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13.魔界
5.首を突っ込んだ代償
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アレン達が懐かしのホーリードラゴンに目を奪われている間に、するりと横を精霊たちが抜けていく。精霊たちはホーリードラゴンの周りをパタパタと飛んでいる。
『グォ』
『何をしているのか? 決まっているわ。今から私がアイツらをボコボコにって嘘ですごめんなさい』
精霊は虚勢を張ろうとシャドーボクシングして、コストイラの刀を見た瞬間速攻で謝った。ちなみにコストイラの刀は最初っから見えていた。
『グルルル。グルオウ』
『えっ!? この傷作ったの、アイツらなの? 仇を討ってやるわ』
『グルォオオウ』
『えぇ、でもぉ』
片方が人語を介していないせいでどんな会話をしているのかが分からない。
「今気づいたけどあの鱗ってこいつのだよな」
「何で精霊が持ち出そうとしてたんだ?」
『それはね!』
コストイラが納得し、アシドが新たな疑問を呈する。その疑問に対し、精霊が誇らしげに胸を張り、対応する。自分何でも知ってもすよ感のある手の置き方が絶妙に腹立つ。
『私達が鱗を換金して、有効に使ってあげようとしているのよ!』
「換金?」
『えぇ』
「どこで?」
『タランネで』
「誰と?」
『馬鹿なの? 商人とに決まってるじゃない』
「相手の種族は?」
『種族? さぁ、お金の勘定が上手な人間か蜥蜴人なんじゃない? っていうかさっきからこの問答は何? 何したいわけ?』
苛立ったことで精霊の眉根に皴ができる。もう1匹の精霊も分かっていないのか似たような表情をしている。分っている聖龍は目を閉じ、フゥと溜息を吐いた。
『グルゥグロロロロ』
『え? まぁね。そりゃあ私達のお肉は食べれば若返るって言われているし(⤴)、この翅の鱗粉は万能薬にもなるし(⤴)、当たり前よね』
『えぇ、皆が欲しがるよ』
『待って、皆って商人も含まれるんじゃない?』
ようやく気付いたようだ。慌ててあちこちに飛んだのち、ホーリードラゴンに着地する。そして、鏡合わせにこちらを指さす。
『『あんた達もそれが目的だったのね!!』』
あらぬ誤解を受けてしまった。コストイラはもう面倒になってしまい、首裏に手を回し、溜息を吐いた。ホーリードラゴンも妖精のテンションに疲れたのか水の中に消えていった。
『わ、わ』
急に足場が動き、2匹は飛びながら頬を膨らませている。
「ど、ど、どうですか?」
「少しまだ痺れが残っていますが、時間が経てば治りそうです」
一方で、左手を貫かれたアレンは無事に矢を撤去されており、すでに傷口は塞がっていた。しかし、どこか神経を傷付けてしまったのか、血の巡りが悪いのか動かすと痺れがある。力が入りにくい。しばらく左手を開閉していると、エンドローゼが両手で挟んできた。
「アレンはその状態で弓を引けるのか?」
「やってみないと分からないですが、凄く頑張らないと駄目な感じがありそうですね」
「じゃあ、これからは完全な司令塔になるわけね」
「おそらくは。僕一人で何とかしなくちゃいけない場面にならなければいいですけどね」
弓のことを聞かれドキリとした。アレンは背負っていた弓を左手で取り掲げてみる。少しプルプルしている。気を付けなかければ落してしまいそうだ。弦を摘まみ、ゆっくりと引いていくが、左手が負けてしまいそうだ。
「な、な、治したばかりなので、そ、そんなにう、動かさないでください」
エンドローゼに強く言われてしまった。アレンが弓を下ろそうとして、森の奥で何かが光った。光源があったというよりは光を何かが反射したという方が近いだろう。
「どうかした?」
「え? あぁ、えっと、何かが光った気がして」
「アンタが一番目が良いのよ。アンタが見えないんじゃ、私には見えないわ」
アストロに我に返され、感じたものを説明する。アストロが手で傘を作り、目を細めるが、何も見えない。
「シキ!」
アストロがシキを呼ぶと素早く擦り寄ってくる。猫を扱うように下顎を撫でる。シキは気持ちよさそうに目を細める。
「シキ? あっちの方で何かが光ったっぽいの。調べてみてくれる?」
「ん」
アストロがシキに指示を出すと、それに従い、森に入っていった。
「従者みたいになってません?シキさんは勇者なのに」
「とはいっても、シキは皆を先導するよりも命令される方が性に合ってるみたいよ。私生活の方でもよ。覚えておきなさい、アレン」
「名指しですか」
「えぇ、強くいけば行けるわね」
「い、いけ!?」
アレンは助けを求めるようにエンドローゼを見ると、彼女はにこやかに見守っている。何だろう、この出来の悪い弟を見る姉みたいな生暖かい目は。
「あれ?」
シキがもう戻ってきた。かなり早いがもう何か見つけたのだろうか。
「魔物。何かこう、虹色でテカテカしていた」
「え?」
「コストイラ! アシド! レイド!」
アストロが呼ぶと同時にバキメキと木々が倒れた。コストイラ達がバッと距離をとる。
「何だ!?」
コストイラは刀を半ばまで抜き、刃を見せる。木を倒した主は波のようにズルズルと姿を現す。かなり粘性があるように見える。ズモモと魔物の高さが増す。10mはあるのではないだろうか。
アレンは瞳に魔力を集める。そして、ガレットの書を開いた。
アイリススライム。虹色の光沢を放つ巨大なスライム。光属性。その体はデカく、じっとしている時でも10mはある。伸ばそうと思えば2,30mは伸びるだろう。伸びあがる根元からは触手状にして体を操ることができる。採取できる粘液は高く売れる。可食部はない。どこもかしこもぬちゃぬちゃしていて食べていたくない。
違う、アレンが知りたいのはそこではない。下に目を向けると、求めていた情報を見つける。
見えないが中に核がある。
本から顔を上げると、スライムの鞭がアレンの腹を叩いた。
『グォ』
『何をしているのか? 決まっているわ。今から私がアイツらをボコボコにって嘘ですごめんなさい』
精霊は虚勢を張ろうとシャドーボクシングして、コストイラの刀を見た瞬間速攻で謝った。ちなみにコストイラの刀は最初っから見えていた。
『グルルル。グルオウ』
『えっ!? この傷作ったの、アイツらなの? 仇を討ってやるわ』
『グルォオオウ』
『えぇ、でもぉ』
片方が人語を介していないせいでどんな会話をしているのかが分からない。
「今気づいたけどあの鱗ってこいつのだよな」
「何で精霊が持ち出そうとしてたんだ?」
『それはね!』
コストイラが納得し、アシドが新たな疑問を呈する。その疑問に対し、精霊が誇らしげに胸を張り、対応する。自分何でも知ってもすよ感のある手の置き方が絶妙に腹立つ。
『私達が鱗を換金して、有効に使ってあげようとしているのよ!』
「換金?」
『えぇ』
「どこで?」
『タランネで』
「誰と?」
『馬鹿なの? 商人とに決まってるじゃない』
「相手の種族は?」
『種族? さぁ、お金の勘定が上手な人間か蜥蜴人なんじゃない? っていうかさっきからこの問答は何? 何したいわけ?』
苛立ったことで精霊の眉根に皴ができる。もう1匹の精霊も分かっていないのか似たような表情をしている。分っている聖龍は目を閉じ、フゥと溜息を吐いた。
『グルゥグロロロロ』
『え? まぁね。そりゃあ私達のお肉は食べれば若返るって言われているし(⤴)、この翅の鱗粉は万能薬にもなるし(⤴)、当たり前よね』
『えぇ、皆が欲しがるよ』
『待って、皆って商人も含まれるんじゃない?』
ようやく気付いたようだ。慌ててあちこちに飛んだのち、ホーリードラゴンに着地する。そして、鏡合わせにこちらを指さす。
『『あんた達もそれが目的だったのね!!』』
あらぬ誤解を受けてしまった。コストイラはもう面倒になってしまい、首裏に手を回し、溜息を吐いた。ホーリードラゴンも妖精のテンションに疲れたのか水の中に消えていった。
『わ、わ』
急に足場が動き、2匹は飛びながら頬を膨らませている。
「ど、ど、どうですか?」
「少しまだ痺れが残っていますが、時間が経てば治りそうです」
一方で、左手を貫かれたアレンは無事に矢を撤去されており、すでに傷口は塞がっていた。しかし、どこか神経を傷付けてしまったのか、血の巡りが悪いのか動かすと痺れがある。力が入りにくい。しばらく左手を開閉していると、エンドローゼが両手で挟んできた。
「アレンはその状態で弓を引けるのか?」
「やってみないと分からないですが、凄く頑張らないと駄目な感じがありそうですね」
「じゃあ、これからは完全な司令塔になるわけね」
「おそらくは。僕一人で何とかしなくちゃいけない場面にならなければいいですけどね」
弓のことを聞かれドキリとした。アレンは背負っていた弓を左手で取り掲げてみる。少しプルプルしている。気を付けなかければ落してしまいそうだ。弦を摘まみ、ゆっくりと引いていくが、左手が負けてしまいそうだ。
「な、な、治したばかりなので、そ、そんなにう、動かさないでください」
エンドローゼに強く言われてしまった。アレンが弓を下ろそうとして、森の奥で何かが光った。光源があったというよりは光を何かが反射したという方が近いだろう。
「どうかした?」
「え? あぁ、えっと、何かが光った気がして」
「アンタが一番目が良いのよ。アンタが見えないんじゃ、私には見えないわ」
アストロに我に返され、感じたものを説明する。アストロが手で傘を作り、目を細めるが、何も見えない。
「シキ!」
アストロがシキを呼ぶと素早く擦り寄ってくる。猫を扱うように下顎を撫でる。シキは気持ちよさそうに目を細める。
「シキ? あっちの方で何かが光ったっぽいの。調べてみてくれる?」
「ん」
アストロがシキに指示を出すと、それに従い、森に入っていった。
「従者みたいになってません?シキさんは勇者なのに」
「とはいっても、シキは皆を先導するよりも命令される方が性に合ってるみたいよ。私生活の方でもよ。覚えておきなさい、アレン」
「名指しですか」
「えぇ、強くいけば行けるわね」
「い、いけ!?」
アレンは助けを求めるようにエンドローゼを見ると、彼女はにこやかに見守っている。何だろう、この出来の悪い弟を見る姉みたいな生暖かい目は。
「あれ?」
シキがもう戻ってきた。かなり早いがもう何か見つけたのだろうか。
「魔物。何かこう、虹色でテカテカしていた」
「え?」
「コストイラ! アシド! レイド!」
アストロが呼ぶと同時にバキメキと木々が倒れた。コストイラ達がバッと距離をとる。
「何だ!?」
コストイラは刀を半ばまで抜き、刃を見せる。木を倒した主は波のようにズルズルと姿を現す。かなり粘性があるように見える。ズモモと魔物の高さが増す。10mはあるのではないだろうか。
アレンは瞳に魔力を集める。そして、ガレットの書を開いた。
アイリススライム。虹色の光沢を放つ巨大なスライム。光属性。その体はデカく、じっとしている時でも10mはある。伸ばそうと思えば2,30mは伸びるだろう。伸びあがる根元からは触手状にして体を操ることができる。採取できる粘液は高く売れる。可食部はない。どこもかしこもぬちゃぬちゃしていて食べていたくない。
違う、アレンが知りたいのはそこではない。下に目を向けると、求めていた情報を見つける。
見えないが中に核がある。
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