メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

文字の大きさ
上 下
319 / 400
17.彼岸

20.地獄の門

しおりを挟む
 シキ達勇者一行は目の前に一本道を見つけた。正直、それだけだったらどれほどよかっただろう。それだけであれば興味が湧かなかっただろう。しかし、その一本道は崖であり、中間地点に門が設置されているのだ。

 ここまでされてコストイラ達が興味を示さない方がおかしい。

 とはいえ、今はそれどころではない。赤鬼の群れが現れたのだ。全員が自然では絶対に見ることができないであろう棍棒を手にしており、すでに臨戦態勢に入っていた。

 超暴力による棍棒が振られる。コストイラは身を低くして躱し、一気に距離を詰めると刀を抜いた。鞘から解かれた刀は当然の如く赤鬼の体を切り裂く。
 仲間の死に憤慨した赤鬼達は奮起するも、仲良く刎頸される。残された仲間はいつの間にか後ろにいたシキに殺される。

「慢心をするつもりはないけど、大抵の場合、あの2人で終わっちゃうのよね」

 魔術を放とうとしたままの姿勢を解き、肩を竦めた。アストロはそのまま指で銃を作り、横を指した。何かと思ったら、指から魔力が発射された。その先にいたステンノ―の顔面が打ち抜かれた。

 そちらにはステンノ―の群れがいた。ステンノ―の群れにアシドが突っ込む。振るわれる槍に丸盾を挟むが、ステンノ―の体が浮かび上がる。アシドが勢いよく突きを繰り出す。ステンノ―の体に風穴が開いた。
 後ろから魔術が通り過ぎる。アストロの魔術コントロールはトップクラスだ。だからこそアシドは驚いたりしない。
 ステンノ―全員が魔術の餌食となる。流石アストロと思ったアシドの後頭部に魔力が当たった。

「ブッ!?」

 すごい勢いで前傾になり、体が浮き上がりそうになる。アシドは自ら跳んで一回転して着地した。

「は?」

 後頭部を押さえながら振り返る。アシドが信じられないという目をアストロに向ける。

「あ、ごめ、当たっちゃった」
「おい、ごめんじゃねぇだろ。オレに当たったのは魔術じゃなくて魔力。わざとぶつけただろ!」
「何かぶつけなきゃいけない気がしたのよ」
「ぬぁ~~に~~!?」

 アシドとアストロが額を突き合わせて口論している。コストイラが鞘に収めながら目を逸らした。あまり中に割って入ることは考えていない。

 シキはナイフに付着した血液を拭いながら合流する。シキはナイフを腰に取り付けている鞘にしまった。何もなくなった手を2,3回開閉すると、エンドローゼに近づいた。エンドローゼにはなぜ近づいてくるのか分からず、狼狽えてしまう。
 回復が欲しいのかと思い手を翳すと、シキがその手を握った。エンドローゼは訳が分からず混乱してしまう。アレンは羨ましそうに見つめるが、シキもエンドローゼも気づかない。

 バキベキと木々が倒れた。何かと思うが、音の主は大きすぎてよく見えた。

 サラマンドラは、長い首を擡げてこちらを睥睨してくる。サラマンドラと戦うこと自体は何も問題でもないが、土地の方に問題がある。ここは森だ。火を吐かれたらあっという間に燃え広がるだろう。そして逃げ場がないほどに燃え上がるだろう。
 そもそものことだが、サラマンドラは火山口付近に住んでいるはずだ。無論、すべての個体がそうではないことぐらいは理解しているつもりだ。何と戦いづらいことか。

 サラマンドラが遠慮なしに炎を吐いてくる。正直そんなことするな、と怒りたいくらいだが、そんな時間はない。
 自然と手摺のない一本道に誘導される。近づいて初めて分かったが、この崖相当高い位置にある。これまで様々な高所から落ちてきたアレン達だが、この高さは恐怖を覚えてしまう。まぁ、怖がっているのは高所恐怖症のアレンとエンドローゼだけなのだが。

 アシド、コストイラ、シキの3人はすぐに反転して走り出す。

 サラマンドラは喉に炎を溜めていた。アシドは槍をゴルフクラブのように下から上に振り上げ、石を弾き飛ばす。石は砕けたことでショットガンのようになっており、すべてが喉を攻撃する。
 シキがサラマンドラの前脚を切り刻む。足が体を支えることができず頭が下がる。コストイラが刀に炎を纏わせると、螺旋状にジャンプして首を斬る。森の中で炎を扱うのは駄目だと思っていたのだが、コストイラは簡単に使う。もしかして感覚がおかしいのはアレンの方か?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

元英雄 これからは命大事にでいきます

銀塊 メウ
ファンタジー
異世界グリーンプラネットでの 魔王との激しい死闘を 終え元の世界に帰還した英雄 八雲  多くの死闘で疲弊したことで、 これからは『命大事に』を心に決め、 落ち着いた生活をしようと思う。  こちらの世界にも妖魔と言う 化物が現れなんだかんだで 戦う羽目に………寿命を削り闘う八雲、 とうとう寿命が一桁にどうするのよ〜  八雲は寿命を伸ばすために再び 異世界へ戻る。そして、そこでは 新たな闘いが始まっていた。 八雲は運命の時の流れに翻弄され 苦悩しながらも魔王を超えた 存在と対峙する。 この話は心優しき青年が、神からのギフト 『ライフ』を使ってお助けする話です。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

処理中です...