242 / 391
14.冥界
3.有害な湿原
しおりを挟む
突然だが、自衛隊の隊員2人の説明をさせてほしい。
一人は青紫色の肌をした戦士風の男だ。隊長が言うには自衛隊の中では中堅あたりらしい。剣を振る速度を見ると限りではレイドと同じぐらいだろう。魔術を見ていないので強さは分からない。
もう一人はピンクの肌をした細身の男。隊長が言うには戦士風の男と比べて強いらしい。武器はレイピアであり、振る速度は速いがパワーがない。最初から魔術を使用しており、戦闘スタイルから、魔術剣士だと分かった。
青紫の男はペデストリ、ピンクの男はアンデッキという名前だ。隊長の名前もそうだが、どうしてこうも覚えづらいのだろう。ホキトタシタのことが言えなくなってしまうので間違えたり、忘れたりはしない。
現在、薄霧に包まれているとはいえ、全員の姿が見えていた。支障はなかった。未だに踝が浸かっており、不快感は消えない。そして、魔物と戦っていた。相手はドラゴンであり、その姿はレッドドラゴンを黒くしただけである。名前も安直でブラックドラゴン。
噛みつきに来るドラゴンの頭をアンデッキが風を纏ったレイピアでかちあげる。晒される黒い首をアシドが貫く。ゆっくりと下ろされる剣はブラックドラゴンの頭に当たり、頭蓋骨を割り、中身を噴き出させる。コストイラは刀に炎を纏わせ、2,3匹を纏めて処理する。
「君達の戦士もやるな」
「貴方の方こそ。あと戦士ではなく冒険者ですよ」
「おっと、そうか」
ホキトタシタとアレンは互いを見ずに会話する。
「君達は参加しないのか?」
「僕達の役割は支援なので」
「そうか」
残りのブラックドラゴンが3匹になり、やられないように飛び上がる。翼を大きく羽ばたかせ、風を起こす。霧が晴らされ、視界が明瞭になる。
少し体が飛ばされるが、これはありがたい。アレンは矢を番え、アストロは指を向けた。魔術は矢よりも速くドラゴンに辿り着き、2匹のドラゴンが地に堕ちる。後を追うように空を駆ける矢が1匹のドラゴンの眉間に刺さる。1本では堕ちなかったがもう1本の矢が右目を射抜き、今度こそドラゴンの体が落ちる。
「おおっ!!」
その光景に数人が感嘆の声を上げる。少し違和感を覚えたホキトタシタは口角は上がったままだが、眉根を寄せて首を捻る。
「これは何の拍手だ?」
「魔物に矢を当てることができたことに対する拍手よ。ようやくまともに当てているのを見たわ」
「そういうレベルだったのか」
ホキトタシタは憐みの目をアレンに向ける。隊長は魔眼を開き、アレンの体内の魔力の流れを見る。魔眼を解除しながらアレンに近づく。
「アロイ。何で弓を射る時にその眼を使わないんだ」
「目ですか? ちゃんと目を開けてましたよ? あと僕はアレンです」
「すまん、かへん。目って魔眼のことだよ」
「何でそれを。あと僕はアレンです」
「すまん、あへん。私も魔眼を持っているからだよ。使ってみたら新たな発見があるかもしれないぞ」
「アドバイスありがとうございます。あと僕はアレンです。覚える気ないなら呼ばなくていいですよ」
アドバイスはありがたいが、正しく名前を呼んでくれないので、真面目に聞く気にもなれない。しかし、改めて考えてみる。魔眼を使いながら弓を射る。正直考えたことがないわけではない。魔力の消費が激しく、発射前に倒れたことがあり、それ以来やっていない。
しかし、あの時は魔力を消費しながら、魔力を使う技を行使しようとした。今回考えているのは魔力を消費しながら、魔力を使わない技を行使することだ。
「ちょうどあそこに魔物がいる。あれに向かってやってみよう。外しても襲われてもこっちがフォローしよう。やってみろ、アリストクラシー」
「もうここまで来ると、わざとだろ」
アレンは無理のある間違いに辟易しつつ、弓を引き絞る。魔眼を発動させる。矢を摘まむ指に自然と力が入る。初めてのことで息も浅くなる。ポンと誰かに肩を叩かれる。目だけを動かすと、シキがいた。呼吸のスパンが短くなるアレンに、シキはいつもの調子でただ一言ポツリと呟いた。
「大丈夫」
その言葉でアレンは一度大きく深呼吸をして呼吸を整える。集中しているからか、魔物の動きがゆっくりに見える。心臓がどんどんとうるさい。無視する。腕が震える。無視する。足も震えている。無視する。
そして一筋の汗がアレンの左目に入った。ブシュッと鼻血が噴き出し、右指から矢が離れる。矢はくわんくわんとたわみながら、2m先の水面にぶつかり、沈んでいく。アレンは後ろに倒れた。アレンの体をシキが受け止める。鼻血がぽたぽたと落ちていく。
「オイ、アレン、大丈夫か」
「今のでドライアドがこっちに気付いたぞ」
アシドがアレンに近寄り、頬をペチペチと叩くが、反応しない。コストイラとレイドがアレンを守るように前に立つ。
「集中しすぎたか?」
ホキトタシタがアレンの顔を覗き込みながら分析する。
「オイ、隊長。責任取れ」
「仕方ない。私の提案だからな。フォロー頼むぞ」
「しゃーねー」
頭を掻きながら剣を抜き、前傾姿勢を取る。
「アシド」
一言添えて走り出すコストイラに、アシドが後を追うように走る。すでに駆けだしていたホキトタシタを追い抜き、ドライアドの蔦を叩き飛ばす。蒼いオーラを纏うアシドと炎を纏うコストイラが拓いた道をホキトタシタが走り抜けていく。前から来る太い蔦に怯えることなく、最低限の高さの跳躍で躱し、蔦の上を最高速で駆けていく。
ドライアドは迫りくるホキトタシタに咆哮を一つ浴びせようとする。隊長は腰元につけていたナイフを投げ、ドライアドの首に命中させる。
ゴボガボと口から血が溢れ出ており、声が出ない。ドライアドがナイフを抜こうと気を取られてしまう。ホキトタシタはドライアドの女型の横を抜け、木の中に入っていく。中に入って30秒後ドライアドが悶え始める。オレンジと黒の混じった煙が噴き出されていく。ボロボロと体が崩れていく。灰になる体の中からホキトタシタが出てくる。
体を叩いて灰を払っているが、髪にも灰が乗っている。ドライアドの討伐は毎回大変なのだ。
一人は青紫色の肌をした戦士風の男だ。隊長が言うには自衛隊の中では中堅あたりらしい。剣を振る速度を見ると限りではレイドと同じぐらいだろう。魔術を見ていないので強さは分からない。
もう一人はピンクの肌をした細身の男。隊長が言うには戦士風の男と比べて強いらしい。武器はレイピアであり、振る速度は速いがパワーがない。最初から魔術を使用しており、戦闘スタイルから、魔術剣士だと分かった。
青紫の男はペデストリ、ピンクの男はアンデッキという名前だ。隊長の名前もそうだが、どうしてこうも覚えづらいのだろう。ホキトタシタのことが言えなくなってしまうので間違えたり、忘れたりはしない。
現在、薄霧に包まれているとはいえ、全員の姿が見えていた。支障はなかった。未だに踝が浸かっており、不快感は消えない。そして、魔物と戦っていた。相手はドラゴンであり、その姿はレッドドラゴンを黒くしただけである。名前も安直でブラックドラゴン。
噛みつきに来るドラゴンの頭をアンデッキが風を纏ったレイピアでかちあげる。晒される黒い首をアシドが貫く。ゆっくりと下ろされる剣はブラックドラゴンの頭に当たり、頭蓋骨を割り、中身を噴き出させる。コストイラは刀に炎を纏わせ、2,3匹を纏めて処理する。
「君達の戦士もやるな」
「貴方の方こそ。あと戦士ではなく冒険者ですよ」
「おっと、そうか」
ホキトタシタとアレンは互いを見ずに会話する。
「君達は参加しないのか?」
「僕達の役割は支援なので」
「そうか」
残りのブラックドラゴンが3匹になり、やられないように飛び上がる。翼を大きく羽ばたかせ、風を起こす。霧が晴らされ、視界が明瞭になる。
少し体が飛ばされるが、これはありがたい。アレンは矢を番え、アストロは指を向けた。魔術は矢よりも速くドラゴンに辿り着き、2匹のドラゴンが地に堕ちる。後を追うように空を駆ける矢が1匹のドラゴンの眉間に刺さる。1本では堕ちなかったがもう1本の矢が右目を射抜き、今度こそドラゴンの体が落ちる。
「おおっ!!」
その光景に数人が感嘆の声を上げる。少し違和感を覚えたホキトタシタは口角は上がったままだが、眉根を寄せて首を捻る。
「これは何の拍手だ?」
「魔物に矢を当てることができたことに対する拍手よ。ようやくまともに当てているのを見たわ」
「そういうレベルだったのか」
ホキトタシタは憐みの目をアレンに向ける。隊長は魔眼を開き、アレンの体内の魔力の流れを見る。魔眼を解除しながらアレンに近づく。
「アロイ。何で弓を射る時にその眼を使わないんだ」
「目ですか? ちゃんと目を開けてましたよ? あと僕はアレンです」
「すまん、かへん。目って魔眼のことだよ」
「何でそれを。あと僕はアレンです」
「すまん、あへん。私も魔眼を持っているからだよ。使ってみたら新たな発見があるかもしれないぞ」
「アドバイスありがとうございます。あと僕はアレンです。覚える気ないなら呼ばなくていいですよ」
アドバイスはありがたいが、正しく名前を呼んでくれないので、真面目に聞く気にもなれない。しかし、改めて考えてみる。魔眼を使いながら弓を射る。正直考えたことがないわけではない。魔力の消費が激しく、発射前に倒れたことがあり、それ以来やっていない。
しかし、あの時は魔力を消費しながら、魔力を使う技を行使しようとした。今回考えているのは魔力を消費しながら、魔力を使わない技を行使することだ。
「ちょうどあそこに魔物がいる。あれに向かってやってみよう。外しても襲われてもこっちがフォローしよう。やってみろ、アリストクラシー」
「もうここまで来ると、わざとだろ」
アレンは無理のある間違いに辟易しつつ、弓を引き絞る。魔眼を発動させる。矢を摘まむ指に自然と力が入る。初めてのことで息も浅くなる。ポンと誰かに肩を叩かれる。目だけを動かすと、シキがいた。呼吸のスパンが短くなるアレンに、シキはいつもの調子でただ一言ポツリと呟いた。
「大丈夫」
その言葉でアレンは一度大きく深呼吸をして呼吸を整える。集中しているからか、魔物の動きがゆっくりに見える。心臓がどんどんとうるさい。無視する。腕が震える。無視する。足も震えている。無視する。
そして一筋の汗がアレンの左目に入った。ブシュッと鼻血が噴き出し、右指から矢が離れる。矢はくわんくわんとたわみながら、2m先の水面にぶつかり、沈んでいく。アレンは後ろに倒れた。アレンの体をシキが受け止める。鼻血がぽたぽたと落ちていく。
「オイ、アレン、大丈夫か」
「今のでドライアドがこっちに気付いたぞ」
アシドがアレンに近寄り、頬をペチペチと叩くが、反応しない。コストイラとレイドがアレンを守るように前に立つ。
「集中しすぎたか?」
ホキトタシタがアレンの顔を覗き込みながら分析する。
「オイ、隊長。責任取れ」
「仕方ない。私の提案だからな。フォロー頼むぞ」
「しゃーねー」
頭を掻きながら剣を抜き、前傾姿勢を取る。
「アシド」
一言添えて走り出すコストイラに、アシドが後を追うように走る。すでに駆けだしていたホキトタシタを追い抜き、ドライアドの蔦を叩き飛ばす。蒼いオーラを纏うアシドと炎を纏うコストイラが拓いた道をホキトタシタが走り抜けていく。前から来る太い蔦に怯えることなく、最低限の高さの跳躍で躱し、蔦の上を最高速で駆けていく。
ドライアドは迫りくるホキトタシタに咆哮を一つ浴びせようとする。隊長は腰元につけていたナイフを投げ、ドライアドの首に命中させる。
ゴボガボと口から血が溢れ出ており、声が出ない。ドライアドがナイフを抜こうと気を取られてしまう。ホキトタシタはドライアドの女型の横を抜け、木の中に入っていく。中に入って30秒後ドライアドが悶え始める。オレンジと黒の混じった煙が噴き出されていく。ボロボロと体が崩れていく。灰になる体の中からホキトタシタが出てくる。
体を叩いて灰を払っているが、髪にも灰が乗っている。ドライアドの討伐は毎回大変なのだ。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
性奴隷を飼ったのに
お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。
異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。
異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。
自分の領地では奴隷は禁止していた。
奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。
そして1人の奴隷少女と出会った。
彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。
彼女は幼いエルフだった。
それに魔力が使えないように処理されていた。
そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。
でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。
俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。
孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。
エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。
※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。
※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる