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11.妖怪の山
9.アストロの野営クッキング
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見つけた建物は、半分が木に埋まっていた。大木の感じからして、木が育った後に穴をあけ、建物を造ったのだろう。色は木と同じ色であり、カモフラージュしていたのかもしれない。窓やドアがあるので目を凝らすと分かってしまう。木の上にも家がある。ツリーハウスというやつだろう。
そこでアレンはピンときた。東方に住む人種の中で空を飛べる天狗の家ではなかろうか。つまりここは、
「天狗の村か」
アレン達は天狗の里に足を踏み入れた。
コストイラとアシドが嬉々として焚火の準備をしている。アストロとエンドローゼはハーピーの肉の解体をしている。アレンが解体用ナイフをエンドローゼに渡すとき、彼女は顔を真っ青にしていた。彼女には刺激の強い光景が待っていることは自身でも容易に想像ができているのだろう。
残りのアレンとシキとレイドは里内の探索をしていた。敷地内でキャンプファイアするのだ、許可を取らねばならない。下の建物はどうやら来客用らしい。そうでなかったとしたら温泉施設だ。湯は張られておらず、備品も多くが失われていたが、どう見ても宿泊施設だ。
「誰もいませんね」
「住んでいた形跡はあるのに、最近まで誰かがいた形跡がない」
埃を吸い込まないようにハンカチを口に当てる。
「包帯や薬品の入っていたらしい瓶がある。野戦病院でも兼ねていたのか?」
「一回出ません?」
「………そうだな」
息苦しくなってきた2人が外に出る。木登りをして上を見てきたシキと合流する。
「住んでいた跡はある。でもいたと思えない。まるで遺跡」
どうやらシキも同じ感想を持ったらしい。上の光景はどこも同じだったようだ。
「これがあった」
「こ、これは!?」
アレン達はアストロ達の元に急いだ。
まず、ハーピーから足を切り離す。一体が大きめの子供並みなので、少し大変だ。割とグロいのでエンドローゼはもう使い物にならない。3体分を解体すると、下処理を始める。皮を剥ぎ、アシドに手伝ってもらい、水で洗う。解体用のナイフで数度刺して、動きを止めた。香草はあるが、調味料がない。味付けはどうするか。
「ねぇ、エンドローゼは何かいい案ない?」
「うぅぇえ? な、な、何にもないです………。ご、お、ごめんなさい」
吐き気を催しているエンドローゼは何も考えることができない。
「アンタ、回復術士なんだからこういうの慣れなきゃいけないんじゃない?」
「わ、わ、私も頑張ってるんですよォ」
エンドローゼは少し離れた場所で、口元を手で押さえている。今日、食事ができるのだろうか。
「アストロ」
「ウワッ!? シキ、アンタそうやって気配消して後ろから脅かすの止めなさい」
「分かった」
アストロに両の頬を挟まれながら、シキは素直に頷く。
「それで、何よ」
「これ」
「何この瓶」
アストロの中を見て、一掬いすると、じっと見て、ぺろりと舐める。
「塩?」
「そう」
「塩なんてあったんだ」
「ん」
「でもこれ大丈夫なの? 今舐めちゃったけど、何年前のものか分からないし」
「大丈夫。塩に期限はない」
「ありがたく使いましょ」
アストロはハーピー肉に塩と胡椒の実を砕いたものを振り、揉みこむ。
「シキも手伝って」
「料理したことない」
「作れる方がいいわよ。将来、損はないわよ」
「ん」
シキもアストロに倣い、ハーピー肉を揉む。
「アレンとレイドはこの香草を千切っておいて」
「ん?」
「あ、はい」
レイドとアレンは従順に指示に従う。レイドは貴族の、しかも長兄でありながら、家族やメイドの目を盗んで料理をしていたこともあり、手際がいい。アレンは料理をしたことがないので、たどたどしくレイドの真似をする。
「あら、レイドは料理したことがあるのね」
「少しな、趣味でやっていたのだ」
「まだか? 火はもう万全だぞ」
下準備を終える頃、コストイラが合流してくる。
「もう焼くから鉄板か網を用意なさい」
「できてるぜ。香草焼きっぽいにおいがしてたからな」
「上出来」
アストロはコストイラにハーピー肉が乗っているトレイを運ばせる。
「においでわかるもんなんですかね?」
「作り手食い手関係なく、食に関心があれば分かるんじゃないか?」
答えたレイドはエンドローゼに近づき、肩を貸した。
食事が終わり、各々が片付けを始める。ガレットの書に書いてある通り、すごく美味しかった。全員の共通認識になった。
「誰だ!? お前等!?」
叫んだのは、いま村内に入ってきた男だ。
「えっと、僕たちはここで昼食をとっていたのです」
「昼食?」
胡乱な眼で回りを見る。男の目に飛び込んできたのは大量の血と羽。
「お前等、ここの住民を!!」
「ち、違います! ハーピーです」
言ってアレンは気付いた。男は羽が生えている。男の正体はおそらく天狗だ。もしかしたら、天狗には姿の似ているハーピーを狩るのは禁止という規約でもあるのだろうか。
アレンは必至な弁明を考える。男が口を開く。
「お前等、魔物の肉を食べているのか」
聞いたところによると、この男はこの村の出身らしい。幼いころに留学に行かされ、100年以上ぶりに返ってきたらしい。何やら大規模な戦争が起こっていたらしく、親が逃がしたらしい。
アレンは自分たちが見たこの村の現状を説明する。
男が崩れ落ちる。
「馬鹿な。いなかっただと。どうしてだ。我々は戦争に負けたのか」
ふらふらと立ち上がる。
「すまない。自分の目で確かめさせてくれ。どうにも信じられない」
「それが普通です。僕達はその間に村を出ていきます」
「あ、ああ。またどこかで会えたらまたお話でもしてくれよ。まぁ、もう会わないだろうけどな」
男は羽ばたき、上に行ってしまう。
「行きましょう」
「あぁ」
この村のことは何も知らない。だが、これが自分の村だったらどうだろう。彼は強いのだろう。いや、強く振舞っているだけなのかもしれない。
そこでアレンはピンときた。東方に住む人種の中で空を飛べる天狗の家ではなかろうか。つまりここは、
「天狗の村か」
アレン達は天狗の里に足を踏み入れた。
コストイラとアシドが嬉々として焚火の準備をしている。アストロとエンドローゼはハーピーの肉の解体をしている。アレンが解体用ナイフをエンドローゼに渡すとき、彼女は顔を真っ青にしていた。彼女には刺激の強い光景が待っていることは自身でも容易に想像ができているのだろう。
残りのアレンとシキとレイドは里内の探索をしていた。敷地内でキャンプファイアするのだ、許可を取らねばならない。下の建物はどうやら来客用らしい。そうでなかったとしたら温泉施設だ。湯は張られておらず、備品も多くが失われていたが、どう見ても宿泊施設だ。
「誰もいませんね」
「住んでいた形跡はあるのに、最近まで誰かがいた形跡がない」
埃を吸い込まないようにハンカチを口に当てる。
「包帯や薬品の入っていたらしい瓶がある。野戦病院でも兼ねていたのか?」
「一回出ません?」
「………そうだな」
息苦しくなってきた2人が外に出る。木登りをして上を見てきたシキと合流する。
「住んでいた跡はある。でもいたと思えない。まるで遺跡」
どうやらシキも同じ感想を持ったらしい。上の光景はどこも同じだったようだ。
「これがあった」
「こ、これは!?」
アレン達はアストロ達の元に急いだ。
まず、ハーピーから足を切り離す。一体が大きめの子供並みなので、少し大変だ。割とグロいのでエンドローゼはもう使い物にならない。3体分を解体すると、下処理を始める。皮を剥ぎ、アシドに手伝ってもらい、水で洗う。解体用のナイフで数度刺して、動きを止めた。香草はあるが、調味料がない。味付けはどうするか。
「ねぇ、エンドローゼは何かいい案ない?」
「うぅぇえ? な、な、何にもないです………。ご、お、ごめんなさい」
吐き気を催しているエンドローゼは何も考えることができない。
「アンタ、回復術士なんだからこういうの慣れなきゃいけないんじゃない?」
「わ、わ、私も頑張ってるんですよォ」
エンドローゼは少し離れた場所で、口元を手で押さえている。今日、食事ができるのだろうか。
「アストロ」
「ウワッ!? シキ、アンタそうやって気配消して後ろから脅かすの止めなさい」
「分かった」
アストロに両の頬を挟まれながら、シキは素直に頷く。
「それで、何よ」
「これ」
「何この瓶」
アストロの中を見て、一掬いすると、じっと見て、ぺろりと舐める。
「塩?」
「そう」
「塩なんてあったんだ」
「ん」
「でもこれ大丈夫なの? 今舐めちゃったけど、何年前のものか分からないし」
「大丈夫。塩に期限はない」
「ありがたく使いましょ」
アストロはハーピー肉に塩と胡椒の実を砕いたものを振り、揉みこむ。
「シキも手伝って」
「料理したことない」
「作れる方がいいわよ。将来、損はないわよ」
「ん」
シキもアストロに倣い、ハーピー肉を揉む。
「アレンとレイドはこの香草を千切っておいて」
「ん?」
「あ、はい」
レイドとアレンは従順に指示に従う。レイドは貴族の、しかも長兄でありながら、家族やメイドの目を盗んで料理をしていたこともあり、手際がいい。アレンは料理をしたことがないので、たどたどしくレイドの真似をする。
「あら、レイドは料理したことがあるのね」
「少しな、趣味でやっていたのだ」
「まだか? 火はもう万全だぞ」
下準備を終える頃、コストイラが合流してくる。
「もう焼くから鉄板か網を用意なさい」
「できてるぜ。香草焼きっぽいにおいがしてたからな」
「上出来」
アストロはコストイラにハーピー肉が乗っているトレイを運ばせる。
「においでわかるもんなんですかね?」
「作り手食い手関係なく、食に関心があれば分かるんじゃないか?」
答えたレイドはエンドローゼに近づき、肩を貸した。
食事が終わり、各々が片付けを始める。ガレットの書に書いてある通り、すごく美味しかった。全員の共通認識になった。
「誰だ!? お前等!?」
叫んだのは、いま村内に入ってきた男だ。
「えっと、僕たちはここで昼食をとっていたのです」
「昼食?」
胡乱な眼で回りを見る。男の目に飛び込んできたのは大量の血と羽。
「お前等、ここの住民を!!」
「ち、違います! ハーピーです」
言ってアレンは気付いた。男は羽が生えている。男の正体はおそらく天狗だ。もしかしたら、天狗には姿の似ているハーピーを狩るのは禁止という規約でもあるのだろうか。
アレンは必至な弁明を考える。男が口を開く。
「お前等、魔物の肉を食べているのか」
聞いたところによると、この男はこの村の出身らしい。幼いころに留学に行かされ、100年以上ぶりに返ってきたらしい。何やら大規模な戦争が起こっていたらしく、親が逃がしたらしい。
アレンは自分たちが見たこの村の現状を説明する。
男が崩れ落ちる。
「馬鹿な。いなかっただと。どうしてだ。我々は戦争に負けたのか」
ふらふらと立ち上がる。
「すまない。自分の目で確かめさせてくれ。どうにも信じられない」
「それが普通です。僕達はその間に村を出ていきます」
「あ、ああ。またどこかで会えたらまたお話でもしてくれよ。まぁ、もう会わないだろうけどな」
男は羽ばたき、上に行ってしまう。
「行きましょう」
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