メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

文字の大きさ
上 下
264 / 425
15.奈落

9.腐る液体

しおりを挟む
『―――――!!』

 何を叫んだのかは分からない。しかし、地を揺らすそれは明らかに何かを叫んでいた。それに合わせてビームが発射される。
 ランダムで発射されるビームに、うまくアンホーリーテラーに近づけない。アシドはアクロバティックに動き、槍でビームを弾きながら後衛3人と合流する。

「オレじゃ致命傷を与えられねェ。シキ達はいけるか?」
「分かった」

 シキは質問に答えるのではなく、即座に走り出した。

 アレンとしては明かりがないのにどうして迷いなく攻撃できるのかと疑問が浮かぶが、きっとアレンの知らないものが見えているのだろう。
 シキの足の速さは勇者一行の中でもアシドに次いで異常だ。その異常性を存分に発揮して、アンホーリーテラーのビームを回避していく。目線はアンホーリーテラーから外れない。アンホーリーテラーにはそれが恐怖でしかなかった。

 コストイラは炎の尾を引きながらビームを弾き、アンホーリーテラーに近づいて行く。炎を纏いながらの刀身が閃き、光が闇を切り取る。

 シキが跳びあがり、コストイラの背を足場にしてもう一度跳び上がる。ベリーロールのように跳ぶシキがレイドの作った罅にナイフを投げ入れる。ナイフが全て中に入った瞬間に大爆発が起こる。
 黒い球の外郭が内部から膨れ上がり、罅が連鎖し、その罅からはオレンジと黒の混じった煙が噴き出る。ボロボロと外角が剥がれ、中身が露出されていく。中に詰め込まれていた黒い液体がドロドロと溢れ出てくる。液体が地面に触れた瞬間、ジュッと音を立てて、地面が溶けた。クルクルと宙を待っていたナイフがカランと地面に落ちる。シキが柄を抓み上げると、刃の部分が溶けていた。

「溶けていますね。あの黒いドロドロ、何なんでしょうね」
「さぁね。ただ、絶対に触れちゃいけないオーラを放ってるわよね」
「おぉ、地面を溶かすぐらいだからか」
「あの。替えのナイフはありますか?」

 じっとナイフの溶けている先端を見つめるシキに哀愁を感じたアレンが、心配して聞いてみる。シキがナイフを探すように腰元を触る。シキの指先に硬い感触が当たる。

 シャラッと抜くが、1本しかない。スペアがない。

「残り1本」
「え、大丈夫ですか!?」
「次の街で買う」

 内心焦りつつ、表には出さずにナイフをしまう。

「おい! こっち来い! 篝火が見えるぞ!」

 コストイラはアレン達に手招きして、篝火の方を指さす。少し傾斜があるため、見えなかったアレン達にも灯りが見えた。豆粒ほどに小さな灯りだが、それでも存在感を放っていた。

 2つの灯りが等間隔を保ちながら、ふわりふわりと動いている。篝火ではなく松明のようだ。

「あっちの方向に街か村か、人が住む地域がありそうですね」
「あぁ、だと良いな」

 コストイラが遠い目をしながら、アレンの楽観的な意見に答える。オレンジの光はが近づくにつれ、謎の緊張感に包まれていく。もしあれが松明だとしたら、マーチングバンドの先導者のように歩いていることになる。そんな歩き方を普段からしている人なんているのだろうか。

 灯りが近づく音が、バサバサと聞こえてきた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

抽選結果は大魔王だったので、剣と魔法と平和と欲に溢れた異世界で、のんびりとスローライフしたいと思います。

蒼樹 煉
ファンタジー
抽選で、大魔王として転生したので、取り敢えず、まったりと魔物生成しながら、一応、大魔王なので、広々とした領土で、スローライフっぽいものを目指していきたいと思います。 ※誹謗中傷による「感想」は、お断りです。見付け次第、削除します。 小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。 ※駄文+誤字脱字+その他諸々でグダグダですが、宜しくお願いします。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

魔拳のデイドリーマー

osho
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生した少年・ミナト。ちょっと物騒な大自然の中で、優しくて美人でエキセントリックなお母さんに育てられた彼が、我流の魔法と鍛えた肉体を武器に、常識とか色々ぶっちぎりつつもあくまで気ままに過ごしていくお話。 主人公最強系の転生ファンタジーになります。未熟者の書いた、自己満足が執筆方針の拙い文ですが、お暇な方、よろしければどうぞ見ていってください。感想などいただけると嬉しいです。

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。 17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。 高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。 本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。 折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。 それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。 これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。 有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

処理中です...