メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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15.奈落

14.地獄の月

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 近づくごとに熱が高まっていく。気分的な問題ではなく、物理的な話だ。コストイラ、アシド、シキの前衛組は湿らせた布で口元を覆い、フーと息を吐く。

「しゃあ、迎え撃つぞ」

 同じく湿った布で口元を覆ったアストロやレイド達も武器を構える。最初にターゲットを取るために弓を引くが、矢は当たる前に剣で弾かれ燃えた。気付いているようだが、イフリータの向かう先は、この状況の原因エンドローゼだ。
 いつものエンドローゼであれば、謎の声を出して震え上がっている頃だが、今回はなぜか、すでに震えが止まっている。エンドローゼは不思議にすら思わない。

 ギャァイイインという音が鳴った。刀を盾に押し付けたまま、このまま押してもやられるだけだ。察知したコストイラが身を捻る。押し込まれていた力がなくなり、イフリータがつんのめる。5mの体が前傾になり、地面に手をつこうとして両手を前に出す。回転していたコストイラがイフリータの右手を斬る。
 断面同士がぶつかり、ひしゃげてバランスを崩す。左肘が曲がり、顔を強打をする。両足と頭の3点で体を支えた状態で左手の剣を振るい、切っ先を地面に刺して頑張って起き上がる。

 しかし、立ち上がり切る前にアシドがイフリータの首裏を叩き、顎から地面に落とす。勢いよく地面にぶつかった顎は、バウンドしてエンドローゼに向かう。
 エンドローゼにぶつかる直前、イフリータの顔が不自然に止まる。

 イフリータが立ち上がろうとするが、脳の震える状態である炎の番人は立ち上がれない。その垂れた頭を支える首に大剣が下ろされる。






『良いんですか? 声をかけなくても』
『およ? 君がそんなことを言うなんて珍しいね』

 狐の面をした少女は岩から投げ出した足をパタパタとさせながら隣の男を見上げた。男はハァと溜息を吐いた。

『貴方は何か未練があったら戻ってくるでしょう? 未練はないですか?』
『ふーむ。何かあるかと言われたら、ありありのありなんだけど、まぁ、戻るよ。ここは目を届かせるのに時間がかかるから心配だけど』
『ハァ。これはまた抜け出しそうだな』

 フォンが立ち上がり尻に付いた砂を払うと、アレン達とは逆の方向に歩き出す。

『分かってるよね。私はエンドローゼちゃんが大好き。何か手出ししようものなら、締結した契約を破ってでも、潰す』

 フォンの左目だけが大きく開き、空中を睨む。ディーノイはもう一度溜息を吐き、フォンの後ろをついて歩く。

 泉を覗いていたジャスレは、フォンに睨まれたことで顔を離した。

『月の女王め。恐いことを言う』






 調査兵が根気よく探した結果、遂にベートの姿を目撃することに成功した。兵が矢を乱れ打つと、ベートの体に3本の矢が命中した。
 ベートは痛みを嫌がるように顔を振り、走り去っていった。矢は確実に心臓がありそうな箇所を打ち抜いていたはずなのに、兵が追い着けない速度で逃げて行ったのだ。まさか、効いていないなんてことがあるのか。

 そして、次の日、村の女が一人犠牲になった。

 兵の間に緊張が走る。もしや、ベートは不死身なのではないか?これは我々の手には負えない仕事なのだろうか。
 士気の下がった兵達は教会に助けを求めた。常識を超えるものと戦うのは冒険者か神官の役目であり、騎士や兵士の役目ではない。

 しかし、教会は動いてくれなかった。チェシバルはナンバエッタ教徒が多く、ガラエム教の教会は天罰を主張し、助けることはなかった。魔力への信心が浅く、育ちの悪い村のことなど助ける教会などどこにもなかった。

 助けはない。

 絶望するしかない。

 ベートの前に権威は意味はなさなかった。
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