メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

文字の大きさ
上 下
70 / 391
5.無縁塚

3.霊が宿る花畑

しおりを挟む
「どうすんの?すぐに五重塔に行くの?」



 装備を整え、宿屋に戻ってきたところでアストロが確認してきた。アレンは荷物を置きながら首を振る。



「いえ、先に新しく買った装備を慣らしておきたいです。なので店の方に教えていただいた洞窟に行きます」



 洞窟という単語を聞き、アストロは嫌そうな顔をする。アシドとコストイラがアレンの肩を叩く。任せろと言わんばかりの顔をしている。アレンにはもうどうすることも出来ないので任せよう。一晩でどうにかしてほしい。



 翌日、満足そうな顔をしたコストイラとアシドが出てきた。これは期待できるか?アストロの機嫌はより一層悪化していた。あれ?何か違くない?アレンがアシドとコストイラを見ると満足そうな顔は変わらない。しかし、その上で肩を竦めた。



「……え、ええ。それでは、人魚の洞窟と呼ばれるところに行きましょう」















 人魚の洞窟はナカウの出店通りから真西へ進み続ければ辿り着ける。その道中、アレン達は花畑に来ていた。百花繚乱、豪奢な花畑が目の前に広がっていた。アシドは手で傘を作り遠くまで見渡す。



「陽光に照らされている花畑。映えるな」



「まだ昼時ですがあまりもたもたしていると夜も更けてしまいます。急ぎましょう」



「待て。何か浮いているぞ」



 アシドは進行方向を見ながら報告する。アレンも目を凝らしてみる。



「あれは、ホロゴーストですね」



 前回アストロが雑に燃やしてしまった魔物だ。あまり時間がかかっていないのであまり情報を持ち合わせていない。



「そういえば前にガレットからもらった書には何か載っていないのか?」



 コストイラに言われ、アレンはガレットの書を取り出し、中をぱらぱらとめくる。



 ホロゴースト。三つ子の魂のような魔物。闇属性。知性はおそらく2,3歳時ほど。悪戯好きな臆病者。美味しくない。



「お、美味しくない?」



「食べたの?」



 アシドとコストイラが声に出して驚愕する。読んでいたアレンも引き気味である。



「ま、まぁ。倒しましょう」



 アレンは弓を引き絞る。影から射られた矢は見事にホロゴーストの中心を通り過ぎる。口の端が引くつく。アストロの溜め息が聞こえた。申し訳ない。



 アレンのミスを帳消しにするように魔術が発動する。三つ子のうち一匹を仕留める。残り二つの魂が狼狽える。



 花弁が舞う。視界が遮られ、ホロゴーストを混乱へと導く。そして、花弁に紛れてシキが一閃。人魂を断ち切る。



 花弁が舞い上がる。



 シキによるものではない。シキはその風に巻き込まれ、天高く舞い上げられる。



 半透明な緑色の肌。地から浮いた体。周りを飛ぶ蝶や人魂。



 霊がまだ、存在していた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる

兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

処理中です...