メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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8.魔王インサーニアを討て

13.氷晶の檻

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 バリと音がした。



 ブルードラゴンの動きが止まった。表情は分からないが、どこか怯えているようにも見える。



 バリバキと再び音が鳴った。



 音源は塀の向こうか。何の音だろうか。アレン達は少しだけ塀から距離を置く。コストイラはすでに柄を摑んでおり、戦闘態勢に入っている。アレンの目でも魔力を込めようが、壁を貫通して見ることは出来ない。



 冷気で脆くなったのかボロリと塀の一部が零れ、冷気が噴き出す。そこからボロボロと塀が崩れていく。ドガリと塀を壊し、魔物が現れた。体から冷気を放つ、白い印象を受ける魔物だ。魔物の視線が、コストイラ達からブルードラゴンに移る。



 この光景はフレアドラゴンの時と同じだ。デジャヴを感じる。確かあの時はこの後。



 魔物が左手を振るうと冷気が溢れ、ブルードラゴンを包み凍らせる。続いて、右手を振るいアレン達にも冷気を送る。アレン達は凍ることはなかった。アストロの炎の魔術がそれを防いでいた。両者は拮抗していた。



 常識と反するかもしれないが、炎と氷の関係は魔術的観点から見ると氷の方が強いのだ。氷は水属性魔術に分類され、それは炎魔術に強いことを示している。だというのに拮抗しているということは威力自体はアストロの方が上なのだろう。



『ラ―――――――』



 玲瓏な歌声が響く。目に見えるほどの白い霧が押し寄せる。魔術の熱に触れ、水滴となり地面や塀を濡らす。冷気の中に人影が突っ込んでいく。コストイラとアシドとシキの3人だ。一列になっており、戦闘のコストイラが炎を纏い、霧を溶かし後ろ2人分の道を切り開いていく。炎はとぐろを巻き、水平に進んでいく。今のコストイラを止めるものは何もなかった。















 氷の女王と呼ばれる魔物は気付いた時、いつの間にかカレトワに仕えていた。まるでそうするのが普通のように振る舞っていた。当たり前のようにカレトワは受け入れ、氷の女王は教えてもいないのに物の場所が分かっていた。



 受け入れはしたもののやはり疑問はある。カレトワも最初は首を傾げていた。何だこいつは、とも思ったが何も言わなかった。身の回りの世話を焼いてくれるので、便利だったので放置していた。



 氷の女王の身長は3メートルもある。2メートルと少ししかない塔の内部では女王は常に腰を折って生活しており、つらそうに見えた。だからカレトワは塔の改装をした。



 氷の女王はそれを感謝し、より一層、心より仕えるようになった。目の前に炎を纏う刀が出現した。



 あ、死ぬかも。



 そんなことを思った時には自然と体が動いていた。
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