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5.無縁塚
1.ナカウの出店通り
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丘を越えると、街が見えた。長らく目指していた五重塔がある街、ナカウだ。見えてからも3時間ほどたってから街に入ることができた。街の名前はナカウだが、地域の名前は彼岸というらしい。彼岸と言えば亡くなった人が向かう場所だった気がする。なぜそんな名前を付けたのだろう。大規模な墓地でもありそうだ。
「では、まず採ってきた風魔鉄や魔紅石を売って、滞在費を賄いましょう」
アレンの提案により、換金をすることになった。
整備されていないボロボロの看板の店に入る。
「すみません。この石を売りたいのですが」
「ん?こいつは風魔鉄か。保存状態が良いな。外傷が少ない。数は2個か。そうだな。6024リルってところか。んで」
値をつけた男は妖艶に光を返す石を見つめる。
「ふん。市場で出回るモノよりも大きいな。だが、外傷がある。値付けが難しいが、10万飛んで113リルあたりかな。売ってくか?」
「お願いします」
ジャラリと多量の金貨が詰まった麻袋が差し出される。
「一気に金持ちになったわね」
「ですが、これは滞在費と装備品の整備費などに消えていきますがね。それでは宿を取りに行きましょうか」
アレンの提案に全員が賛同した。
「ふぅ」
息を吐きながらローブを脱ぐ。長旅のせいで汗がすごい。体も痛い。ゆっくりと休みたい。もう一度息を吐いた。
「むむむ」
エンドローゼが睨んでくる。
「何?」
アストロは呆れたように聞く。
「い、色っぽいです」
「ハァ?」
「そ、そ、その息遣いです。さ、さ、誘っているんですか?」
「えぇ~~」
疲れたアストロはエンドローゼの対処が面倒になる。アストロはシキの方を見る。シキは完全に我関せずである。援護は期待できないが、敵でないだけマシか。どちらでもないので無視しておく。
「お、お、お付き合いされているんですか?」
「え?」
「お、お、お付き合いをされているんですかと聞いているんです」
「ハァ?」
「み、見たんです。こ、こ、この前の夜。あ、あ、アシドさんとふ、ふて、二人っきりで会っているところを見ました!」
エンドローゼに指をさされ、もう呆れて声が出ない。確かにアシドと二人っきりで会っていたことがある。あの時はコストイラの無茶を止めるにはどうしようか、という議題だったはずだ。エンドローゼは会話の内容までは聞いていなかったのだろう。下手に誤魔化すのも面倒臭い。
「確かに会ったわ」
「や、やっぱり。あ、あ、アシドさんのことが好き!」
エンドローゼの顔が驚愕に染まる。
「でもあれはコストイラのことよ」
「じゃ、じゃ、じゃあ、こ、こ、コストイラさんの事が好き!?」
「そうじゃないんだけど。あいつが無茶しないようにするにはどうすればいいか話していたのよ」
「つ、つ、つ、つまり、体の心配をするぐらい相手のことを想っている?」
エンドローゼがうんうんと頷いている。アストロは訂正するのが面倒になってきた。体の心配をしているのは間違いじゃない。まぁ、訂正しなくていいか。
「ハァ」
アストロは溜め息を吐いて会話を終わらせた。
「おぉ、君達は」
声を掛けられたアレン達が振り返るといつかに出会ったヲルクィトゥがいた。
「再び会えたな」
「そうですね」
「君達がここまで来れたのは相手の実力あってのことだろう。君達の姿からは成長を感じられる。ここからも見ゆる五重の塔へはもう行ったか?あそこは初心者が中堅になるのに必要なレベルと技能がなくては突破できないようだ。実力を試したくば行くと良い。行き、辿り着くまでも試練らしいぞ」
「あんたはもう行ったのか?」
「あぁ、私は行ってきたとも。君達なら突破は容易いだろうとまでは言わないが、できるであろうな」
ヲルクィトゥはふむと顎を触り少し考えてから続ける。
「行くのなら、旅の準備をしてからの方が良い。私はそれで少しで失敗した」
ヲルクィトゥは笑い、アレン達は失笑した。
「私はもう行こう。君達はどうする?」
「宿に行って準備を整えようかと」
「では、まず採ってきた風魔鉄や魔紅石を売って、滞在費を賄いましょう」
アレンの提案により、換金をすることになった。
整備されていないボロボロの看板の店に入る。
「すみません。この石を売りたいのですが」
「ん?こいつは風魔鉄か。保存状態が良いな。外傷が少ない。数は2個か。そうだな。6024リルってところか。んで」
値をつけた男は妖艶に光を返す石を見つめる。
「ふん。市場で出回るモノよりも大きいな。だが、外傷がある。値付けが難しいが、10万飛んで113リルあたりかな。売ってくか?」
「お願いします」
ジャラリと多量の金貨が詰まった麻袋が差し出される。
「一気に金持ちになったわね」
「ですが、これは滞在費と装備品の整備費などに消えていきますがね。それでは宿を取りに行きましょうか」
アレンの提案に全員が賛同した。
「ふぅ」
息を吐きながらローブを脱ぐ。長旅のせいで汗がすごい。体も痛い。ゆっくりと休みたい。もう一度息を吐いた。
「むむむ」
エンドローゼが睨んでくる。
「何?」
アストロは呆れたように聞く。
「い、色っぽいです」
「ハァ?」
「そ、そ、その息遣いです。さ、さ、誘っているんですか?」
「えぇ~~」
疲れたアストロはエンドローゼの対処が面倒になる。アストロはシキの方を見る。シキは完全に我関せずである。援護は期待できないが、敵でないだけマシか。どちらでもないので無視しておく。
「お、お、お付き合いされているんですか?」
「え?」
「お、お、お付き合いをされているんですかと聞いているんです」
「ハァ?」
「み、見たんです。こ、こ、この前の夜。あ、あ、アシドさんとふ、ふて、二人っきりで会っているところを見ました!」
エンドローゼに指をさされ、もう呆れて声が出ない。確かにアシドと二人っきりで会っていたことがある。あの時はコストイラの無茶を止めるにはどうしようか、という議題だったはずだ。エンドローゼは会話の内容までは聞いていなかったのだろう。下手に誤魔化すのも面倒臭い。
「確かに会ったわ」
「や、やっぱり。あ、あ、アシドさんのことが好き!」
エンドローゼの顔が驚愕に染まる。
「でもあれはコストイラのことよ」
「じゃ、じゃ、じゃあ、こ、こ、コストイラさんの事が好き!?」
「そうじゃないんだけど。あいつが無茶しないようにするにはどうすればいいか話していたのよ」
「つ、つ、つ、つまり、体の心配をするぐらい相手のことを想っている?」
エンドローゼがうんうんと頷いている。アストロは訂正するのが面倒になってきた。体の心配をしているのは間違いじゃない。まぁ、訂正しなくていいか。
「ハァ」
アストロは溜め息を吐いて会話を終わらせた。
「おぉ、君達は」
声を掛けられたアレン達が振り返るといつかに出会ったヲルクィトゥがいた。
「再び会えたな」
「そうですね」
「君達がここまで来れたのは相手の実力あってのことだろう。君達の姿からは成長を感じられる。ここからも見ゆる五重の塔へはもう行ったか?あそこは初心者が中堅になるのに必要なレベルと技能がなくては突破できないようだ。実力を試したくば行くと良い。行き、辿り着くまでも試練らしいぞ」
「あんたはもう行ったのか?」
「あぁ、私は行ってきたとも。君達なら突破は容易いだろうとまでは言わないが、できるであろうな」
ヲルクィトゥはふむと顎を触り少し考えてから続ける。
「行くのなら、旅の準備をしてからの方が良い。私はそれで少しで失敗した」
ヲルクィトゥは笑い、アレン達は失笑した。
「私はもう行こう。君達はどうする?」
「宿に行って準備を整えようかと」
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