メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

文字の大きさ
上 下
66 / 400
4.ナカウへの道

10.海のない地の海賊

しおりを挟む
「あん?砂の部隊がやられただと?」



 男の声に合わせ、パチッと松明の火が跳ねた。男は女を1人抱き寄せると先を促す。



「その報告は誰がした」



「砂の部隊の唯一の生き残りです」



「そいつは今どうしてる?」



「今は酒でも飲んでいるのではないですかね」



 ボスと思われる男は胸に収まっている女の顎下を撫でる。女は気持ちよさそうに喉を鳴らす。そして、男は女の報告に、ふむ、と溢しながら酒を呷る。



「チャンスをやれ。最後のチャンスだ。報告にあった我々を倒したものを殺せ。その首をここに持ってこい。いい女なら生け捕りにしろ」



「はい」



 男の発言に深々と頭を下げ、伝えに出て行く。男は酒を空にすると、床に女を連れ込んだ。



「私がいるのにまだ女を囲むの?」



「良いじゃねぇかよ。男はハーレムに憧れるもんさ」



「変わらず愛してくれるならいいけど」



「やっぱお前はいい女だな」



「ふん」



 女が鼻を鳴らすと、男は女に覆い被さった。男が女の体を求めると、女は抵抗することなく受け入れた。



 男は海賊だ。否、海賊だったと言っておいた方が正しいだろう。普段は漁師をしているが、副業として海賊をしていた。敵対組織の船を襲い、物資が届かないようにしていた。さらには海の平和も守っていた。



 しかし、ある時港に異変が起きた。



 魔物が出現し始めたのだ。そのせいで、ただでさえ少なかった船が、通るのを辞めてしまったのだ。さらに魔物は漁場を荒らして回った。結果として男は職を失った。海賊行為どころか漁にすらいけなくなった。



 男は世界を恨んだ。















「止まりな」



 森を抜け、街道を見つけたアレン達の目の前に現れたのは砂漠で取り逃がした男だ。昨日と比べてすごくボロボロになっている。そこまでやった記憶はない。



「囲まれたか」



 アシドの言う通り、辺りには2,30人に囲まれていた。



「悪いな。荷物を置いていくだけじゃ済ませねぇぜ。男どもはじわじわと嬲り殺してやる。女はそうだな。楽しませてもらおうか」



 男は剣を向け脅してくる。おそらく上の存在がおり、何か命令されているのだろう。私怨が含まれているのでほとんどが本音だろうが。



「ひぃやっ!?」



 どう対処したものかと考えていると、アストロが数人を燃やした。好戦的過ぎる。その炎を合図に抗争が始まる。



 基本的には魔物は本能に従い直線的に来ることが多い。相手が人となると話は別だ。人殺しに躊躇するかどうかが鍵となる。いつも魔物を平然と相手しているが、人が相手だとどうなるのかと考えていたが、結果は直感に反した。



 何故か普通に人を殺していた。



 仲間が人殺しになっているという光景にアレンの心は蝕まれていく。あの人たちはなぜ躊躇いなく殺せているのだろうか。



 何かが壊れる音がした。



 自分の中の、ではなく音は頭上から聞こえた。戦場は影に覆われた。上を見ると、大きな岩が落ちてきていた。



「おぉ!?岩だとッ!!?」



「何?!まさかボスはッ!?」



 コストイラが喉が裂けんばかりに叫ぶ。全員が横に跳び難を逃れる。エンドローゼはレイドに抱えられていた。盗賊の男は何かを察したように叫ぶ。



 海賊たちの罠は味方を巻き込みながら成功する。アレン達は散り散りにされた。土煙が晴れると思った時、さらに濃く煙が満ちる。煙玉か。



 ヌッと目の前に人が現れる。



「ウワッ!」



 咄嗟に出た弓が、ナイフの一撃を奇跡的に防ぐ。海賊たちは今までもこのような手を使って倒していったのだろう。アレンは顔を顰める。



 味方も敵も位置が分からない。指示も出せない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

元英雄 これからは命大事にでいきます

銀塊 メウ
ファンタジー
異世界グリーンプラネットでの 魔王との激しい死闘を 終え元の世界に帰還した英雄 八雲  多くの死闘で疲弊したことで、 これからは『命大事に』を心に決め、 落ち着いた生活をしようと思う。  こちらの世界にも妖魔と言う 化物が現れなんだかんだで 戦う羽目に………寿命を削り闘う八雲、 とうとう寿命が一桁にどうするのよ〜  八雲は寿命を伸ばすために再び 異世界へ戻る。そして、そこでは 新たな闘いが始まっていた。 八雲は運命の時の流れに翻弄され 苦悩しながらも魔王を超えた 存在と対峙する。 この話は心優しき青年が、神からのギフト 『ライフ』を使ってお助けする話です。

【短編】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
 もうすぐ、赤ちゃんが生まれる。  誕生を祝いに、領地から父の辺境伯が訪ねてくるのを心待ちにしているアリシア。 でも、夫と赤髪メイドのメリッサが口づけを交わしているのを見てしまう。 「なぜ、メリッサもお腹に赤ちゃんがいるの!?」  アリシアは夫の愛を疑う。 小説家になろう様にも投稿しています。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。

ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった 16歳の少年【カン】 しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ これで魔導まで極めているのだが 王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ 渋々それに付き合っていた… だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである ※タイトルは思い付かなかったので適当です ※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました 以降はあとがきに変更になります ※現在執筆に集中させて頂くべく 必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします ※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...