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18.最果ての孤島
1.悪鬼の洞窟
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ゴンゴンと鉄の扉を叩く。太陽信仰者と精霊の郷を区切るために使われていた扉と同じ扉だ。
「またこれがあるってことは、この先に何かあるんだろうな」
「そうね」
コストイラがグッと扉を押す。扉がそれに合わせて開いていく。扉の向こうにはまだ森が広がっていた。何か特別、景色が変わったわけではない。
どこか拍子抜けしてしまったが、ゼラチナスキューブのように唐突に現れる可能性があるので油断できない。注意深く警戒しながら森の中を歩く。もの凄い量の視線を浴びているが、その視線を送ってくる主がこちらに動いてこない。おそらく精霊の女王を倒したことで、精霊達が敵対したのだろう。こちらに来ない時点でこちらから攻撃を仕掛けることはない。
森の先には洞窟があった。アレン達の行きたくない嫌な場所の一つだ。森や外れの家屋以上に面倒な場所である洞窟では、アストロがお荷物になってしまう。
「お?それなりに広いんじゃあないか?」
「…………微妙な感じね。広いとも言えるし、狭いとも言えるわ」
「おぉ」
アストロの返答に、肩を竦めて溜息を吐く。
「この洞窟が短いことを祈るぜ」
コストイラの祈りは届かず、10分歩いても出口の光すら見えない。救いは、まだ魔物が出てきていないことだろう。
『グルゥ』
前から棘棍棒を持った赤鬼が登場した。赤鬼はこちらを見るとすぐに走ってきた。最も赤鬼に近かったコストイラが狙われたが、半歩後ろに下がることで躱し、居合斬りで首を斬り落とす。コストイラの居合が日に日に速度を増しており、すでにレイドでも見ることができなくなっていた。
「やっぱ魔物は出るよな」
『グルッ!!』
その光景を見られてしまい、赤青の鬼が大量に出現する。もしかしたらこの近くで集落を築いた知性を持つ魔物だったのかもしれない。
しかし、襲ってくるのであれば相手するしかあるまい。コストイラの横を魔術が通り過ぎる。
「え?」
「何?」
「え、いや、魔術はキツイって」
「出力を絞ればいけるわよ」
コストイラは何か言いたげにもにょもにょと口を動かすが、前を向いて刀を構える。炎を纏い、突貫していった。
棘棍棒を振るい、コストイラの頭を砕こうとするが、レベルの高いコストイラは止まらない。アシドとシキがコストイラを追うように戦闘に参加していく。アシドは槍を振るって赤青鬼を倒し、シキはナイフだけでなく体術も加えて圧倒していく。
恋する乙女なアストロは周りへの気遣いが半端じゃないので、仲間を巻き込めないために魔術を放てない。3人の討ち漏らした魔物を倒そうと思っているのだが、一切の討ち漏らしがない。
後ろの方にいた赤青鬼が恐怖に戦き、逃走した。もう戦う相手がいなくなって初めてフゥと息を吐いた。コストイラが返り血を雑に拭う。アシドが伸びをすると、パキパキと骨が鳴った。シキはナイフの血を拭っている。
「アンタ達が強くなるたびに、私達が戦う機会が減って、レベル差が開いていく気がするわ」
アストロが後ろから近づき、シキの頬を挟みながら文句を言う。シキは行為を中断させられているが、敵意がないので無抵抗だ。
「アンタのレベルはいくつなのよ」
「100」
頬を引っ張られながらシキがさらりと言った。アストロの手が止まり、シキの頬が解放された。シキが不思議そうにアストロの顔を見た。アストロが驚愕の顔をシキに向ける。
「え、100?」
「…………ん」
「え? コストイラ達は!?」
アストロが珍しく感情を曝け出して焦っている。
「えっと、オレは96だな」
「あー、オレは92だ」
いつの間にか90を超えている者だらけだ。
「そういうアストロはどうなんだよ」
「わ、私はは、87よ」
「…………ちょっと自重するわ」
コストイラが自分と10近く離れていることを知り、身を縮めて目を背向けている。
「れ、レイド達は?」
「私は91だ。なんだかんだ言って楯として戦ってきたからな」
「うえ。オレってレイドと差が1しかないのか。オレって結構前に出てたから、もっと差が開いていると思ってたわ」
レイドの答えを聞いて、アシドが頭を抱えた。
「僕は84ですね」
「え」
アレンがレベルを言うと、なぜかエンドローゼが反応した。なぜエンドローゼが?
「わ、わ、私は、は、は、は」
「は?」
「は、85です」
「え?」
アレンは驚愕した。エンドローゼはアレンよりもレベルが高かった。心臓の鼓動がどんどんとうるさい。もし聞かれたら何を思われるか。
「何かドンドン鳴ってんな」
「いや、鳴って」
そこで気付いた。これは地鳴りの音だ。
「またこれがあるってことは、この先に何かあるんだろうな」
「そうね」
コストイラがグッと扉を押す。扉がそれに合わせて開いていく。扉の向こうにはまだ森が広がっていた。何か特別、景色が変わったわけではない。
どこか拍子抜けしてしまったが、ゼラチナスキューブのように唐突に現れる可能性があるので油断できない。注意深く警戒しながら森の中を歩く。もの凄い量の視線を浴びているが、その視線を送ってくる主がこちらに動いてこない。おそらく精霊の女王を倒したことで、精霊達が敵対したのだろう。こちらに来ない時点でこちらから攻撃を仕掛けることはない。
森の先には洞窟があった。アレン達の行きたくない嫌な場所の一つだ。森や外れの家屋以上に面倒な場所である洞窟では、アストロがお荷物になってしまう。
「お?それなりに広いんじゃあないか?」
「…………微妙な感じね。広いとも言えるし、狭いとも言えるわ」
「おぉ」
アストロの返答に、肩を竦めて溜息を吐く。
「この洞窟が短いことを祈るぜ」
コストイラの祈りは届かず、10分歩いても出口の光すら見えない。救いは、まだ魔物が出てきていないことだろう。
『グルゥ』
前から棘棍棒を持った赤鬼が登場した。赤鬼はこちらを見るとすぐに走ってきた。最も赤鬼に近かったコストイラが狙われたが、半歩後ろに下がることで躱し、居合斬りで首を斬り落とす。コストイラの居合が日に日に速度を増しており、すでにレイドでも見ることができなくなっていた。
「やっぱ魔物は出るよな」
『グルッ!!』
その光景を見られてしまい、赤青の鬼が大量に出現する。もしかしたらこの近くで集落を築いた知性を持つ魔物だったのかもしれない。
しかし、襲ってくるのであれば相手するしかあるまい。コストイラの横を魔術が通り過ぎる。
「え?」
「何?」
「え、いや、魔術はキツイって」
「出力を絞ればいけるわよ」
コストイラは何か言いたげにもにょもにょと口を動かすが、前を向いて刀を構える。炎を纏い、突貫していった。
棘棍棒を振るい、コストイラの頭を砕こうとするが、レベルの高いコストイラは止まらない。アシドとシキがコストイラを追うように戦闘に参加していく。アシドは槍を振るって赤青鬼を倒し、シキはナイフだけでなく体術も加えて圧倒していく。
恋する乙女なアストロは周りへの気遣いが半端じゃないので、仲間を巻き込めないために魔術を放てない。3人の討ち漏らした魔物を倒そうと思っているのだが、一切の討ち漏らしがない。
後ろの方にいた赤青鬼が恐怖に戦き、逃走した。もう戦う相手がいなくなって初めてフゥと息を吐いた。コストイラが返り血を雑に拭う。アシドが伸びをすると、パキパキと骨が鳴った。シキはナイフの血を拭っている。
「アンタ達が強くなるたびに、私達が戦う機会が減って、レベル差が開いていく気がするわ」
アストロが後ろから近づき、シキの頬を挟みながら文句を言う。シキは行為を中断させられているが、敵意がないので無抵抗だ。
「アンタのレベルはいくつなのよ」
「100」
頬を引っ張られながらシキがさらりと言った。アストロの手が止まり、シキの頬が解放された。シキが不思議そうにアストロの顔を見た。アストロが驚愕の顔をシキに向ける。
「え、100?」
「…………ん」
「え? コストイラ達は!?」
アストロが珍しく感情を曝け出して焦っている。
「えっと、オレは96だな」
「あー、オレは92だ」
いつの間にか90を超えている者だらけだ。
「そういうアストロはどうなんだよ」
「わ、私はは、87よ」
「…………ちょっと自重するわ」
コストイラが自分と10近く離れていることを知り、身を縮めて目を背向けている。
「れ、レイド達は?」
「私は91だ。なんだかんだ言って楯として戦ってきたからな」
「うえ。オレってレイドと差が1しかないのか。オレって結構前に出てたから、もっと差が開いていると思ってたわ」
レイドの答えを聞いて、アシドが頭を抱えた。
「僕は84ですね」
「え」
アレンがレベルを言うと、なぜかエンドローゼが反応した。なぜエンドローゼが?
「わ、わ、私は、は、は、は」
「は?」
「は、85です」
「え?」
アレンは驚愕した。エンドローゼはアレンよりもレベルが高かった。心臓の鼓動がどんどんとうるさい。もし聞かれたら何を思われるか。
「何かドンドン鳴ってんな」
「いや、鳴って」
そこで気付いた。これは地鳴りの音だ。
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