メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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16.天界

2.霊山に風が吹く

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「ま、分かりやすい目印ではあるな」

 コストイラが手で傘を作りながら、目的地にしようとしている山頂を眺める。ここからでもわかる山頂の大きな木を眺める。

「何か不満ですか?」
「……まだ登んのかよってだけ」

 コストイラが左肩をぐるりと回すと、山頂に向かって歩き出す。きっとコストイラは今までは城やら宮殿やら楽しい何かを期待していたのだろう。しかし、それはアレンが却下しよう。何せ心臓に悪いからな。
 ふわりとアレンの前髪が浮く。奈落ではあまり遭遇しなかった気持ちのいい風だ。爽やかと表現すればいいのだろうか。

 そんなことを考えていたら、目の前を刀が通過する。

「へ?」
「この風、攻撃だ」

 コストイラが何を言っているのか理解できなかったが、直後のアストロの言葉で理解する。

「カマイタチみたいなことよね」
「あぁ」
「な、成る程」

 魔物の攻撃の危機察知能力が、アレンが低いだけなのか、コストイラが高すぎるのか分からないが、どうやら魔物から攻撃を受けている。アレンが見えない敵をどう倒そうか考えようとすると、シキが飛び出した。シキが魔物をストックのない最後のナイフで切り倒す。

『キィイイイイイイイ!!』

 倒れただけでまだ絶命には至っていない。魔物はすぐに立ち上がろうとするが、その前にコストイラが刀を抜く。

 綺麗だと素直に思えるほど、流れるような剣技だった。知り合いと会えば会うほど、コストイラの中の何かが研ぎ澄まされていく。
 すごく滑らかな動きで抵抗なく、魔物を斬る。一瞬にしてバラバラにしてのけ、ぴったりと着地する。刀を空でパッパッと振り、血を飛ばすと鞘に収める。

ましらの姉ちゃんに会ってから、いろんなものが見えている気がする」
「なわけ」
「あいて」

 覚醒したと豪語するコストイラに木の枝をぶつける。アストロの投げたふんわり軌道の木の枝さえぶつけられ、コストイラは頭を擦る。
 コストイラの前髪がふわりと浮く。爽やかな風だ。アレンはまた魔物かと思ったが、コストイラやシキが動こうとしない。魔物の関与がない自然の生み出した風のようだ。

 山頂に辿り着いた一行が見えた景色の中には宮殿があった。アレンがバッと後ろを見る。他6人の反応を見るためだ。

 エンドローゼ。景色に見惚れていて目をキラキラさせている。
 レイド。遠くを見るように手で傘を作っている。
 アストロ。じっと宮殿を見つめている。これは危ない。
 アシド。槍で肩を叩きながら宮殿を見つめている。
 シキ。目を眇めて宮殿の更にその向こうを見つめている。
 コストイラ。手で傘を作り、宮殿をキラキラした目で見ている。

 これは駄目だ。絶対に宮殿へと行くことになりそうだ。しかし、あれは確実に面倒事だ。行きたくない。

「よし、次行くべきなのはあの宮殿だな」

 ほらやっぱり行くことになる。アレンは説得をしようとすることなく、適当に頷いておいた。
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