メグルユメ

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3.魔法の森

15.迷宮の紅い主

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 マイトゴーレムが2体は造れる量の粘土で造られたような紅い巨人がいる。いつ、どこで、誰が造ったのか、その何もかもが不明だ。気付いた時にはそこにいて、本能で知っているかのように来る者を襲った。



 ある剣士が言った。



「何だこいつ!」



 —―――知らない。



 ある魔術師が言った。



「どうしてこんなところに!」



 ――――こっちこそ教えてほしい。



 ある斥候が言った。



「こっちに来るな!!」



 ――――それは無理だ。本能には逆らえない。



 振るう腕は骨を折り、当たりどころが悪ければ体を破裂させた。時間がたつと自我が薄れていった。本能が強まっていった。



『—―――ォォオオオッ!!』



 気が付くと吠えていた。腕は赤く染まっており、足元には罅割れた地面が広がっている。罅の中心には潰れた冒険者達が埋まっている。



 あぁ、また今日も。いつまでこんな日が続くのだろうか。



 今日もレッドジャイアントは吠えた。















『オオオオオッッ!!』



「レイドッ!」



「ふんッ!」



 アシドに名前を言われ、自身の役割を察したレイドはレッドジャイアントの拳を楯で受け止める。動きの止まったところを槍で突き刺そうとするが、レッドジャイアントの繰り出したブレイズナックルは2回攻撃である。レイドに止められた右手とは別に、左拳が残っている。



 炎を纏う左拳は槍を叩き、相殺する。



『オオオオオッ!!』



 シキのナイフも拳で相殺し、アストロの炎魔術を半減で受け止める。アレンの矢などかすりもしない。絶対特訓させてやるとアストロは誓った。



『オオオオオッ』



 エンドローゼはその雄叫びに体が固まってしまう。



 そこそこある速度となかなかの攻撃力で5人の猛攻を相手取っていく。



 体力と時間だけが消耗していく。















 コストイラは走っていた。



 そして、道に迷っていた。



 迷宮はここにきて威力を発揮していた。コストイラは全然みんなと合流できていない。ときどき聞こえてくる雄叫びは反響しているため、雄叫びの主の方向が狂ってしまっている。



「くそっ!全方向から聞こえてくるような気がしてくるぞ!オレァそこまで耳が優れてるわけじゃねェんだよな」



 コストイラは走りながら文句を溢す。全速力で走っているが、その方向も間違っている。















『オオオオオッ!!』



 レッドジャイアントは固めた拳を地面に叩きつける。



 地面は罅割れ、6人はバランスを崩す。



『オオオッ』



 片膝をついたレイドに拳を放つ。レイドの横を炎の魔術が通り過ぎる。レッドジャイアントに炎は効きづらい。しかし、一瞬のスタンは取れる。よろめいたレッドジャイアントに力一杯の拳を叩きつける。



 立ち上がるレイドの右目は赤く染まっていた。



 自分よりはるかに格上が相手でも相手しなければならない。足がすくむ。しかし、レイドは楯である。対峙しなければならない。



 レイドは早鐘のように打つ心臓を無視し、真っ直ぐにレッドジャイアントを見つめる。



『オオオオオッ!!』



 レッドジャイアントは吠える。ただ吠える。



 レイドは楯を構える。



 レッドジャイアントが右手を振り上げると、胸から刃が生える。



 レッドジャイアントの体が崩れていく。何かが斬られた。大事な何かだ。崩れる砂の上に加工された石が鎮座していた。



「ようやく、見つけ、たぜ」



 コストイラが息を切らしながら、刀に付いた砂を払いながら呟く。



「不意打ちが成功してよかったな」



「そんな、切迫、してたのか?」



「膠着してたのよ」



 アレンは砂の上に落ちた石を拾い上げる。



「何だそれ?」



 コストイラの息が整ったところで、アレンに質問する。



「風魔鉄という鉱石です。特殊な霊力を放つ、魔道具製作や魔鉱人形作成にも使われるものです。これが欲しかったんですよ」



 アレンは嬉しそうにカバンにしまう。



「やっぱりあいつはこういうのが好きなのか?」



「ノーコメントで」
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