135 / 400
8.魔王インサーニアを討て
9.紅蓮の塔
しおりを挟む
峠を抜けた先は塔しかなかった。正確には他にもたくさんあるのだが、目を引くものが塔しかない。コストイラの髪の色にも似た、燃えるような赤い塔は、3メートルほどの外壁で囲われている。上から見たときは分からなかったが、結構高い外壁で守られていた。とりあえず、外壁内に入るために入り口を探さなければ。
約3分後。明らかに入り口があるだろうところを発見した。曖昧な言い回しにしているのには理由があり、まだ確定できていないからだ。では逆になぜ推測できたのか。
レッドドラゴンが寝そべっているのだ。
とりあえず邪魔なのでどかしたい。静かに近づこうとすると、下顎を地面につけて伏せていたレッドドラゴンの目元が動く。まだ開いてはいない。全員の動きが一瞬止まる。しかし、足の速い2人は止まるどころか一気に動いた。槍で首を貫通する。間違いなくこの攻撃で起きた。痛みによって起きるのは確実だ。痛すぎて気絶してくれていたら助かるが、相手はドラゴン。そううまくいくはずもない。
『グゥオオオオッッ!!』
ゴボゴボと血を押し出しながら、喉の奥から絶叫が響く。絶叫を上げるために持ち上げられた首にナイフを刺し込み、声を出せないようにする。絶叫に声はなくなったが、音自体は出ている。しかし、血が多くなっていくと音すら濁り、籠って聞こえなくなっていく。溢れる血の隙間から出る、言葉にならない叫び声に込めるのは、脅威に対する注意喚起と救済。自分が失われ、空っぽになる感覚を味わい、冷たくなっていくのを感じながら叫ぶ。叫んで、叫んで。叫び続けて――――。
そして、奴が現れた。
奴は石でできた囲いをものともせず突き破り這い出てきた。煙の中から現れるそいつは長い首を擡げ、こちらを睥睨する。2メートルを超える位置から見下ろす目は状況の把握を優先する。
『フンッ』
鼻で笑うような声を出し、大きく口を開ける。
『ゴォガァアアアアアアッッ!!』
死した同胞に向けてか、殺した仇敵に対してか、ドラゴンは咆哮を上げる。大気が震え、体が固まる。これまでドラゴンとは比べ物にならないほどの威圧感。3メートルほどしかなかった今までのドラゴンと違い、はるかに大きい。露出している部分だけで4メートル近くあり、まだ全体像が見えていないのでそれより大きいのは確実だ。体はマイトゴーレムのように鱗で覆われており、ところどころ罅割れており、オレンジに光る肌が露出している。
ギョロリとアシドとシキを見た。レッドドラゴンの上に乗る2人は明らかな仇敵だ。最初に狙われるのは道理。ガバリと口を開ける。アシドとシキは即座に横に跳んだ。ドラゴンの狙いが変わらない。そのまま口から炎が飛び出し、レッドドラゴンが燃えた。燃えカスが風に煽られ空へと舞い上がっていく。
火力が違う。威力が違う。威圧が違う。
アレンには特殊な眼があり、そこから得られる情報は格が違った。体力が42700?こちらの体力の誰よりも多い。今までの敵と何もかもが違いすぎる。
驚愕するこちらなど露知れず、フレアドラゴンはこちらに大きく口を開けた。上から高火力の炎が落ちてきた。
約3分後。明らかに入り口があるだろうところを発見した。曖昧な言い回しにしているのには理由があり、まだ確定できていないからだ。では逆になぜ推測できたのか。
レッドドラゴンが寝そべっているのだ。
とりあえず邪魔なのでどかしたい。静かに近づこうとすると、下顎を地面につけて伏せていたレッドドラゴンの目元が動く。まだ開いてはいない。全員の動きが一瞬止まる。しかし、足の速い2人は止まるどころか一気に動いた。槍で首を貫通する。間違いなくこの攻撃で起きた。痛みによって起きるのは確実だ。痛すぎて気絶してくれていたら助かるが、相手はドラゴン。そううまくいくはずもない。
『グゥオオオオッッ!!』
ゴボゴボと血を押し出しながら、喉の奥から絶叫が響く。絶叫を上げるために持ち上げられた首にナイフを刺し込み、声を出せないようにする。絶叫に声はなくなったが、音自体は出ている。しかし、血が多くなっていくと音すら濁り、籠って聞こえなくなっていく。溢れる血の隙間から出る、言葉にならない叫び声に込めるのは、脅威に対する注意喚起と救済。自分が失われ、空っぽになる感覚を味わい、冷たくなっていくのを感じながら叫ぶ。叫んで、叫んで。叫び続けて――――。
そして、奴が現れた。
奴は石でできた囲いをものともせず突き破り這い出てきた。煙の中から現れるそいつは長い首を擡げ、こちらを睥睨する。2メートルを超える位置から見下ろす目は状況の把握を優先する。
『フンッ』
鼻で笑うような声を出し、大きく口を開ける。
『ゴォガァアアアアアアッッ!!』
死した同胞に向けてか、殺した仇敵に対してか、ドラゴンは咆哮を上げる。大気が震え、体が固まる。これまでドラゴンとは比べ物にならないほどの威圧感。3メートルほどしかなかった今までのドラゴンと違い、はるかに大きい。露出している部分だけで4メートル近くあり、まだ全体像が見えていないのでそれより大きいのは確実だ。体はマイトゴーレムのように鱗で覆われており、ところどころ罅割れており、オレンジに光る肌が露出している。
ギョロリとアシドとシキを見た。レッドドラゴンの上に乗る2人は明らかな仇敵だ。最初に狙われるのは道理。ガバリと口を開ける。アシドとシキは即座に横に跳んだ。ドラゴンの狙いが変わらない。そのまま口から炎が飛び出し、レッドドラゴンが燃えた。燃えカスが風に煽られ空へと舞い上がっていく。
火力が違う。威力が違う。威圧が違う。
アレンには特殊な眼があり、そこから得られる情報は格が違った。体力が42700?こちらの体力の誰よりも多い。今までの敵と何もかもが違いすぎる。
驚愕するこちらなど露知れず、フレアドラゴンはこちらに大きく口を開けた。上から高火力の炎が落ちてきた。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【短編】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ、赤ちゃんが生まれる。
誕生を祝いに、領地から父の辺境伯が訪ねてくるのを心待ちにしているアリシア。
でも、夫と赤髪メイドのメリッサが口づけを交わしているのを見てしまう。
「なぜ、メリッサもお腹に赤ちゃんがいるの!?」
アリシアは夫の愛を疑う。
小説家になろう様にも投稿しています。
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる