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3.魔法の森
2.魔物の盗賊団
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森の中を歩き始めてから3時間が経過していた。森の凸凹とした地形にようやく慣れてきたエンドローゼが皆に追いつきはじめた。森の中を歩く時は一番遅い人に合わせるのが鉄則だが、エンドローゼが早まったことで基礎速度が上がっていた。
「大丈夫か?荷物を持とうか?」
レイドはエンドローゼを気遣い、声を掛ける。しかし、優しい言葉を言われる機会の少ないエンドローゼはドギマギしてしまう。
「でゅぁ、だ、だ、大丈夫でっしゅ!!?」
噛み噛みである。アシドとアストロは口を手で覆い、でっしゅと笑う。
「あぅう~」
顔は真っ赤である。その赤さは湯気さえ見えるのではないかという気がした。
「何やってるんですかね?」
「さぁ?」
アレンとシキはその光景をジト目で見守る。
『オイ、お前らその荷物を置いていきな!』
『女もな!』
明らかに山賊のようなことを言いながら、山刀を向け、木の陰から賊が現れる。後ろには山羊の頭をした長身の悪魔が立っていた。バフォメットは手にしていた大鎌を振り、闇の魔術を発射する。アレンは即座に対応しようとするが、目の前で魔術が爆発する。破裂した魔術が生み出した煙から賊2人が飛び出してくる。
手慣れている。
彼らの常套手段なのだろう。たいていの人はこれでビビってしまい負けてしまうのだろう。しかし、血気盛んな者が出張り出す。
『『ハッ??』』
2人にはこんな経験がなかったのだろう。顔が驚愕に染まる。煙を抜けると炎を纏った男がいた。すれ違う際、足の腱を斬る。さしものコストイラも人を斬るのは躊躇したのだろうか。
しかし、バフォメットに対してはそんな躊躇いはない。
コストイラがバフォメットと対峙する。その隙にアレンはこっそりと賊に近付く。この賊は見た目では分からないが魔物である。アレンは解体用のナイフを抜く。
『クッ。我らシレスト盗賊団が負けるわけには。これは逃げるべきか」
……山賊かと思ったが、盗賊だったらしい。
残しておいてもどうなるか分からない。相手は魔物だ、何か害をなすかもしれない。
アレンは気付かれる前にバンデットの首裏へナイツを突き立てる。
『グ?』
盗賊の一人が倒れたところ、もう一人が気付く。仲間も気付いたようだ。
「アレン?」
アストロが静かに問いかける。アストロからはただの人殺しにしか見えないのだろう。エンドローゼはレイドの後ろに隠れ、震えている。アシドは我関せずを貫いている。
「えっと、こいつらは、その、信じてくれないかもしれないですけど」
「早く言いなさい」
「こいつらは」
「魔物」
アレンが弁明しようとするが、言い訳が多くアストロに怒られる。意を決したところ、シキに先に言われる。シキの手には残った盗賊の頭があった。顔一つ変わっていない。
「これが魔物なの?」
「見た目じゃ分かんねェな」
アストロは盗賊の首を凝視するが、見分けはつかない。
「は?おい」
コストイラの苛立った声が聞こえ、そちらを見る。
「おい、え?誰もオレの活躍、誰も見てねェの?」
コストイラの後ろでは、バフォメットが燃え上がっていた。コストイラには目立った外傷がない。余裕があったのだろう。しかし、誰も見ていなかった。
「…………すまん」
「大丈夫か?荷物を持とうか?」
レイドはエンドローゼを気遣い、声を掛ける。しかし、優しい言葉を言われる機会の少ないエンドローゼはドギマギしてしまう。
「でゅぁ、だ、だ、大丈夫でっしゅ!!?」
噛み噛みである。アシドとアストロは口を手で覆い、でっしゅと笑う。
「あぅう~」
顔は真っ赤である。その赤さは湯気さえ見えるのではないかという気がした。
「何やってるんですかね?」
「さぁ?」
アレンとシキはその光景をジト目で見守る。
『オイ、お前らその荷物を置いていきな!』
『女もな!』
明らかに山賊のようなことを言いながら、山刀を向け、木の陰から賊が現れる。後ろには山羊の頭をした長身の悪魔が立っていた。バフォメットは手にしていた大鎌を振り、闇の魔術を発射する。アレンは即座に対応しようとするが、目の前で魔術が爆発する。破裂した魔術が生み出した煙から賊2人が飛び出してくる。
手慣れている。
彼らの常套手段なのだろう。たいていの人はこれでビビってしまい負けてしまうのだろう。しかし、血気盛んな者が出張り出す。
『『ハッ??』』
2人にはこんな経験がなかったのだろう。顔が驚愕に染まる。煙を抜けると炎を纏った男がいた。すれ違う際、足の腱を斬る。さしものコストイラも人を斬るのは躊躇したのだろうか。
しかし、バフォメットに対してはそんな躊躇いはない。
コストイラがバフォメットと対峙する。その隙にアレンはこっそりと賊に近付く。この賊は見た目では分からないが魔物である。アレンは解体用のナイフを抜く。
『クッ。我らシレスト盗賊団が負けるわけには。これは逃げるべきか」
……山賊かと思ったが、盗賊だったらしい。
残しておいてもどうなるか分からない。相手は魔物だ、何か害をなすかもしれない。
アレンは気付かれる前にバンデットの首裏へナイツを突き立てる。
『グ?』
盗賊の一人が倒れたところ、もう一人が気付く。仲間も気付いたようだ。
「アレン?」
アストロが静かに問いかける。アストロからはただの人殺しにしか見えないのだろう。エンドローゼはレイドの後ろに隠れ、震えている。アシドは我関せずを貫いている。
「えっと、こいつらは、その、信じてくれないかもしれないですけど」
「早く言いなさい」
「こいつらは」
「魔物」
アレンが弁明しようとするが、言い訳が多くアストロに怒られる。意を決したところ、シキに先に言われる。シキの手には残った盗賊の頭があった。顔一つ変わっていない。
「これが魔物なの?」
「見た目じゃ分かんねェな」
アストロは盗賊の首を凝視するが、見分けはつかない。
「は?おい」
コストイラの苛立った声が聞こえ、そちらを見る。
「おい、え?誰もオレの活躍、誰も見てねェの?」
コストイラの後ろでは、バフォメットが燃え上がっていた。コストイラには目立った外傷がない。余裕があったのだろう。しかし、誰も見ていなかった。
「…………すまん」
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