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10.境目果て
8.白銀の霊峰
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アレン達がしているのは登山ではなく、トレッキングだ。同じ高さの山の麓を歩いていた。今は風が少し止んでいた。山頂側に小槍があり、それが風を遮ってくれていた。それも数mで終わってしまうので本当に短い間の無風状態だ。ほんの数秒だったとしても体力の温存ができるのはありがたい。
ちらりとコストイラを見る。寒さへの苛立ちを抑え込もうとしているが、漏れだしているので今は話しかけない方がいいだろう。次いでエンドローゼを見る。今朝はすごく張り切っていたが、今は落ち込んでいる。また足を引っ張ってしまうと心配しているらしい。正直、その心配は今更な気もする。
先頭を歩いているアシドが振り返る。
「どこまで歩きゃいい?」
「山を下るまでです。真っ直ぐ行ってください。お願いします」
アシドは軽く頷くと歩き始めようとする。その時、風が吹いた。この場所はまだ小槍が風を防いでくれるはずだ。
視線を小槍の方に移す。
小槍には、足が生えていた。8mはある高さを惜しげもなく晒す小槍、もといジャイアントイエティは雄叫び上げた。小槍から発せられた大音量の声に当てられ、エンドローゼは尻餅をついてしまう。
アシドは焦っていた。
相手が強そう、だからではない。ジャイアントイエティの声が予想以上に大きかったからだ。この大きさはマズイ。
ゴゴゴ、と山が揺れる。
ほらきた。アシドは咄嗟にアストロを引き寄せ、胸に抱きとめる。レイドはエンドローゼを庇うように覆い被さる。アレンはシキを護り、コストイラは一人、心を燃やした。
次の瞬間、勇者一行は雪崩に呑まれた。飲み込まれた勇者たちは簡単に運ばれた。仲間同士、散り散りにされながら。
ジャイアントイエティは流されていない。この雪崩は8mの巨体を動かすには足らなかった。表層雪崩だ。ジャイアントイエティが動き出す。この巨体が動くたびに雪崩の危険性を孕んでいた。一歩一歩動くたびに雪が動く。
その姿はまさに絶望。
ジャイアントイエティは再び鳴いた。
今度は雪崩が起きない。ランダムのようだが、鳴くたびに雪が緩み、雪崩が起きやすくなる。
ジャイアントイエティは再び鳴く。どこか哀しみを含みながら。
ちらりとコストイラを見る。寒さへの苛立ちを抑え込もうとしているが、漏れだしているので今は話しかけない方がいいだろう。次いでエンドローゼを見る。今朝はすごく張り切っていたが、今は落ち込んでいる。また足を引っ張ってしまうと心配しているらしい。正直、その心配は今更な気もする。
先頭を歩いているアシドが振り返る。
「どこまで歩きゃいい?」
「山を下るまでです。真っ直ぐ行ってください。お願いします」
アシドは軽く頷くと歩き始めようとする。その時、風が吹いた。この場所はまだ小槍が風を防いでくれるはずだ。
視線を小槍の方に移す。
小槍には、足が生えていた。8mはある高さを惜しげもなく晒す小槍、もといジャイアントイエティは雄叫び上げた。小槍から発せられた大音量の声に当てられ、エンドローゼは尻餅をついてしまう。
アシドは焦っていた。
相手が強そう、だからではない。ジャイアントイエティの声が予想以上に大きかったからだ。この大きさはマズイ。
ゴゴゴ、と山が揺れる。
ほらきた。アシドは咄嗟にアストロを引き寄せ、胸に抱きとめる。レイドはエンドローゼを庇うように覆い被さる。アレンはシキを護り、コストイラは一人、心を燃やした。
次の瞬間、勇者一行は雪崩に呑まれた。飲み込まれた勇者たちは簡単に運ばれた。仲間同士、散り散りにされながら。
ジャイアントイエティは流されていない。この雪崩は8mの巨体を動かすには足らなかった。表層雪崩だ。ジャイアントイエティが動き出す。この巨体が動くたびに雪崩の危険性を孕んでいた。一歩一歩動くたびに雪が動く。
その姿はまさに絶望。
ジャイアントイエティは再び鳴いた。
今度は雪崩が起きない。ランダムのようだが、鳴くたびに雪が緩み、雪崩が起きやすくなる。
ジャイアントイエティは再び鳴く。どこか哀しみを含みながら。
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