メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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6.紅い館

5.南西の森

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 塔にのぼったことで気づいたことがある。分岐路で右を選んだが、左を選べば殴られることはなかった。責められるかと思ったが、意外にもそんなことはなかった。どうやらアストロの一発で皆は納得したようだ。頬の傷はエンドローゼのおかげでもう完全に消えている。



 分岐路まで戻ってくると、エキドナの血がまだ残っていた。しかし、死体は燃え切っており、骨さえ残っていなかった。



 コストイラは手で傘を作りながら左側の道を眺める。



「あの行商人たちはどうなったんだろうな。鮮度が命とか言ってたけど」



「大丈夫じゃね。知らんけど」



 コストイラはルインという御者の男を思い出し、アシドは適当に答えた。すでに馬車の車輪跡は消えており、馬車がどこまで行ったのか知るものは誰もいなかった。















「あ、がっ!!?」



 野太い声が悲鳴として発せられる。その声を聴いていた男は腰を抜かし、ただ震えていた。



 仲間が壊れていく光景を前に、双眸に涙を溜めて見ていることしかできない。青紫色のドレスを真っ赤に染めた金髪の少女。2メートル50センチほどの高さの天井に向け狂笑を上げている。



 映る光景にルインは尻を床に付けたまま、後ろに下がろうとする。しかし、うまくいかない。ルインはすでに壁に背をつけていて、これ以上下がることを許されなかった。ルインは気付いていない。



 すでに光をなくした仲間の眼と視線がぶつかり、小さな悲鳴と小便を漏らしてしまう。



 何とか抜けた腰を持ち上げ、狂気に染まる少女の隙をつき、部屋を脱出する。階段を四つん這いの姿勢で上るが、上には紅赤色のドレスを着た少女がいた。金髪を揺らして重心を変え、階下を指さす。



 無言のまま戻れとサインしているのだ。大粒の涙が出てくる。汗を垂れ流し、唾を大きく飲み込んだ。



「どうしたの?そんなに怯えて?何が怖いの?」



 弱者を見下すような笑みを浮かべる少女は、ルインに対し何かを諭すように話しかける。



 歯の根が合わない。恐怖が体を拘束している。少女の純粋な眼が余計な恐さを増幅させる。



「お姉様。お人形が一つ逃げてしまったの」



 青紫の少女が部屋から膨れっ面で出てくる。



「あら、それは残念ね、アル。私の足元にいるのはお人形じゃないわよ。人間をお人形なんて言っちゃだめよ」



「まぁ、お姉様!止めて下さっていたのね!ありがとう!」



「お礼は後でほっぺにチューでももらおうかしら。あと、壊しすぎるのは駄目よ。あなたすぐに壊しちゃうんだから」



「うん。気を付けるわ!」



 紅赤色の少女はルインを青紫の少女に引き渡す。青紫の少女はルインを嬉々として自身の部屋に引き摺り込んだ。妹があまり話を聞いてくれていなさそうで姉は嘆息する。



「アルったら、すぐに人間を壊してしまって大変だわ」



 紅赤色の少女は不機嫌そうに形の良い眉を歪め、そして嬉しそうに頬に右手を添えながら笑みを浮かべた。















 森を進むアレン達は草の陰に隠れていた。目の前ではスカルプリーストとゴブリンウィザードが揉めていた。ギャギャギャギャ言っていて何を言っているのかは不明だが、その仕草から言い争っていることは明確だった。



 ゴブリンウィザードは手にしていた木の枝を振り魔術を放とうと先端をくるくる回し魔力を溜める。スカルプリーストは何かもにょもにょと口を動かし、掌底を真っ直ぐ向ける。たちまちスカルプリーストの右腕からは空気の揺らぎが生まれ、陽炎がすさまじい勢いで迸る。まるで鉄砲水のように、そして音もなく陽炎は空間を伝播し、発射状態に移るゴブリンウィザードの杖の先端を包み込む。



『ゴゥアッ!』



 スカルプリーストの合図によって杖に集まっていた魔力が一瞬で霧散する。



『ギィヤッ!?』



 ゴブリンウィザードは自分が魔術を放てないことに驚愕する。杖の先端を触り、原因を探る。スカルプリーストは薄紫に染まった骨の口をガバリと開き、突き出していたままの右腕から魔術を放つ。



 散弾されるいくつかの魔術がゴブリンウィザードに当たり、その部分が爛れ溶けていく。溶ける顔を押さえようとするが、手がどろりと落ちる。喉の形も崩れたゴブリンウィザードは叫ぶことも許されず地に伏せる。スカルプリーストは満足したように袈裟を翻し、歩き出す。アレン達はそんなスカルプリーストの後をつけることにした。
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