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12.世界樹
14.朽ちた世界樹
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河童の里長の話では、この湿原を抜けると世界樹があるという。
現在、アレン達は湿原を突破し、件の森に着いていた。彼らは森に入ることはなく、その前で一夜を明かすことにした。里長の話ではこの森は非常に大きく、魔物も強いため万全の状態で挑むべきなのだとか。
翌日。目を覚ますと絶望的な光景が広がっていた。恐ろしいほど濃い霧に包まれていたのだ。これはもはや霧ではなく煙の域だ。伸ばした自分の指先さえギリギリだ。コストイラは自身の指が見えるが、エンドローゼには見えない。見える見えないにも個人差がある。
「1m先が限界か?」
「い、い、1mもみ、み、見えないです」
他の人たちも同じように手を伸ばす。アストロ、シキは見えるが、アシド、レイドは見えない。
「おい、アレンはどうだ?」
「僕は見えますね」
「どんくらい?」
「皆さんと同じくらいじゃないですかね。3m先がギリギリです」
「3m!? ”勇者の眼”ヤベェな」
一同はアレンの視力に驚愕する。全員が見える状態のアレンは明らかに常人以上の視力を有していた。
「また先導してくれ」
「魔力にも限りがありますが、頑張ります」
アレンは魔力を集中させ、盤面を展開する。今度は半径10mにする。視界が効かない分、早めに感知する必要がある。
「何か? オレの肌濡れてね?」
コストイラは両腕を広げ、そして、自身の腕を撫でる。アストロは溜息を吐いた。
「当たり前でしょ? 霧って水分なんだから」
「へぇ~~」
コストイラはアストロの方を向き、感嘆の声を漏らすが、アレンにはそうは見えない。コストイラはアストロを視認できていないので顔が完全にエンドローゼを向いている。この状況はアレンにしか見えていない。
………自分だけってなんか優越感あるな。
アレンが鼻高々にしていたからか、反応が遅れた。
「シキさん。後ろからえっと、左斜め後ろから魔物が接近。直線で5mほど」
「ん?」
シキが小さく声を出す。アレンの声が聞こえなかったのではなく、アレンの言った距離と今足首に巻き付いた蔦の攻撃速度があっていないのだ。アレンは魔物は5m先だと言った。シキは瞬間的にアレンの探知の弱点が分かった。アレンは体が見えているのではなく、その体の中核が見えているのだ。つまりはそこから伸びる手足や、武器までは見えていない。感知範囲外からの超遠距離攻撃は見えないのだ。
僅か0.1秒の思考で察したシキはあっという間に蔦を切る。
「敵の攻撃はここまで届く」
「マジで?」
コストイラは居合の体勢を解き、刀を抜く。
「シキ、もう攻撃はきたのか?」
隣にいたレイドが楯を構えながら聞くが、返ってこない。
「ん? シキ? おい、シキ? いないのか」
「あれ? シキさんが凄いスピードで敵に向かっていますね」
「マジかよ。こんな中走るとか化け物、いや、勇者だわ」
コストイラはシキを、その職業に絡めて感動する。言っている側から後を追おうとしたアシドが木の枝に頭を打った。こういう視界不明瞭な時はあまり動かない方がいいのに。
目の前に突如として現れる木の枝を背面飛びで躱す。シキはアレンのように遥か先が見えているわけではなく、僅か1m前に出現する障害物を脅威の動体視力で、見てから回避しているのだ。シキは一瞬のうちに5mの距離を消すと、目の前にダークトレントを捕捉する。
「さよなら」
ダークトレントが何かの反応を残す前に仕留める。シキはナイフを突き刺したまま、ダークトレントの死体をまじまじと見る。アレン達が合流してくる。
「やっと追いついた」
「5mって嘘だろ。長く感じたぜ」
「ど、ど、どっどど、どどうど、どうしたんですか?そ、そ、そんなまじまじと」
シキが死体の腕を持ち上げる。
「世界樹?」
「なわけ。ダークトレントだろ」
即答で突っ込まれシキの肩が落ちた気がする。無表情すぎて分からない。その行動の意図は何だ?
「何だこの壁は? いや、丸太か?」
レイドは一人、薄汚れた白い壁を撫でていた。そこにアシドが近づく。
「確かに何だろうな。どっちにしろ白いのは珍しい。つか、どっかで見たことあんな」
「どうした?」
ゾロゾロと全員が集まる。そこで、ポツリとコストイラが正解を呟く。
「これ魔物だろ。ほら、これ鱗だろ」
アレンはコストイラに言われ、気になった。なので瞳に魔力を集めていく。見れる盤面が縮小する。今は7mほどか。見える情報は見たことあるものだった。そう、龍使いの塔で見たものだ。
「龍使いの塔で見たあの」
「あのドラゴンかっ!」
アシドは思い出し、傷を撫でる。しかし、すぐに手を離した。
「つか、これ眠ってんのか? めっちゃ触ったけど怒らせてないよな、な?」
「いや、もう遅いだろ」
アシドは焦っている。コストイラはもう諦めている。
「いや、でも、これ」
「はい、もう死んでます」
アストロがアレンに目線を送ると、アレンは意図を汲み、肯定する。霧に隠れて見えない部分は喰われて欠けている。傷つき、体力が尽きていたとはいえ、ホーリードラゴンが喰われている。強い敵がこの森にいるのだろう。辺りを見渡したところでいるとは思えない。ふと、ある樹木が目に入った。直径が20mはあろうか巨木だ。そういえば世界樹は巨木だと聞いたことがある。頂点がギリギリ見える。もしかして、この枯れ木が世界樹なのだろうか。
そこでアレンの眼にはまた魔力が集まっているのも思い出した。盤面にも青い点で表示されている。この樹木は魔物なのか。
蔦が動いているのが見えた。
「コストイラさんッ!!」
叫びを聞いたコストイラはアレンに何かを訊く前に刀を抜き、蔦に当てる。蔦を切りながらもホーリードラゴンの死体に突っ込む。
『ゴォアアアア!!』
目の前にいた枯れ木の巨木、ディケイドスが雄たけびを上げる。霧で視界が不明瞭な中、不利を背負った戦いが始まる。
現在、アレン達は湿原を突破し、件の森に着いていた。彼らは森に入ることはなく、その前で一夜を明かすことにした。里長の話ではこの森は非常に大きく、魔物も強いため万全の状態で挑むべきなのだとか。
翌日。目を覚ますと絶望的な光景が広がっていた。恐ろしいほど濃い霧に包まれていたのだ。これはもはや霧ではなく煙の域だ。伸ばした自分の指先さえギリギリだ。コストイラは自身の指が見えるが、エンドローゼには見えない。見える見えないにも個人差がある。
「1m先が限界か?」
「い、い、1mもみ、み、見えないです」
他の人たちも同じように手を伸ばす。アストロ、シキは見えるが、アシド、レイドは見えない。
「おい、アレンはどうだ?」
「僕は見えますね」
「どんくらい?」
「皆さんと同じくらいじゃないですかね。3m先がギリギリです」
「3m!? ”勇者の眼”ヤベェな」
一同はアレンの視力に驚愕する。全員が見える状態のアレンは明らかに常人以上の視力を有していた。
「また先導してくれ」
「魔力にも限りがありますが、頑張ります」
アレンは魔力を集中させ、盤面を展開する。今度は半径10mにする。視界が効かない分、早めに感知する必要がある。
「何か? オレの肌濡れてね?」
コストイラは両腕を広げ、そして、自身の腕を撫でる。アストロは溜息を吐いた。
「当たり前でしょ? 霧って水分なんだから」
「へぇ~~」
コストイラはアストロの方を向き、感嘆の声を漏らすが、アレンにはそうは見えない。コストイラはアストロを視認できていないので顔が完全にエンドローゼを向いている。この状況はアレンにしか見えていない。
………自分だけってなんか優越感あるな。
アレンが鼻高々にしていたからか、反応が遅れた。
「シキさん。後ろからえっと、左斜め後ろから魔物が接近。直線で5mほど」
「ん?」
シキが小さく声を出す。アレンの声が聞こえなかったのではなく、アレンの言った距離と今足首に巻き付いた蔦の攻撃速度があっていないのだ。アレンは魔物は5m先だと言った。シキは瞬間的にアレンの探知の弱点が分かった。アレンは体が見えているのではなく、その体の中核が見えているのだ。つまりはそこから伸びる手足や、武器までは見えていない。感知範囲外からの超遠距離攻撃は見えないのだ。
僅か0.1秒の思考で察したシキはあっという間に蔦を切る。
「敵の攻撃はここまで届く」
「マジで?」
コストイラは居合の体勢を解き、刀を抜く。
「シキ、もう攻撃はきたのか?」
隣にいたレイドが楯を構えながら聞くが、返ってこない。
「ん? シキ? おい、シキ? いないのか」
「あれ? シキさんが凄いスピードで敵に向かっていますね」
「マジかよ。こんな中走るとか化け物、いや、勇者だわ」
コストイラはシキを、その職業に絡めて感動する。言っている側から後を追おうとしたアシドが木の枝に頭を打った。こういう視界不明瞭な時はあまり動かない方がいいのに。
目の前に突如として現れる木の枝を背面飛びで躱す。シキはアレンのように遥か先が見えているわけではなく、僅か1m前に出現する障害物を脅威の動体視力で、見てから回避しているのだ。シキは一瞬のうちに5mの距離を消すと、目の前にダークトレントを捕捉する。
「さよなら」
ダークトレントが何かの反応を残す前に仕留める。シキはナイフを突き刺したまま、ダークトレントの死体をまじまじと見る。アレン達が合流してくる。
「やっと追いついた」
「5mって嘘だろ。長く感じたぜ」
「ど、ど、どっどど、どどうど、どうしたんですか?そ、そ、そんなまじまじと」
シキが死体の腕を持ち上げる。
「世界樹?」
「なわけ。ダークトレントだろ」
即答で突っ込まれシキの肩が落ちた気がする。無表情すぎて分からない。その行動の意図は何だ?
「何だこの壁は? いや、丸太か?」
レイドは一人、薄汚れた白い壁を撫でていた。そこにアシドが近づく。
「確かに何だろうな。どっちにしろ白いのは珍しい。つか、どっかで見たことあんな」
「どうした?」
ゾロゾロと全員が集まる。そこで、ポツリとコストイラが正解を呟く。
「これ魔物だろ。ほら、これ鱗だろ」
アレンはコストイラに言われ、気になった。なので瞳に魔力を集めていく。見れる盤面が縮小する。今は7mほどか。見える情報は見たことあるものだった。そう、龍使いの塔で見たものだ。
「龍使いの塔で見たあの」
「あのドラゴンかっ!」
アシドは思い出し、傷を撫でる。しかし、すぐに手を離した。
「つか、これ眠ってんのか? めっちゃ触ったけど怒らせてないよな、な?」
「いや、もう遅いだろ」
アシドは焦っている。コストイラはもう諦めている。
「いや、でも、これ」
「はい、もう死んでます」
アストロがアレンに目線を送ると、アレンは意図を汲み、肯定する。霧に隠れて見えない部分は喰われて欠けている。傷つき、体力が尽きていたとはいえ、ホーリードラゴンが喰われている。強い敵がこの森にいるのだろう。辺りを見渡したところでいるとは思えない。ふと、ある樹木が目に入った。直径が20mはあろうか巨木だ。そういえば世界樹は巨木だと聞いたことがある。頂点がギリギリ見える。もしかして、この枯れ木が世界樹なのだろうか。
そこでアレンの眼にはまた魔力が集まっているのも思い出した。盤面にも青い点で表示されている。この樹木は魔物なのか。
蔦が動いているのが見えた。
「コストイラさんッ!!」
叫びを聞いたコストイラはアレンに何かを訊く前に刀を抜き、蔦に当てる。蔦を切りながらもホーリードラゴンの死体に突っ込む。
『ゴォアアアア!!』
目の前にいた枯れ木の巨木、ディケイドスが雄たけびを上げる。霧で視界が不明瞭な中、不利を背負った戦いが始まる。
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