メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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13.魔界

2.隔離された研究棟

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「で? アイツまだ眠ってんの?」
「眠すぎて起きれんらしい」
「ほっときましょう」
「な、な、何かあったんでしょうか」

 アストロがキレている。エンドローゼは心配している。原因はアシドだ。なかなか起きてこない。というかアレンは起こすのを諦めていた。

「でも本当に何かあったんですかね」
「コーヒーのせいで昨晩眠れんかったらしい」

 なんだそれ。アレンは汗を垂らしたが、気持ちを切り替える。

「今日は散策にしましょうか」
「ま、休憩も大事だしな」
「そうね。アシドに食わせる罰も買わなきゃいけないしね」
「よ、夜更かしはいけないことですもんね」

 アレンの提案に皆が賛同した。エンドローゼがアシドの罰に乗り気なのは意外だ。

「私はこの街にあるというジョコンドの槍でも探してみるか」
「僕はどうしましょうかね」
「なら、オレと一緒に冒険しようぜ」

 レイドはバルカンフォードに言われたことを素直に実行しようとし、アレンは予定が決まらず悩む。するとコストイラに肩を抱かれ誘われる。前にもこんなことあった気がする。前はこの後賭博場に行ったんだっけか。

「また賭け事ですか? 僕は嫌ですよ」
「何? 賭け事?」

 口に出すと真っ先にレイドが反応した。そういえばレイドにはギャンブル好きの疑惑があったな。

「しねェし、やらねェよ。探検だっつってんだろ」
「本当だな」
「本当だよ。睨むな恐ェ」

 レイドに睨まれ、コストイラが身を震わせた。

「穏やかなものならいいですよ」
「じゃ決まりだな。行くぜ、真昼の肝試し」

 早速不穏でならない。






 アレン達はタランネの外に出ると、北東に歩き出す。

「あれ、東に行くんですか?」
「東って言っても北北東だけどな」

 歩き始めて5分もすると、目的地に着く。ここまで魔物には襲われなかった。アレンはホッとなどしていない。分っている。どうせ、この施設の中にうじゃうじゃいるんだろ。

 アレンはやさぐれていた。

「にしても意外だな。こういうノリには乗らないタイプだと思ってたよ」
「乗りたい」

 コストイラが振り返るとそこにはシキがいた。そう、この場にいるのはアレンとコストイラだけではなく、シキもいた。
 シキはある目的があってついてきた。それが達成できると思っているのは誰もいないが。

「とりあえず入るか」
「どうせ無事には帰れそうにはないですけどね」
「ぐれてんなァ」

 アレンが肩を落とすと、コストイラが苦笑いする。シキがアレンの背中を擦る。アレンの元気が少し戻った。アレンは単純な奴なのかもしれない。コストイラがそんな感想を持ちながら扉を開けると、何かがコストイラの顔を襲う。

「うおっ!!」

 コストイラは咄嗟に背を反らし、攻撃を躱す。空気を切る音を出した、目の前にある足を掴む。コストイラは敵を引っこ抜く。
 踊り子のような衣装を着た、暗い焦げ茶色のゴーレム。これまでのゴーレムと違うのは女型であり、細身である点。そのおかげで身軽で格闘もできる。宙に投げ出されたグランデヴィナは何とか体勢を整えようとする。その隙を狙いシキが回転しながら、斬りと蹴りの連撃を繰り出す。
 グランデヴィナは塀沿いに植えられていた樹木に背をぶつける。人形はそのままくたりと首を折った。

「何だったんだ? 魔物か?」
「分からないで投げたんですか?」
「咄嗟だったからついな」

 アレンは魔力を目に集中させ、ガレットの書を開く。コストイラはグランデヴィナの顔を覗き込んでいた。そこでアレンがあることに気付く。

「っ! コストイラさん!」
「これは俺も分かったぞ」

 コストイラが顔を横にスライド移動させると、先ほどまで左目があった場所をグランデヴィナの2本指が通り過ぎる。確実に目潰しをする。否、その奥にある脳にまで到達させようとする突き。コストイラはグランデヴィナの顔面にクロスカウンターを叩き込む。後ろにある木に挟まれ、顔面が砕ける。コロリと赤いビー玉が落ちた。目の役目をしていた部分だ。

「その眼の部分は高値で売れる時があるそうですよ」
「マジか」

 コストイラが摘まみ上げる。

「ん? 売れる時?」
「はい。この本によるとその赤い目は宝石と同等の価値があるようですが、どうやら定期的に大量発生するらしく、その場合は安くなるのだとか」
「へェ、今はどっちなんだ」
「さぁ?」

 コストイラにきらきらとした目で開かれたが、アレンには答えられない。

「多分高い」
「は?」
「市場でこの赤い宝石を見ていないから」
「持ち帰るしかねェな」

 コストイラは丁寧にハンカチで宝石を包む。その影でアレンも赤い宝石をふわふわな布で包み、カバンにしまう。

「アレンは宝石好き?」
「宝石というよりお金が必要なので採っているので、あまり宝石が好きかどうかは考えたことないですね」
「そう」

 そう言ったシキは離れていった。

「何だったんですかね」
「さぁな」

 コストイラは知っていながら答えない。こういうのは自分で気づいた方がいい。それに第3者視点は見ていて面白い。アドバイスくらいならしてやろう。まぁ、こちらが進展するのはもっと後になるだろうな。

「よし、中に入るか」

 コストイラは伸び切った草を踏みながら中に入り、建物の扉を開ける。

「うおっ!!」

 コストイラは再び背を反らし、顔面への攻撃を躱す。しかし、先ほどと違うのは、通過した攻撃が足技ではなく、魔術だったことだろう。攻撃の線上にいたシキはナイフで弾く。弾かれた魔術はアレンに向かう。

「ふぇ?」
「あ」
「ん?」

 アレンは無抵抗にも魔術に当たり、倒れてしまう。アレンはプルプルと震えている。

「大丈夫?」

 シキが頭を撫でる。アレンは元気を取り戻した。

「平気か?」

 コストイラも見に来る。答えようと顔を上げると、言葉に詰まる。コストイラの手には犀の頭が握られていた。犀の頭?ここに犀がいるとは思えない。犀の頭をした魔物でもいたのだろう。残念なことに死体としか表示されないので種類が分からない。

「何ですかそれ」
「分からん。こいつが何か撃ってきたから反撃しただけだから。オレ魔物の名前とか詳しくねェからな」
「僕は死体だと名前とか分からないので、僕も分からないですね。シキさんは?」

 シキも首を振った。この場には犀の頭を持つ魔物の名前を知る者はいなかった。ごめん、犀の頭の魔物。中に入ろうとした入り口の側には、その魔物の体と思しきものが倒れていた。人の体。犀の皮膚をしているが、人の体であった。犀頭人体とでも呼べばいいのだろうか。

 アレンは魔術があった箇所を掻きながら建物の中へと入っていった。
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