271 / 391
15.奈落
16.―火の試練―
しおりを挟む
「何だ貴様等挑戦者か挑戦者だなよし登録してやろうお前らは見たことないから予選を行わなければなさぁさぁさぁそらとっとと行った」
足を入れた瞬間、句読点なくマシンガントークをしてきた男に、番号札の書かれた布を叩きつけられた。
何で番号じゃなくて番号札なんだろうかとか、番号札に書かれているのは特別枠なんだがとか疑問を浮かべるが、その前に突っ込まなければならないことがある。
「あれ、これ僕達全員が出場することになってませんか?」
アレンが自身を指さし、周りの反応を見ると、全員が頷いた。
叩きつけられた布の輪に腕を通し、針で止める。コストイラがフゥと息を吐く。
うずうずしている。今すぐにでも大声を出して暴れ出したいほどに、体内でエネルギーが暴れ狂っている。
これで心の準備はできた。
コストイラが光溢れる会場に足を向けた。
「さて、本日飛び入りで参加してくれた奴らがいる。しかし、残っているのは前回チャンピオンと挑戦者一名のみ。ゆえに、参加者には万全の挑戦者といきなり戦ってもらいます!」
「「「「「オオオオオオオオオ‼」」」」」
会場のアナウンスにより、会場全体から歓声が上がる。声の総量は大きく、会場全体が揺れた。コストイラが会場に出ようとすると、前にいた兵士に止められる。
「あん?」
「前口上がある。それに合わせて入場してくれ」
「はいよ」
コストイラは大人しく一歩下がり、口上を待つ。
「挑戦者はコイツ。現在15戦14勝1分け。3mの巨体を巧みに使い、来る敵全てを薙ぎ払い倒していく。負け知らずの悪魔、バルログ。ミメースウガイ‼」
『ゴォオオオオオ!!』
口上に合わせ、コストイラの向かいにある入り口から、両拳を天へと突き上げた姿勢で入場しながら大声を上げる。会場を練り歩くバルログに口笛や歓声を浴びる。
バルログがぐるりと回り、元入ってきた入り口に戻る。コストイラの口上が始まる。
「参加者はこの男。お前等は覚えているか? あの恐怖を、あの絶望を、紅い髪に黄色い目をしたあの悪魔を。退治屋フラメテの一人息子、コストイラ!!」
「「「「「「「「「し、ね~~~~~!!」」」」」」」」」
バルログと同じように叫ぼうとして呑まれた。コストイラは思った。よくそこまで調べているな。そして、母さん何したん?
コストイラは怒号を浴びながら入場する。殺すように叫ばれるバルログと堂々と対峙し、鮫のような笑みを見せつける。
「それでは、バトル、開始!!」
開始の合図がなされた途端、バルログが駆けだす。巨体とは思えない速度だ。
コストイラは、原則として不殺とされている闘技場から支給された刃の潰された刀を握る力を強める。バルログを見たのは妖怪の山で見た個体だけだ。あの時の恐怖はもうない。むしろワクワクした気持ちだけだ。
迫る巨体に一歩も引かず、刀を構える。薙がれる拳に刀を合わせ、そこで初めて失態に気付いた。この刀は刃が潰されている。つまり、この拳は止まらない。
気付いた時にはもう遅い。コストイラの体は浮き上がり、壁面に飛ばされる。そのまま激突して、壁面に沈む。その瞬間、会場が割れんばかりの歓声に包まれた。
「何て言うかアウェーね」
「はい。もの凄くそうですね」
アレン達はアウェーの空気に身を縮こませていた。アストロ、アシド、レイドの3人は堂々としており、シキは無表情すぎて恐い。
「怖いよね。これが集団心理ってやつさ」
アレンの後ろから声がした。その声は主はシキの背に寄っかかる。衝撃でシキの姿勢が少し前傾になる。
「私はあっちのコスロイラ? を応援しちゃおうかなぁ?」
必要以上にくっつかれて面倒になり始めたシキが、肩に乗せられている誰かの顔を攻撃しようと掌で叩こうとする。
「うおっ!?」
誰かは迫る掌に気付き、早くに対処のための行動をして、手を合わせてパチンと鳴らす。誰かの手の甲と誰かの唇が触れる。
「ごめん、ごめん、離れるよ」
シキの肩に顎を乗せていた女は体を離し、金髪を優雅に翻しながら立ち去る。女は右手を挙げ、手をひらひらとさせていた。
「何だったんですかね」
「さぁな。でもアイツ」
「うん。強い」
「え? 強い?」
「感覚的な話だが、目に見えるもので説明するなら、人混みとぶつからずに擦り抜けているだろ」
「本当ですね」
「相当なものだぜ」
その視線をその身に受ける金髪の女は嬉しそうに口を歪めた。
コストイラは壁から剥がれようともぞもぞと動く。うまく嵌ってしまったのか尻が抜けない。
『ゴォア!』
手間取っていると、バルログの拳がコストイラに追い打ちをかける。壁の一部を破壊しながらコストイラを殴る。
盛り上がりが増していく。
完成を全身に浴びてバルログは気持ちよくなる。その気持ちよさを両腕を広げた状態で表現する。
「あ」
観客の誰かが気付いた。バルログの後ろで平然とコストイラが立ち上がったのだ。左手で鼻を押さえて思い切り息を吐き、血を出した。
「じゃあ、次はオレの番か」
バルログが振り返るのと同時にコストイラが駆けだす。棍棒のように太い腕を潜り、支給された刀を振るう。刀身がバルログの脛に当たり、足が地面から離れる。
前傾になったバルログの顎が地面に近づき、コストイラが跳躍することで顎をかち上げる。バルログの膝が折れてバランスを崩し、仰向けに倒れる。すぐさま手をつき、左脛が痛みを発し、力が抜ける。
コストイラは着地直後にもう一度跳ぶ。刃の潰れた刀が綺麗に顎に入る。脳がピンボールめいて動き、脳震盪を起こし、ミメースウガイは気絶した。
着地したコストイラが左拳を突き上げると、会場がブーイングに支配された。
コストイラは決勝に進出した。
足を入れた瞬間、句読点なくマシンガントークをしてきた男に、番号札の書かれた布を叩きつけられた。
何で番号じゃなくて番号札なんだろうかとか、番号札に書かれているのは特別枠なんだがとか疑問を浮かべるが、その前に突っ込まなければならないことがある。
「あれ、これ僕達全員が出場することになってませんか?」
アレンが自身を指さし、周りの反応を見ると、全員が頷いた。
叩きつけられた布の輪に腕を通し、針で止める。コストイラがフゥと息を吐く。
うずうずしている。今すぐにでも大声を出して暴れ出したいほどに、体内でエネルギーが暴れ狂っている。
これで心の準備はできた。
コストイラが光溢れる会場に足を向けた。
「さて、本日飛び入りで参加してくれた奴らがいる。しかし、残っているのは前回チャンピオンと挑戦者一名のみ。ゆえに、参加者には万全の挑戦者といきなり戦ってもらいます!」
「「「「「オオオオオオオオオ‼」」」」」
会場のアナウンスにより、会場全体から歓声が上がる。声の総量は大きく、会場全体が揺れた。コストイラが会場に出ようとすると、前にいた兵士に止められる。
「あん?」
「前口上がある。それに合わせて入場してくれ」
「はいよ」
コストイラは大人しく一歩下がり、口上を待つ。
「挑戦者はコイツ。現在15戦14勝1分け。3mの巨体を巧みに使い、来る敵全てを薙ぎ払い倒していく。負け知らずの悪魔、バルログ。ミメースウガイ‼」
『ゴォオオオオオ!!』
口上に合わせ、コストイラの向かいにある入り口から、両拳を天へと突き上げた姿勢で入場しながら大声を上げる。会場を練り歩くバルログに口笛や歓声を浴びる。
バルログがぐるりと回り、元入ってきた入り口に戻る。コストイラの口上が始まる。
「参加者はこの男。お前等は覚えているか? あの恐怖を、あの絶望を、紅い髪に黄色い目をしたあの悪魔を。退治屋フラメテの一人息子、コストイラ!!」
「「「「「「「「「し、ね~~~~~!!」」」」」」」」」
バルログと同じように叫ぼうとして呑まれた。コストイラは思った。よくそこまで調べているな。そして、母さん何したん?
コストイラは怒号を浴びながら入場する。殺すように叫ばれるバルログと堂々と対峙し、鮫のような笑みを見せつける。
「それでは、バトル、開始!!」
開始の合図がなされた途端、バルログが駆けだす。巨体とは思えない速度だ。
コストイラは、原則として不殺とされている闘技場から支給された刃の潰された刀を握る力を強める。バルログを見たのは妖怪の山で見た個体だけだ。あの時の恐怖はもうない。むしろワクワクした気持ちだけだ。
迫る巨体に一歩も引かず、刀を構える。薙がれる拳に刀を合わせ、そこで初めて失態に気付いた。この刀は刃が潰されている。つまり、この拳は止まらない。
気付いた時にはもう遅い。コストイラの体は浮き上がり、壁面に飛ばされる。そのまま激突して、壁面に沈む。その瞬間、会場が割れんばかりの歓声に包まれた。
「何て言うかアウェーね」
「はい。もの凄くそうですね」
アレン達はアウェーの空気に身を縮こませていた。アストロ、アシド、レイドの3人は堂々としており、シキは無表情すぎて恐い。
「怖いよね。これが集団心理ってやつさ」
アレンの後ろから声がした。その声は主はシキの背に寄っかかる。衝撃でシキの姿勢が少し前傾になる。
「私はあっちのコスロイラ? を応援しちゃおうかなぁ?」
必要以上にくっつかれて面倒になり始めたシキが、肩に乗せられている誰かの顔を攻撃しようと掌で叩こうとする。
「うおっ!?」
誰かは迫る掌に気付き、早くに対処のための行動をして、手を合わせてパチンと鳴らす。誰かの手の甲と誰かの唇が触れる。
「ごめん、ごめん、離れるよ」
シキの肩に顎を乗せていた女は体を離し、金髪を優雅に翻しながら立ち去る。女は右手を挙げ、手をひらひらとさせていた。
「何だったんですかね」
「さぁな。でもアイツ」
「うん。強い」
「え? 強い?」
「感覚的な話だが、目に見えるもので説明するなら、人混みとぶつからずに擦り抜けているだろ」
「本当ですね」
「相当なものだぜ」
その視線をその身に受ける金髪の女は嬉しそうに口を歪めた。
コストイラは壁から剥がれようともぞもぞと動く。うまく嵌ってしまったのか尻が抜けない。
『ゴォア!』
手間取っていると、バルログの拳がコストイラに追い打ちをかける。壁の一部を破壊しながらコストイラを殴る。
盛り上がりが増していく。
完成を全身に浴びてバルログは気持ちよくなる。その気持ちよさを両腕を広げた状態で表現する。
「あ」
観客の誰かが気付いた。バルログの後ろで平然とコストイラが立ち上がったのだ。左手で鼻を押さえて思い切り息を吐き、血を出した。
「じゃあ、次はオレの番か」
バルログが振り返るのと同時にコストイラが駆けだす。棍棒のように太い腕を潜り、支給された刀を振るう。刀身がバルログの脛に当たり、足が地面から離れる。
前傾になったバルログの顎が地面に近づき、コストイラが跳躍することで顎をかち上げる。バルログの膝が折れてバランスを崩し、仰向けに倒れる。すぐさま手をつき、左脛が痛みを発し、力が抜ける。
コストイラは着地直後にもう一度跳ぶ。刃の潰れた刀が綺麗に顎に入る。脳がピンボールめいて動き、脳震盪を起こし、ミメースウガイは気絶した。
着地したコストイラが左拳を突き上げると、会場がブーイングに支配された。
コストイラは決勝に進出した。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる