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6.紅い館

17.魔物が溢れる森

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 何の使用用途なのか分からない建物を目指して歩き始める。その前に名前の聞いていなかった女が手を挙げる。どうやらここでお別れのようだ。ついていってもいいが、ついていきたくないとは本人談。どっちなんだろうか。



 現在はいつもの7人で森を歩いていた。



「ム?誰か襲われているぞ」



 レイドの言葉にアレン達もそちらを窺うと、一人の少女がいた。森の中で、出っ張った岩の上に腰掛けている緑の髪の少女がアックスピークにつつかれている。とりあえず助けるために追い払わなくては。



 アレンは弓を射り、アックスビークに向けて放つ。少女に夢中になっていたアックスビークは矢に気付かず、目の前を通過していく。驚いた鷲は少女から離れるように羽ばたかせる。しかし、飛び立つ前にアシドが一気に距離を詰め、槍を振るい首を折る。そんなアシドの姿に目を張る少女は口元を押さえる。



 助けられて良かった。しかし、なぜ少女が1人でこんなところにいるのだろう。そこで少女の足元に目が行った。包帯が巻かれている。少女は右の足首に血の滲んだ包帯を撫で、チラチラとこちらを見てくる、痛そうに顔を顰めながら。何を望んでいるのだろうか。まぁ、何となく察しがつく。治してほしいのだろう。どこを治せばいいのか見るために瞳に魔力を集める。



 おや?



 ………なんというか信用を無くすな。この世界は。



「け、怪我しているみたいです。な、なお、治してあげないと」



「待ってください」



 アレンが近付こうとするエンドローゼを止める。振り返るエンドローゼにきつく睨まれてしまった。エンドローゼでもこんな表情ができるのか。アレンは少し怯んでしまったが、真実を告げる。



「魔物です」



 前回のアルラウネは快活な子供に扮し、こちらを騙してきたが、今回のアルラウネは痛そうで悲しげで側にいてあげたくなるような庇護欲を掻き立ててくるような個体だ。来てくれないの?という目をこちらに向けてくる。エンドローゼの目はさらにきつくなった。その目を向けられていたのはアルラウネの方だった。



 コストイラがスタスタと近付いていく。止めようとして気付く。こんな光景を以前に見たことがある気がする。近くに来たコストイラを淡い期待を込めた眼でじっと見ている。それに気付くとコストイラはにこっと笑顔を向けた。アルラウネも可愛らしい笑顔になる。何だろうこの空間。



 そして、コストイラは笑顔のまま抜刀する。早すぎてアルラウネには見えなかったのだろう。視界が傾くの不思議そうな顔をして考える、前に眼から光が消えた。



 2匹の死体を燃やそうとしたが、森火事になるのを恐れ、埋めることにした。それがいけなかったのだろうか。血の匂いにつられた魔物が現れる。獅子の頭と前脚、鷲の体と後ろ脚と翼、尾が蛇の頭しかも双頭。体長は5メートルはありそうだ。こんな魔物は誰もが分かる。アークキマイラだ。その見た目のインパクトから、よくお話に出てくる。ドラゴンや悪魔に次いでお話のボスとして描かれることの多い魔物ではないだろうか。



『グォアッ!』



 アークキマイラは鋭い牙の生え揃う口を大きく開け、一番近くにいたアレンに噛みつこうとする。アレンは転がるように逃げると、近くにあった木の幹を噛み千切った。2本の尾もゆらゆらと揺れながら木の幹に噛みつく。その箇所が変色し、腐り落ちた。毒だ、しかもかなり強力で即効性のあるものだ。



 エンドローゼは毒は治せるが、劇毒や猛毒までいくとまだ治せる程回復魔法が育っていないらしい。敵の毒は治せないと思った方が良いだろう。慎重にいった方が良い。蛇の頭の軌道を読み、真横へズレると、コストイラは腰を落として両断する。



『ゴァアア!!』



 慎重にいこうと思ったそばから攻撃を仕掛けに行った。考え方が根本から違うようだ。



 アークキマイラは痛みに獅子の頭を歪ませる。コストイラは噛みつき攻撃を悠々と躱すと、爪先で地面を蹴り、刀を振り下ろすが、めり込むだけで斬れない。アークキマイラは顔を跳ね上げ、コストイラを飛ばす。空中にいる赤い男を噛みつこうと口を開ける。コストイラが器用に身を捩る。すると、アストロの魔術が通り過ぎた。口の中に炎が入り込む。



 爆発。



 顎の端は裂け、骨は外れ、牙は数本抜けていたり折れていたり。今も煙を吐き出すアークキマイラの口が閉じることは当分の間ないだろう。



 レイドの大剣がまるで断頭台の刃のように下ろされ、獅子の頭が飛ぶ。もう一方の蛇の頭ももうなかった。シキが刈り取り、回収したようで何かぐちゃぐちゃといじくっていた。
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