メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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8.魔王インサーニアを討て

16.死を利用する者

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 生とは何か。



 どんな生物にも生き延びようとするシステムが存在する。しかし、生きる意味自体はない。



 では、生きる意味とは何か?



 過去、最も優れていると称された騎士アスタットは言った。生きることに意味はない。だからこそ、そんなものは自分で決めてしまえばいい。



 死とは何か。



 どんな生物にも存在するシステムだ。もしこの世界に死がなければ人口は今の10倍以上になっていると言われている。誰もに平等に降りかかり、誰もが直面していないもの。その定義は曖昧で、時代や地域によっても変わる。



 アスタットは言った。生の定義がなければ死の定義は出来ない。嘘のようだが、本当のことだ。私にも分からないことぐらいあるさ。



 ここで一つ考えなければならないことがある。回復魔法と生死の関係性だ。



 回復魔法は死に向かう体を無理矢理、しかし、生命活動を続けさせようとする魔法だ。生を望む者には重宝され、死を望む者には恨まれる。歴史的に見て、死を望む者たちは恨みを行動で示した。回復術士たちは忌み子狩りによって殺されていった。



 今でもその考えが根深く残っている地域が存在する。当事者はもうこの世にいないほど後の時代になっても考えが残っている。大体的なものはないが、今も続いている。



『アアアアアアアアアアアアッッ!!』



 死を望むもの、リッチは絶叫した。死を望むものとは死にたい者だけでなく死体を利用したい者も含んでいる。死体を利用する代表格であるリッチは、5メートルの身長を誇り、足元には従者のように死体が付き従っている。



 リッチの標的は一人。エンドローゼだ。溢れ出る回復術士の魔力は、リッチを狂わしていた。リッチは闇の魔力を纏った拳を振り回し、壁を破壊する。



 グリムリーパーは同じ職場で働くリッチのことをよく知っているつもりだった。しかし、この暴れようは想像できていなかった。リッチは普段後ろに居座り、死霊やゾンビを仕掛け撃破するという戦い方のはずだ。なのに今は壁を破壊してまで自分が前に出ている。何か因縁でもあるのだろうか。



「うひぇ」



 エンドローゼから変な声が出た。レイドがエンドローゼの襟を摑み、引っ張ったのだ。エンドローゼは遅い。リッチの3分の1ほどの速さしかない。エンドローゼにしてみれば気が付いたら目の前に闇のオーラを纏った拳があった、という光景だ。



 リッチの敵はただ一人。その他を相手している暇はない。



『フゥヲン!』



 ガシャガシャガシャガシャ。ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ!



 声に合わせるように控えていた死霊やゾンビ、そして骨が動き始める。その動きは素早く、レイドたちの動きを止めるように囲む。



 レイドとエンドローゼが引き剥がされる。その瞬間をリッチが見逃すはずがない。



 再び拳は闇の魔力を纏う。振りかぶったところに腹へと衝撃が走り、踏鞴を踏まされる。見るとレイドが投擲後のような姿勢だった。



『フゥア』



 グリムリーパーは落ち着けと宥めようとするが、リッチには届かない。



 なぜこうも止めたがるのか、なぜ邪魔をしてくるのか。



 リッチはグリムリーパーも敵であると判断した。しかし、リッチにとって敵は一人。魔力を纏わせた拳でグリムリーパーを殴り道を開ける。鎌でガードをしたが、鎌は折れ、何度も地面をバウンドしてようやく止まる。



 怯えた目を向けてくるエンドローゼを視界に入れる。



 リッチは右手を挙げる。右手から明るい紫色の紋様が光り輝く。紋様から紫色の煙のようなものが出ており、エンドローゼに向かって行く。何か分からないが攻撃だ。明らかにエンドローゼを狙っていく。煙の出方が激しくなった瞬間、右手が吹き飛んだ。暴発したのか。右手の傷口は引きちぎられたようになっていた。それよりも下、腕にはナイフが刺さっていた。



 リッチは傷口から視線を剥がし、エンドローゼに移す。リッチの顔に影。リッチは上を向く。そこにいたのはレイドだった。



 レイドは大剣を振り下ろす。腕力、遠心力、重さ、重力、その全てを利用して大剣を振り下ろす。大剣はリッチの額を割り、侵入し、顔の半分を切った。



『アアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!』



 顔面からオレンジと黒の混じった煙が噴き出す。絶叫を上げ、白眼を剥き、仰向けに倒れる。ビクビクと体を3,4度震わせると、動かなくなる。煙はもう出ていない。
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