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11.妖怪の山
13.急造の教会
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秘密の組織のアジトは分かりづらく造るべきだ。木を隠すなら森の中。建築物を隠すなら都市の中。逆に森の中に建築物があれば目立つ。そこにあってもおかしくないように木組みで造られていても気になるものだ。あったらおかしなものであればなおさらだ。
森に教会。しかも町の中では見たことのない教会だ。今まではガラエム教、クロゴロ教、ナンバエッタ教、エリオ教、トッテム教の教会は見たことがある。シラスタ教とマーエン教の教会は見たことがない。確か、コストイラはシラスタ教だ。アレンはコストイラを見る。
「あん? 何だよ。これがシラスタの教会かって?答えは否だよ。そもそもシラスタ教は神像の類は存在しない。だから、教会とか建物自体がいらねェんだよ。だからこれは違ェ」
「そうなんですね。じゃあ、これはマーエン教なんですかね」
全員が教会を見つめる。
「あのディアボロスもマーエン教がどうたらって言ってたもんな」
アレン達は教会の扉を押し、中を覗く。誰もいない。
「え。中に入るんですか?」
アレンの言うことを無視し、アシドはこそ泥めいたムーブで中に入っていく。これが勇者のすることだろうか。
「これがマーエン教の神像か」
アシドは教会内の奥、一体の像の前で両手を腰に当て、眺めている。
「魔獣?」
マーエン教の主神は魔獣に見えた。その最大の理由は、姿がキツネのようだからかもしれない。東方には狐の獣人が住んでいるそうだが、その者達は2足歩行。一方この像のキツネは4足歩行。4つの足を着けて、こちらを威嚇するような様はまさしく野獣だ。像の後ろからは3本の尾が伸びており、ただのキツネではない。体中がトゲトゲしており、触る気すら起きない。まぁ、そもそも神像に触る気すらない。
「ねぇさっきシラスタ教は教会がないっていってたけど、こういう神像って見ててどう思うの?」
「どうって難しい質問だな」
アストロとコストイラはどちらも神像から目を離さずに会話する。コストイラは文句を言いつつ答えを出そうと神像を観察する。首を傾げながら、うんうん唸る。
「ごめん。無理しなくていいからね」
「いや、そうだな。このご神体の生き物は実在するかどうかが一番気になるかもな」
「実在するか?」
今まで祈りを捧げる中で、そんなことを考えたことがなかった。ガラエム教は主神が魔神様だが、実際にいたのかどうかは分かっていない。伝説が残っているが、信憑性が薄い。
「シラスタ教は神に祈らないんだが、偉人やその功績には感謝して、祈るんだよ」
「成る程。では過去は必要だな。とはいえ、この神が何という名であるのかが分からぬと調べるのが難しいな」
「神様の名前か」
アシドは顎を撫でながら首を傾げる。
『イーラ様だ』
後ろから声が聞こえ、焦って振り返る。
5mの身長の巨人。頭には全面の兜を被っており、顔が見えなくなっている。その兜には2本の角が付いており、身長が1mほど嵩増しされている。体は全身がマントで覆われており、ラインも分からず、肌の色さえ見えない。中にはいったい何が隠されているのか想像力を刺激してくる。
『君たちの目の前におわせられる御神像はイーラ様を模ったものだ。何かを調べると言っていたな。言うがいい。私に答えられることは出来得る限りに答えよう』
急に話しかけられ、敵か味方かの判別もできていない。聞くべきかどうかで悩む。
「この神様、イーラ様だっけ? は、神話だけの存在なのか、歴史上の存在なのか。それを調べたいんだ」
コストイラは巨人の目があるであろう位置に視線をやり、素直に質問する。巨人も少し顔を動かし、コストイラを見つめる。
『それはつまり、実在かどうかか?』
「そうとも言う」
『フム』
巨人は少し体を揺すり、姿勢を正す。
『していた。いや、されているぞ。こうしている今も、存在されている』
「されてるって、まだ生きているってことか?」
巨人はコストイラがマーエン教に興味を示してくれていることに嬉しく思い、兜の下で薄く笑う。
『今より350年前ほどに、初代勇者ジョコンドによって封印された。世間はイーラ様を邪神として扱うが、私は違うと思っている。それを証明するために我々マーエン教がいるのだ。ところで、まさか君達はガラエム教じゃあるまいな』
最後、急に雰囲気が変わった。すべての宗教は互いに仲が悪いが、マーエン教はそれが激しい。自分の商売敵に対して過剰に反応し、別の宗教を徹底的に排除する。特にガラエム教に関しては根絶しようとするほどだ。
この場にガラエム教は3人もいる。どう切り抜けるべきか。
『先ほど質問をした君はどこの宗教だ?』
「え、シラスタ教だぜ」
『―――。』
巨人は押し黙った。これはどうすればいいのだろう。逃げた方がいいのだろうか。
『知らん宗教だな。きっとマイナーな神なのだろうか』
「無神の宗教だからマイナーとかでもねェな」
沈黙が流れた。両者ともものすごいスピードで脳が回転しているのだろう。
『天誅!!』
コストイラの真上から、闇色のオーラを纏った拳が降ってくる。コストイラは同時に抜刀し、拳に当てる。闇と炎がぶつかり合い、拮抗する。
「コストイラ!」
アストロが援護射撃をしようとするが、ぐりんと巨人の兜がこちらを向く。
『邪教徒どもめ!』
巨人は裏拳気味に手の甲で魔術を消す。手袋が嵌められた手とマントの間で、青紫色の肌が露わになる。その肌に目を奪われた一瞬、爪先をコストイラに叩き込む。爪先を腹に刺されたコストイラは、内臓を掻きまわされる感覚になり、吐いてしまう。教会の壁にぶつかり、ずるりと落ちる。
『背教者。野蛮人。マーエン教の考えに参画できない者は、死あるのみ!!』
怒れるビショップは目を血走らせ、アレン達を睨みつけた。兜の隙間からはフシュ―と息が漏れ出す。
森に教会。しかも町の中では見たことのない教会だ。今まではガラエム教、クロゴロ教、ナンバエッタ教、エリオ教、トッテム教の教会は見たことがある。シラスタ教とマーエン教の教会は見たことがない。確か、コストイラはシラスタ教だ。アレンはコストイラを見る。
「あん? 何だよ。これがシラスタの教会かって?答えは否だよ。そもそもシラスタ教は神像の類は存在しない。だから、教会とか建物自体がいらねェんだよ。だからこれは違ェ」
「そうなんですね。じゃあ、これはマーエン教なんですかね」
全員が教会を見つめる。
「あのディアボロスもマーエン教がどうたらって言ってたもんな」
アレン達は教会の扉を押し、中を覗く。誰もいない。
「え。中に入るんですか?」
アレンの言うことを無視し、アシドはこそ泥めいたムーブで中に入っていく。これが勇者のすることだろうか。
「これがマーエン教の神像か」
アシドは教会内の奥、一体の像の前で両手を腰に当て、眺めている。
「魔獣?」
マーエン教の主神は魔獣に見えた。その最大の理由は、姿がキツネのようだからかもしれない。東方には狐の獣人が住んでいるそうだが、その者達は2足歩行。一方この像のキツネは4足歩行。4つの足を着けて、こちらを威嚇するような様はまさしく野獣だ。像の後ろからは3本の尾が伸びており、ただのキツネではない。体中がトゲトゲしており、触る気すら起きない。まぁ、そもそも神像に触る気すらない。
「ねぇさっきシラスタ教は教会がないっていってたけど、こういう神像って見ててどう思うの?」
「どうって難しい質問だな」
アストロとコストイラはどちらも神像から目を離さずに会話する。コストイラは文句を言いつつ答えを出そうと神像を観察する。首を傾げながら、うんうん唸る。
「ごめん。無理しなくていいからね」
「いや、そうだな。このご神体の生き物は実在するかどうかが一番気になるかもな」
「実在するか?」
今まで祈りを捧げる中で、そんなことを考えたことがなかった。ガラエム教は主神が魔神様だが、実際にいたのかどうかは分かっていない。伝説が残っているが、信憑性が薄い。
「シラスタ教は神に祈らないんだが、偉人やその功績には感謝して、祈るんだよ」
「成る程。では過去は必要だな。とはいえ、この神が何という名であるのかが分からぬと調べるのが難しいな」
「神様の名前か」
アシドは顎を撫でながら首を傾げる。
『イーラ様だ』
後ろから声が聞こえ、焦って振り返る。
5mの身長の巨人。頭には全面の兜を被っており、顔が見えなくなっている。その兜には2本の角が付いており、身長が1mほど嵩増しされている。体は全身がマントで覆われており、ラインも分からず、肌の色さえ見えない。中にはいったい何が隠されているのか想像力を刺激してくる。
『君たちの目の前におわせられる御神像はイーラ様を模ったものだ。何かを調べると言っていたな。言うがいい。私に答えられることは出来得る限りに答えよう』
急に話しかけられ、敵か味方かの判別もできていない。聞くべきかどうかで悩む。
「この神様、イーラ様だっけ? は、神話だけの存在なのか、歴史上の存在なのか。それを調べたいんだ」
コストイラは巨人の目があるであろう位置に視線をやり、素直に質問する。巨人も少し顔を動かし、コストイラを見つめる。
『それはつまり、実在かどうかか?』
「そうとも言う」
『フム』
巨人は少し体を揺すり、姿勢を正す。
『していた。いや、されているぞ。こうしている今も、存在されている』
「されてるって、まだ生きているってことか?」
巨人はコストイラがマーエン教に興味を示してくれていることに嬉しく思い、兜の下で薄く笑う。
『今より350年前ほどに、初代勇者ジョコンドによって封印された。世間はイーラ様を邪神として扱うが、私は違うと思っている。それを証明するために我々マーエン教がいるのだ。ところで、まさか君達はガラエム教じゃあるまいな』
最後、急に雰囲気が変わった。すべての宗教は互いに仲が悪いが、マーエン教はそれが激しい。自分の商売敵に対して過剰に反応し、別の宗教を徹底的に排除する。特にガラエム教に関しては根絶しようとするほどだ。
この場にガラエム教は3人もいる。どう切り抜けるべきか。
『先ほど質問をした君はどこの宗教だ?』
「え、シラスタ教だぜ」
『―――。』
巨人は押し黙った。これはどうすればいいのだろう。逃げた方がいいのだろうか。
『知らん宗教だな。きっとマイナーな神なのだろうか』
「無神の宗教だからマイナーとかでもねェな」
沈黙が流れた。両者ともものすごいスピードで脳が回転しているのだろう。
『天誅!!』
コストイラの真上から、闇色のオーラを纏った拳が降ってくる。コストイラは同時に抜刀し、拳に当てる。闇と炎がぶつかり合い、拮抗する。
「コストイラ!」
アストロが援護射撃をしようとするが、ぐりんと巨人の兜がこちらを向く。
『邪教徒どもめ!』
巨人は裏拳気味に手の甲で魔術を消す。手袋が嵌められた手とマントの間で、青紫色の肌が露わになる。その肌に目を奪われた一瞬、爪先をコストイラに叩き込む。爪先を腹に刺されたコストイラは、内臓を掻きまわされる感覚になり、吐いてしまう。教会の壁にぶつかり、ずるりと落ちる。
『背教者。野蛮人。マーエン教の考えに参画できない者は、死あるのみ!!』
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