メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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13.魔界

3.魔界のはぐれもの

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 街に住むすべての住民は皆仲良しなどとなるはずもなく。そこには必ず、少なくとも一人は馴染めない者が生まれる。

 俗にはぐれとされるものだ。

 タランネの町長は考え、街の外へと彼らを追いやった。このまま中にいてもいじめられてツラいだろうからというのが言い分。その結果、イジメの助長、及び深刻化に繋がった。街の中は優遇され、外は冷遇された。外の者達は屋根のある場所として、もう使われなくなった研究棟を占拠した。

 つまり、研究棟ははぐれの巣窟となった。アレン達はその研究棟に足を踏み入れた。中には犀の頭の魔物が多くいた。おかげで魔物の名前が分かった。この魔物はダークマージというらしい。先ほどは分からなかったが、ガラベーヤのような服装に鉤のように先の曲がった杖を持っている。
 犀の皮膚は基本的には断ちにくいと思っていたのだが、なぜかコストイラはばったばったと切っていく。試しにコストイラから刀を借り、皮膚を切ろうとしたが駄目だった。武器ではなく技術の賜物というわけか。ちなみにシキも簡単に切っていた。

「何でそんな易々と斬れるんですか?」
「むしろお前、斬れねェのか?」
「いつも斬ることを考えてたから」

 コストイラとシキはそれぞれの見解を述べる。もしその通りだとしたら、アレンには斬れるわけがない。

「気を落とさないで」

 シキがアレンの肩に手を置く。アレンは元気を取り戻した。

 ハァとコストイラは溜息を吐き、肩を竦める。

「早よ来い」
「え、あ、アラクネですね」

 コストイラは魔物と対峙する。魔物は上半身が女体で下半身が蜘蛛であり、その下半身をスカートで隠していた。アラクネは壁に張り付き、尻を見せると網を発射する。コストイラは網を飛び越え、潜り抜け、燃やしていく。

「ウェブ」

 コストイラとシキは軽々と避けていくが、アレンは早々に捕まってしまう。

「先に魔物の方を」
「当たり前だろ。助ける時に後ろから何てごめんだぜ」

 コストイラはアレンを見ることなく駆けだす。アラクネはそれを見て逃げ出そうとするが、ナイフが縫い留める。アラクネは爪でナイフを弾き抜くが、コストイラの方は間に合わない。コストイラは刀を振り上げ右腕を飛ばし、踏ん張りの効かぬ空中で炎を纏いアラクネの首を叩く。首を斬り落とせなかったが、アラクネを壁から引き剥がす。アラクネは床に叩きつけられ、顔に罅が入る。罅からドクドクと流れていた。
 コストイラは着地と同時に刀を振るが、アラクネは左手だけで体を起こし、刀を躱す。アラクネは反撃に転じようと爪に魔力を集める。コストイラはサメのような笑みを作る。面白い。振り下ろしていた途中の刀を無理矢理振り上げる。

 しかし、僅かにアラクネの方が速い。右腕からオレンジと黒の混じった煙を出しながら勝利を確信する。そこで、アラクネの右目にナイフが刺さった。
 動きが一瞬止まる。しかし、その一瞬で十分。コストイラの振り上げが下顎に入り、切り裂いた。

「よォし、助けるぞ」

 コストイラは刀についた血を拭いながら、アレンに近づく。

「もう斬ってんじゃん。つか何それ?手袋?」
「糸が手につく」
「成る程。燃やすけどいいよな」
「ま、待ってください。前回燃やして僕火傷負ったんですけど」

 刀に炎を纏わせながら近づくコストイラにアレンは焦る。アレンはコストイラに右腕を見せ、当時の火傷跡を示す。

「あの時は悪かったって。今度は大丈夫だから」
「いや、いや、いやぁあああああああ!!」

 笑顔で糸を燃やすコストイラに悲鳴を上げた。






「やっと戻ってきた」
「もう宿行こうぜ。飯食いたい」

 今回は火傷せず済んだアレンは額の汗を拭った。コストイラは腹を擦って、腹がすいたアピールをしてくる。

 シキがアストロを見つける。

「あら、シキ」
「ん」

 アストロの方もシキを見つけ声をかける。シキはアストロの方に小走りで近寄って行った。アストロがシキの頭を撫でると、シキが何かアストロに報告している。

「アストロとエンドローゼもそうだけどよ。シキも仲良くなってたんだな。意外だ」
「女子会に入る勇気が僕にはないので宿に行きます」
「一緒に行こうぜ」

 アレンとコストイラが宿に辿り着くとアシドとレイドがいた。レイドが肩を落としており、アシドが宥めていた。

「どうしたんですか?」
「ん? あぁアレンとコストイラか。いやな、ジョコンドの槍がここにないって分かってな。それでこれだ」

 アシドが視線を落とすために合わせて、アレン達も視線を落とすが、それよりも驚くべきことがあった。

「ジョコンドの槍ってここにないんですか?」
「おぉ、そうなんだよ」
「……何でも奈落に移動したらしい。なァアレン。奈落に行かないか」
「僕はいいですけど、他の皆さんはどうなんですかね」

 その後、女子組も合流し、事情を話すと反対意見は出なかった。

「でももう遅いから出発は明日ね。今日はアシドがこれ飲んで終わりね」

 コトと何かを机の上に置く。何かの野菜だろうか。

「おい、まさかこれ、嘘だろ」
「本当よ」
「グラタック?」
「えぇ、アナタのために買ってきたのよ。ありがたく食べなさい?」
「マジかよ」

 アシドは逆らえない凄みに押され、グラタックを手に取る。嫌そうな顔をしながら一口齧る。

「うごぉあっ!!!?」

 アシドが口元を押さえ倒れた。グラタックはとても辛い食べ物であり、普通は生で食べたりしない。辛さを少し柔らかくしたうえで食べるのだ。
 よく生で食べた。安らかに眠れ、アシド。
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