メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

文字の大きさ
上 下
228 / 424
13.魔界

5.首を突っ込んだ代償

しおりを挟む
 アレン達が懐かしのホーリードラゴンに目を奪われている間に、するりと横を精霊たちが抜けていく。精霊たちはホーリードラゴンの周りをパタパタと飛んでいる。

『グォ』
『何をしているのか? 決まっているわ。今から私がアイツらをボコボコにって嘘ですごめんなさい』

 精霊は虚勢を張ろうとシャドーボクシングして、コストイラの刀を見た瞬間速攻で謝った。ちなみにコストイラの刀は最初っから見えていた。

『グルルル。グルオウ』
『えっ!? この傷作ったの、アイツらなの? 仇を討ってやるわ』
『グルォオオウ』
『えぇ、でもぉ』

 片方が人語を介していないせいでどんな会話をしているのかが分からない。

「今気づいたけどあの鱗ってこいつのだよな」
「何で精霊が持ち出そうとしてたんだ?」
『それはね!』

 コストイラが納得し、アシドが新たな疑問を呈する。その疑問に対し、精霊が誇らしげに胸を張り、対応する。自分何でも知ってもすよ感のある手の置き方が絶妙に腹立つ。

『私達が鱗を換金して、有効に使ってあげようとしているのよ!』
「換金?」
『えぇ』
「どこで?」
『タランネで』
「誰と?」
『馬鹿なの? 商人とに決まってるじゃない』
「相手の種族は?」
『種族? さぁ、お金の勘定が上手な人間か蜥蜴人なんじゃない? っていうかさっきからこの問答は何? 何したいわけ?』

 苛立ったことで精霊の眉根に皴ができる。もう1匹の精霊も分かっていないのか似たような表情をしている。分っている聖龍は目を閉じ、フゥと溜息を吐いた。

『グルゥグロロロロ』
『え? まぁね。そりゃあ私達のお肉は食べれば若返るって言われているし(⤴)、この翅の鱗粉は万能薬にもなるし(⤴)、当たり前よね』
『えぇ、皆が欲しがるよ』
『待って、皆って商人も含まれるんじゃない?』

 ようやく気付いたようだ。慌ててあちこちに飛んだのち、ホーリードラゴンに着地する。そして、鏡合わせにこちらを指さす。

『『あんた達もそれが目的だったのね!!』』

 あらぬ誤解を受けてしまった。コストイラはもう面倒になってしまい、首裏に手を回し、溜息を吐いた。ホーリードラゴンも妖精のテンションに疲れたのか水の中に消えていった。

『わ、わ』

 急に足場が動き、2匹は飛びながら頬を膨らませている。

「ど、ど、どうですか?」
「少しまだ痺れが残っていますが、時間が経てば治りそうです」

 一方で、左手を貫かれたアレンは無事に矢を撤去されており、すでに傷口は塞がっていた。しかし、どこか神経を傷付けてしまったのか、血の巡りが悪いのか動かすと痺れがある。力が入りにくい。しばらく左手を開閉していると、エンドローゼが両手で挟んできた。

「アレンはその状態で弓を引けるのか?」
「やってみないと分からないですが、凄く頑張らないと駄目な感じがありそうですね」
「じゃあ、これからは完全な司令塔になるわけね」
「おそらくは。僕一人で何とかしなくちゃいけない場面にならなければいいですけどね」

 弓のことを聞かれドキリとした。アレンは背負っていた弓を左手で取り掲げてみる。少しプルプルしている。気を付けなかければ落してしまいそうだ。弦を摘まみ、ゆっくりと引いていくが、左手が負けてしまいそうだ。

「な、な、治したばかりなので、そ、そんなにう、動かさないでください」

 エンドローゼに強く言われてしまった。アレンが弓を下ろそうとして、森の奥で何かが光った。光源があったというよりは光を何かが反射したという方が近いだろう。

「どうかした?」
「え? あぁ、えっと、何かが光った気がして」
「アンタが一番目が良いのよ。アンタが見えないんじゃ、私には見えないわ」

 アストロに我に返され、感じたものを説明する。アストロが手で傘を作り、目を細めるが、何も見えない。

「シキ!」

 アストロがシキを呼ぶと素早く擦り寄ってくる。猫を扱うように下顎を撫でる。シキは気持ちよさそうに目を細める。

「シキ? あっちの方で何かが光ったっぽいの。調べてみてくれる?」
「ん」

 アストロがシキに指示を出すと、それに従い、森に入っていった。

「従者みたいになってません?シキさんは勇者なのに」
「とはいっても、シキは皆を先導するよりも命令される方が性に合ってるみたいよ。私生活の方でもよ。覚えておきなさい、アレン」
「名指しですか」
「えぇ、強くいけば行けるわね」
「い、いけ!?」

 アレンは助けを求めるようにエンドローゼを見ると、彼女はにこやかに見守っている。何だろう、この出来の悪い弟を見る姉みたいな生暖かい目は。

「あれ?」

 シキがもう戻ってきた。かなり早いがもう何か見つけたのだろうか。

「魔物。何かこう、虹色でテカテカしていた」
「え?」
「コストイラ! アシド! レイド!」

 アストロが呼ぶと同時にバキメキと木々が倒れた。コストイラ達がバッと距離をとる。

「何だ!?」

 コストイラは刀を半ばまで抜き、刃を見せる。木を倒した主は波のようにズルズルと姿を現す。かなり粘性があるように見える。ズモモと魔物の高さが増す。10mはあるのではないだろうか。

 アレンは瞳に魔力を集める。そして、ガレットの書を開いた。

 アイリススライム。虹色の光沢を放つ巨大なスライム。光属性。その体はデカく、じっとしている時でも10mはある。伸ばそうと思えば2,30mは伸びるだろう。伸びあがる根元からは触手状にして体を操ることができる。採取できる粘液は高く売れる。可食部はない。どこもかしこもぬちゃぬちゃしていて食べていたくない。

 違う、アレンが知りたいのはそこではない。下に目を向けると、求めていた情報を見つける。
 見えないが中に核がある。

 本から顔を上げると、スライムの鞭がアレンの腹を叩いた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw

かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます! って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑) フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

処理中です...