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6.紅い館
16.寒い時ほど胸を張る
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アレンはブルリと身を震わせた。別に何かを怖がったわけではない。ただ、寒かったのだ。白い息が出るほどではないが。
アレンよりも肌の露出が多いアシドを見る。ポケットに手を突っ込んだ状態ではあるが身震いは一つもない。
え?寒いのは僕だけ?
「へっぷち」
エンドローゼが可愛らしくくしゃみをした。やった。寒いのは僕だけじゃなかった。
「大丈夫ですか?」
「は、はい。だ、だ、大丈夫なんですが、あの、その、え、さ、さ、寒くないですか?」
「確かに寒くなったな」
アシドが言った、寒いと。じゃあ、なんで短いズボンを履いているんですか?しばらく歩くと外への出口を見つけた。しかし、その前に竜がいた。ワイバーンのような翼竜ではなく、両手がしっかりと存在する、竜。もたもたと起き上がり、ゆるりゆるとこちらに走ってくる。どう見ても動きが鈍い。
レッドドラゴン。赤い鱗を持った3,4メートルほどの体長の竜。火属性。二足歩行もできるが四足歩行の方が多く見られる。滅茶苦茶美味しい。焼いても煮ても蒸しても燻しても美味しい。
ガレットの書にはその後も味についての感想が長々と記されていた。絶賛しすぎじゃないですか?苦笑が漏れる。竜はトカゲや蛇の仲間だ。つまりは変温動物だ。寒いここの地では血が鈍り、活動はほぼしない。暖かくなるのを待つだろう。それでもレッドドラゴンが動き出した。門番として護るべきものがあった?否、ただその姿が、目の前に現れたアレン達が眩しく見えたからだ。眩しくては寝ていられないのだ。
体が思うように動かない。しかし、真の幸福を求めるには偽物の光は邪魔にしかならない。レッドドラゴンは牙を剥く。
「動きが鈍ってんなら簡単だ。いくぜ」
そう宣言したコストイラは言葉通りに解体してみせた。
コンコン。
扉をノックする音。ちなみに、扉をノックしたのは開けた後だ。中にいた存在に見られた後に取り繕うようにノックしている。
中にいた存在――エヴァンズはその軽薄そうな笑みを浮かべる男をただ睨む。ノックに対して咎めるようなとか、用件を聞くようにとかそんな思いが一つもない、本当にただの睨みに男は口の端をヒクつかせる。
「何か言ってくれよ、エヴァンズさん」
「出てけ』
エヴァンズは荘厳な声で命令する。
「すげねぇなぁ。用件済んだら帰るよ」
軽薄そうな男は右手をひらひらとさせながら、扉に凭れさせていた体を起こす。
「実験が失敗してその結果生まれたっていう薬なんですけど、まだあります?ほら、この前パンタレストさんに愚痴ってたやつ」
「…………』
エヴァンズは何も言わず蔦を伸ばす。蔦は体の一部のように繊細に動きビンを5本絡めとると、要求してきた男――ロッドの前に差し出す。
「帰れ』
「何でそんな早く………」
「邪魔だからだ』
「あ、はい」
帰らせるんですかと続けようとしたが、先読みされたうえつっけんどんに突き放される。ロッドはビンを受け取ると、1本1本丁寧にフカフカで柔らかい素材で作られたカバンに入れていく。衝撃を与えて爆発されると困るからだ。
「じゃあ、宣言通り帰りますよ」
「さぁ、早くその体をテキパキと動かし出て行くがいい』
ロッドは素直におとなしく出て行く。
どうしてエヴァンズといいカンジャといい研究に情熱を注いでいる仲間は協調性がないのか。ロッドは自分のことを棚に上げハァと溜め息を吐いた。
「ん?」
ロッドの目の前からヴェスタが歩いてきた。ロッドはヴェスタが苦手だ。というか、この組織にはヴェスタと仲のいいものは誰一人としていない。ヴェスタはそうは感じていないらしいが。ロッドはヴェスタから意図的に距離を置いている。面倒臭いからだ。
「ロッドさんじゃないすか。何してるんです?つかそのでかめのバッグ、何?」
「あ、オレはお前に用ないから」
「へ?ちょ、え?」
止まることなく通り過ぎるロッドにヴェスタは頭を掻く。呼び止めるほどの用もないので後で会いに行くことにしようと考え、食堂に向かう。今日はこの前に提案した新しいメニューが完成したのだ。早速食べに行かなくては。
ロッドは予約しているので食堂に向かわずして新メニューを食べられるのだが、そんなことは関係なく、自身の部屋に引き篭もる。
アレン達は地下道を抜け、鬱蒼とした森に辿り着いた。アレン達は白い息を吐きながら森を眺める。先が見えない。アレン達はリックから貰った地図を広げてルートを考える。シキが地図上に指を置く。
「ここ、建物」
たおやかな指先にある建物はここから北へまっすぐに歩いたところにあるらしい。
「取り敢えず一旦の目標はその建物としておきましょう」
アレンは地図を畳むとカバンにしまう。森を眺めながらもう一度白い息を吐く。
「あら?」
一人の妙齢の女性が不思議そうに声を出す。
「どうしましたか?」
「これって誰用の料理だったかしら?」
「あぁ、それはロッド様ですよ。あの人が予約していったんです」
「あぁ、そうだったわね」
妙齢の女性は若い女性に言われて思い出す。そう言えばこのハンバーグという料理に興味を示していたな。
「これ、ロッド様のところに運んでもらえる?」
「良いですけど、今どちらに?」
「自身の塔じゃないかしら」
「げ、結構時間かかるから冷めちゃいますよ」
「カバー付けて」
若い女性に皿に被せるカバーを渡す。若い女性は小さく溜め息を吐いて皿を運ぶ準備をする。
「おばちゃん!新しいメニューのハンバーグある?」
「は~い。ちょっと待ってね~。今焼いてるから」
「やっぱいい匂いだね」
今メニューを注文したのはロッドと同じく新メニューに興味を示していたヴェスタだ。妙齢の女性はそっちに付きっ切りにになるだろう。ヴェスタはこれまでも料理を頼んだ時は常に料理している人に話しかけ続けていた。メイドたちにも不評な人物だ。しかし、無下にできない。幹部だから。
ヴェスタの相手をしなくていいことを安堵しながら、ロッドに対して料理を運ぶことにした。
アレンよりも肌の露出が多いアシドを見る。ポケットに手を突っ込んだ状態ではあるが身震いは一つもない。
え?寒いのは僕だけ?
「へっぷち」
エンドローゼが可愛らしくくしゃみをした。やった。寒いのは僕だけじゃなかった。
「大丈夫ですか?」
「は、はい。だ、だ、大丈夫なんですが、あの、その、え、さ、さ、寒くないですか?」
「確かに寒くなったな」
アシドが言った、寒いと。じゃあ、なんで短いズボンを履いているんですか?しばらく歩くと外への出口を見つけた。しかし、その前に竜がいた。ワイバーンのような翼竜ではなく、両手がしっかりと存在する、竜。もたもたと起き上がり、ゆるりゆるとこちらに走ってくる。どう見ても動きが鈍い。
レッドドラゴン。赤い鱗を持った3,4メートルほどの体長の竜。火属性。二足歩行もできるが四足歩行の方が多く見られる。滅茶苦茶美味しい。焼いても煮ても蒸しても燻しても美味しい。
ガレットの書にはその後も味についての感想が長々と記されていた。絶賛しすぎじゃないですか?苦笑が漏れる。竜はトカゲや蛇の仲間だ。つまりは変温動物だ。寒いここの地では血が鈍り、活動はほぼしない。暖かくなるのを待つだろう。それでもレッドドラゴンが動き出した。門番として護るべきものがあった?否、ただその姿が、目の前に現れたアレン達が眩しく見えたからだ。眩しくては寝ていられないのだ。
体が思うように動かない。しかし、真の幸福を求めるには偽物の光は邪魔にしかならない。レッドドラゴンは牙を剥く。
「動きが鈍ってんなら簡単だ。いくぜ」
そう宣言したコストイラは言葉通りに解体してみせた。
コンコン。
扉をノックする音。ちなみに、扉をノックしたのは開けた後だ。中にいた存在に見られた後に取り繕うようにノックしている。
中にいた存在――エヴァンズはその軽薄そうな笑みを浮かべる男をただ睨む。ノックに対して咎めるようなとか、用件を聞くようにとかそんな思いが一つもない、本当にただの睨みに男は口の端をヒクつかせる。
「何か言ってくれよ、エヴァンズさん」
「出てけ』
エヴァンズは荘厳な声で命令する。
「すげねぇなぁ。用件済んだら帰るよ」
軽薄そうな男は右手をひらひらとさせながら、扉に凭れさせていた体を起こす。
「実験が失敗してその結果生まれたっていう薬なんですけど、まだあります?ほら、この前パンタレストさんに愚痴ってたやつ」
「…………』
エヴァンズは何も言わず蔦を伸ばす。蔦は体の一部のように繊細に動きビンを5本絡めとると、要求してきた男――ロッドの前に差し出す。
「帰れ』
「何でそんな早く………」
「邪魔だからだ』
「あ、はい」
帰らせるんですかと続けようとしたが、先読みされたうえつっけんどんに突き放される。ロッドはビンを受け取ると、1本1本丁寧にフカフカで柔らかい素材で作られたカバンに入れていく。衝撃を与えて爆発されると困るからだ。
「じゃあ、宣言通り帰りますよ」
「さぁ、早くその体をテキパキと動かし出て行くがいい』
ロッドは素直におとなしく出て行く。
どうしてエヴァンズといいカンジャといい研究に情熱を注いでいる仲間は協調性がないのか。ロッドは自分のことを棚に上げハァと溜め息を吐いた。
「ん?」
ロッドの目の前からヴェスタが歩いてきた。ロッドはヴェスタが苦手だ。というか、この組織にはヴェスタと仲のいいものは誰一人としていない。ヴェスタはそうは感じていないらしいが。ロッドはヴェスタから意図的に距離を置いている。面倒臭いからだ。
「ロッドさんじゃないすか。何してるんです?つかそのでかめのバッグ、何?」
「あ、オレはお前に用ないから」
「へ?ちょ、え?」
止まることなく通り過ぎるロッドにヴェスタは頭を掻く。呼び止めるほどの用もないので後で会いに行くことにしようと考え、食堂に向かう。今日はこの前に提案した新しいメニューが完成したのだ。早速食べに行かなくては。
ロッドは予約しているので食堂に向かわずして新メニューを食べられるのだが、そんなことは関係なく、自身の部屋に引き篭もる。
アレン達は地下道を抜け、鬱蒼とした森に辿り着いた。アレン達は白い息を吐きながら森を眺める。先が見えない。アレン達はリックから貰った地図を広げてルートを考える。シキが地図上に指を置く。
「ここ、建物」
たおやかな指先にある建物はここから北へまっすぐに歩いたところにあるらしい。
「取り敢えず一旦の目標はその建物としておきましょう」
アレンは地図を畳むとカバンにしまう。森を眺めながらもう一度白い息を吐く。
「あら?」
一人の妙齢の女性が不思議そうに声を出す。
「どうしましたか?」
「これって誰用の料理だったかしら?」
「あぁ、それはロッド様ですよ。あの人が予約していったんです」
「あぁ、そうだったわね」
妙齢の女性は若い女性に言われて思い出す。そう言えばこのハンバーグという料理に興味を示していたな。
「これ、ロッド様のところに運んでもらえる?」
「良いですけど、今どちらに?」
「自身の塔じゃないかしら」
「げ、結構時間かかるから冷めちゃいますよ」
「カバー付けて」
若い女性に皿に被せるカバーを渡す。若い女性は小さく溜め息を吐いて皿を運ぶ準備をする。
「おばちゃん!新しいメニューのハンバーグある?」
「は~い。ちょっと待ってね~。今焼いてるから」
「やっぱいい匂いだね」
今メニューを注文したのはロッドと同じく新メニューに興味を示していたヴェスタだ。妙齢の女性はそっちに付きっ切りにになるだろう。ヴェスタはこれまでも料理を頼んだ時は常に料理している人に話しかけ続けていた。メイドたちにも不評な人物だ。しかし、無下にできない。幹部だから。
ヴェスタの相手をしなくていいことを安堵しながら、ロッドに対して料理を運ぶことにした。
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