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17.彼岸
4.二柱の太陽神
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エリオ教にとって太陽は一つしかない。しかし、エリオ教には太陽がいくつも存在している。
それはエリオ教が貴族に広まったことが要因だ。貴族は自分が特別で優れた存在でありたいと思う者達が多い。それが故に貴族は誰よりも自分が上の存在であることを望み、それが行き過ぎた者は神を自称し始める。
彼岸の地にある太陽の塔には、その似非神々が集まってくる。しかし、この太陽の塔には似非神の番人がおり、本物の如き態度で回りを蹴落としていた。
その一柱であるイフリータの絶叫が響いた。塔の上で猫のように丸まっていた羽毛のある蛇が瞬時に反応した。オレンジの瞳をイフリータに向けると、左手首がなくなっているのが見えた。ケツァルコアトルは先端が淡青色となっている白色の翼を羽ばたかせ、空へと飛び上がった。
コストイラはイフリータの姿越しにそれを見た。
太陽を背にした手足のないシルエット。広げられた翼から考えれば体長は10m以上はありそうだ。そして、火球が飛んできた。火球はイフリータを擦り抜け、着弾していく。勇者一行はイフリータから離れていくことを余儀なくされた。
塔の上の魔物が羽ばたきに合わせて、体をくねらせ、イフリータの元まで飛んでくる。
「翼のあたりに魔力が集まっているわね。龍と同じように魔力で飛んでいるみたいね」
アストロがレイドの楯に隠れながら、観察する。アストロがアレンの袖を引く。
「狙いやすい場所まで移動するわ。気を引く役目は任せた」
「それ、僕なんですか? アシドさんじゃなくて?」
「貴方の方が簡単に引けるでしょ?」
「私とアシドで守り切ってやる。任せておけ」
「え? お、おう。任せとけ」
呼ばれるとは思っていなかったのか、アシドの挙動不審になっている。アシドがアストロを担ぐのを見て、アレンは魔眼を発動させる。
蹲るイフリータとその上を円を描いて飛ぶケツァルコアトルがアレンの方を向く。
その隙を見逃さず、叢に身を隠しながらアストロが、ケツァルコアトルの片翼を打ち抜く。ケツァルコアトルの翼に溜まっていた魔力が霧散していく。魔力が集まるとすぐに抜けていく。ケツァルコアトルはもう飛べない。
イフリータはケツァルコアトルを庇うように覆い被さろうとする。しかし、横からコストイラが邪魔をする。刀の柄でイフリータのこめかみを殴り、よろめいたところに一刀する。イフリータの首が落ちた。
シキは飛ばされてから叢の中で観察していた。自分が出なければならないタイミングを計るためだ。シキにとって仲間の存在は大きい。今までの戦場においてシキが必要になる場面が必要になったことは一度もない。
だからこそ、シキはタイミングを掴めない。
コストイラがイフリータを討った。空中にいるコストイラは、下から来るケツァルコアトルの口撃を避けれるわけがない。しかし、それでもシキは動かない。
シキの眼には敵ではない闖入者が見えていたからだ。
それはエリオ教が貴族に広まったことが要因だ。貴族は自分が特別で優れた存在でありたいと思う者達が多い。それが故に貴族は誰よりも自分が上の存在であることを望み、それが行き過ぎた者は神を自称し始める。
彼岸の地にある太陽の塔には、その似非神々が集まってくる。しかし、この太陽の塔には似非神の番人がおり、本物の如き態度で回りを蹴落としていた。
その一柱であるイフリータの絶叫が響いた。塔の上で猫のように丸まっていた羽毛のある蛇が瞬時に反応した。オレンジの瞳をイフリータに向けると、左手首がなくなっているのが見えた。ケツァルコアトルは先端が淡青色となっている白色の翼を羽ばたかせ、空へと飛び上がった。
コストイラはイフリータの姿越しにそれを見た。
太陽を背にした手足のないシルエット。広げられた翼から考えれば体長は10m以上はありそうだ。そして、火球が飛んできた。火球はイフリータを擦り抜け、着弾していく。勇者一行はイフリータから離れていくことを余儀なくされた。
塔の上の魔物が羽ばたきに合わせて、体をくねらせ、イフリータの元まで飛んでくる。
「翼のあたりに魔力が集まっているわね。龍と同じように魔力で飛んでいるみたいね」
アストロがレイドの楯に隠れながら、観察する。アストロがアレンの袖を引く。
「狙いやすい場所まで移動するわ。気を引く役目は任せた」
「それ、僕なんですか? アシドさんじゃなくて?」
「貴方の方が簡単に引けるでしょ?」
「私とアシドで守り切ってやる。任せておけ」
「え? お、おう。任せとけ」
呼ばれるとは思っていなかったのか、アシドの挙動不審になっている。アシドがアストロを担ぐのを見て、アレンは魔眼を発動させる。
蹲るイフリータとその上を円を描いて飛ぶケツァルコアトルがアレンの方を向く。
その隙を見逃さず、叢に身を隠しながらアストロが、ケツァルコアトルの片翼を打ち抜く。ケツァルコアトルの翼に溜まっていた魔力が霧散していく。魔力が集まるとすぐに抜けていく。ケツァルコアトルはもう飛べない。
イフリータはケツァルコアトルを庇うように覆い被さろうとする。しかし、横からコストイラが邪魔をする。刀の柄でイフリータのこめかみを殴り、よろめいたところに一刀する。イフリータの首が落ちた。
シキは飛ばされてから叢の中で観察していた。自分が出なければならないタイミングを計るためだ。シキにとって仲間の存在は大きい。今までの戦場においてシキが必要になる場面が必要になったことは一度もない。
だからこそ、シキはタイミングを掴めない。
コストイラがイフリータを討った。空中にいるコストイラは、下から来るケツァルコアトルの口撃を避けれるわけがない。しかし、それでもシキは動かない。
シキの眼には敵ではない闖入者が見えていたからだ。
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