取りが軽くなってきた。
そしてついに出口から飛び出した。
「フゥ!! 昂ってきた♪」
アシドがガッツポーズをしながらジャンプした。本当に行きたかったんだな、と呑気に考えながらアシドの後ろを歩く。
2分も歩くと木々の隙間から海が見えた。アシドが全てを放り投げて海に飛び込もうとする。
しかし、海からザバリと何かが出てくる。いったん海に入るのを止める。
「何が出てきた?」
アシドが身を屈めて叢に身を隠す。アレン達が注意しながら観察する。刺々しい見た目をしたドラゴンが体を見せた。藍色の巨体をイヌのように体を揺すり、水を飛ばしている。
スパイクドラゴンが大きく口を開けた。一瞬バレれブレスが飛んでくるのかと思ったが、ただ欠伸をしたようだ。のそりのそりと動きだし、森に向かおうとした。
「お? どっか行くのか?」
アシドが前のめりになり、スパイクドラゴンの行方を見守る。
叢の中にスパイクドラゴンが消えていく。アシドが嬉々として叢から飛び出して海に向かった。いささか早すぎではないかと思うが、それほど楽しみにしていたということだろう。
「アイツ早すぎだろ」
コストイラが膝に手をついて立ち上がろうとする。ドガァンと土埃を立てて木々が吹き飛んだ。
『オオオオオッ!』
「アイツ早すぎだろ!!」
森の中に消えたスパイクドラゴンが戻ってきた。アシドが飛び出したのが早すぎて、スパイクドラゴンに捕捉されてしまった。スパイクドラゴンが口を大きく開ける。今度は欠伸ではなく攻撃だ。
泡がいくつも吐き出される。アシドが目を丸くすると、唐突に足を止めて踊るように躱していく。
コストイラから刀を抜いて叢を飛び出した。アストロが魔力を撃ちだし、スパイクドラゴンの眼を穿った。スパイクドラゴンの顔がこちらを向く。アレンとエンドローゼは気迫に押され、背筋が伸びる。
「こっちだオラァ!」
アシドが槍を振るってスパイクドラゴンの頬を叩く。弾かれるように体が傾いた。倒れそうになる。浮いた左足をバタつかせて元の状態に戻る。足が河岸の砂に着地し、砂を少し巻き上げた。
何が殴ったのか確認しようと目を動かすと、ガクンと激痛と共に体が下がる。アシドへと行きかけた視線が自分の脚へと移る。
自分の脚がある。体が沈む中、ピンと地に対し垂直に立っていた。自分の脚が斬られた。4本の脚が3本に減ったことでバランスが失われ、もはや立つことも難しい。ブルブルと震えながらバランスを取ろうとする。コストイラは刀を上部目掛けて振るう。スパイクドラゴンの下顎が切られ、血液がダボっと出てくる。
重力で血液が落ちるが、それ以外は出ない。オレンジと黒の混じった煙がでない。煙が重力で落ちないからだろうか。その一撃によりスパイクドラゴンのバランスは完全に失った。横に倒れた瞬間、傷口から多量のオレンジと黒の混じった煙が噴き出た。
スパイクドラゴンがバタバタと暴れて立ち上がろうとする。スパイクドラゴンの頭から炎が上がる。覚えのないコストイラは目を丸くして後ろに跳ぶ。炎で頭を包むなどという芸当が出来るのはアストロしかいない。
アストロは感情の読めない顔を向けていた。
「えっと?」
「その経験値は私が貰った。これ以上差はつけられたくない」
「あーー。そりゃそうだな」
コストイラが刀を収めながら、納得したような声を出した。
「ところでアシドは?」
「海で遊んでいるぞ」
アシドは踝まで波に浸かり、パチャパチャと足踏みして楽しんでいる。顔が輝いていて本当に楽しそうだ。
「あんなに楽しそうにして、そんなに楽しみにしてたの?」
「あれでいて、結構精神は子供のままだよな」
「オマエモナー」
「オマエモナー」
「「へへへへへへへ」」
仲良く漫才している。2人を置いて、エンドローゼがパタパタとアシドに近づいて行く。何かと思ったが、ズボンの裾をまくり、一緒にパチャパチャやり始めた。やりたかったらしい。
アレンとレイドは海に興味がないので、いつまでやっているのだろうか、と半眼を送る。
シキはこんがり焼けたスパイクドラゴンの下顎を切り取り、口に運んだ。
そしてついに出口から飛び出した。
「フゥ!! 昂ってきた♪」
アシドがガッツポーズをしながらジャンプした。本当に行きたかったんだな、と呑気に考えながらアシドの後ろを歩く。
2分も歩くと木々の隙間から海が見えた。アシドが全てを放り投げて海に飛び込もうとする。
しかし、海からザバリと何かが出てくる。いったん海に入るのを止める。
「何が出てきた?」
アシドが身を屈めて叢に身を隠す。アレン達が注意しながら観察する。刺々しい見た目をしたドラゴンが体を見せた。藍色の巨体をイヌのように体を揺すり、水を飛ばしている。
スパイクドラゴンが大きく口を開けた。一瞬バレれブレスが飛んでくるのかと思ったが、ただ欠伸をしたようだ。のそりのそりと動きだし、森に向かおうとした。
「お? どっか行くのか?」
アシドが前のめりになり、スパイクドラゴンの行方を見守る。
叢の中にスパイクドラゴンが消えていく。アシドが嬉々として叢から飛び出して海に向かった。いささか早すぎではないかと思うが、それほど楽しみにしていたということだろう。
「アイツ早すぎだろ」
コストイラが膝に手をついて立ち上がろうとする。ドガァンと土埃を立てて木々が吹き飛んだ。
『オオオオオッ!』
「アイツ早すぎだろ!!」
森の中に消えたスパイクドラゴンが戻ってきた。アシドが飛び出したのが早すぎて、スパイクドラゴンに捕捉されてしまった。スパイクドラゴンが口を大きく開ける。今度は欠伸ではなく攻撃だ。
泡がいくつも吐き出される。アシドが目を丸くすると、唐突に足を止めて踊るように躱していく。
コストイラから刀を抜いて叢を飛び出した。アストロが魔力を撃ちだし、スパイクドラゴンの眼を穿った。スパイクドラゴンの顔がこちらを向く。アレンとエンドローゼは気迫に押され、背筋が伸びる。
「こっちだオラァ!」
アシドが槍を振るってスパイクドラゴンの頬を叩く。弾かれるように体が傾いた。倒れそうになる。浮いた左足をバタつかせて元の状態に戻る。足が河岸の砂に着地し、砂を少し巻き上げた。
何が殴ったのか確認しようと目を動かすと、ガクンと激痛と共に体が下がる。アシドへと行きかけた視線が自分の脚へと移る。
自分の脚がある。体が沈む中、ピンと地に対し垂直に立っていた。自分の脚が斬られた。4本の脚が3本に減ったことでバランスが失われ、もはや立つことも難しい。ブルブルと震えながらバランスを取ろうとする。コストイラは刀を上部目掛けて振るう。スパイクドラゴンの下顎が切られ、血液がダボっと出てくる。
重力で血液が落ちるが、それ以外は出ない。オレンジと黒の混じった煙がでない。煙が重力で落ちないからだろうか。その一撃によりスパイクドラゴンのバランスは完全に失った。横に倒れた瞬間、傷口から多量のオレンジと黒の混じった煙が噴き出た。
スパイクドラゴンがバタバタと暴れて立ち上がろうとする。スパイクドラゴンの頭から炎が上がる。覚えのないコストイラは目を丸くして後ろに跳ぶ。炎で頭を包むなどという芸当が出来るのはアストロしかいない。
アストロは感情の読めない顔を向けていた。
「えっと?」
「その経験値は私が貰った。これ以上差はつけられたくない」
「あーー。そりゃそうだな」
コストイラが刀を収めながら、納得したような声を出した。
「ところでアシドは?」
「海で遊んでいるぞ」
アシドは踝まで波に浸かり、パチャパチャと足踏みして楽しんでいる。顔が輝いていて本当に楽しそうだ。
「あんなに楽しそうにして、そんなに楽しみにしてたの?」
「あれでいて、結構精神は子供のままだよな」
「オマエモナー」
「オマエモナー」
「「へへへへへへへ」」
仲良く漫才している。2人を置いて、エンドローゼがパタパタとアシドに近づいて行く。何かと思ったが、ズボンの裾をまくり、一緒にパチャパチャやり始めた。やりたかったらしい。
アレンとレイドは海に興味がないので、いつまでやっているのだろうか、と半眼を送る。
シキはこんがり焼けたスパイクドラゴンの下顎を切り取り、口に運んだ。
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