メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

文字の大きさ
上 下
19 / 393
1.はじまりの郷

19.墓場の亡霊

しおりを挟む
「お湯浴びたい」



 アストロのぼやきに皆が全力で同意する。



 泥のせいで皮が突っ張っているし、髪が軋み、何よりボロボロと剥がれ落ちて気持ち悪い。お湯などと贅沢は言わないから、この泥を落としたい。



「残念ながら、その前に墓場についてしまいましたね」



 それに、とアレンが続ける。



「魔物も見えますし」



 アレンが向ける視線の先に、炎のような揺らめく何かが舞っていた。



「何だあれ」



 アシドが手で傘を作り何かを見つめる。図鑑か何かで見た記憶があるが思い出せない。



「東方には墓場に現れるあぁいう浮遊している生き物をタマシイっていう習慣があるらしいぜ」



「へー」



「で、対処法は?」



「すまん。知らね」



「おい」



 コストイラは博識になり切れず、アストロにゲシゲシと蹴られている。普段はあまり痛そうにはしないが、今回は脛に当たったようで顔を顰めている。



 炎のような何かは3つが集まり、円を描くようにくるくると回り始める。



「何だ?」



 レイドが呟くと、何かの中心から、球状の闇の魔力が出現する。それはものすごい速度で射出される。



 急速の攻撃に慌てて対処する。あまりにも不格好な回避にアレンとエンドローゼは足を滑らせ、アレンは腰を打ち付けエンドローゼは顔面から着地する。



『クスクス』



「誰ですか?今笑ったの?」



 全員が首を横に振る。え、嘘。誰もいないの?笑い声は幻聴だった?



「ん」



 アストロは一点を指さす。その先にいるのはタマシイのような魔物。え?あれ笑うの?



 アレンは弓矢でタマシイを狙う。が、当たらない。ふよふよと漂っているので、狙いが定まらず何本も外す。次の行動が読めず、先撃ちもできない。



「えぇ」



 アストロの落胆の声を聴き、肩を落とす。



 面倒臭げに溜め息を吐く。次なんか考えたくない。次があるのか?え?僕、殺されるかもしれない。



 アストロは大雑把に狙う。



 アストロは炎の塔を建設する。















「今ので終わり?」



 アストロの一言がアレンの心を抉る。その終わりにもできなかったアレンは肩身の狭い思いをする。



「お前、矢全然当たんなくなってない?」



「ゔ」



 さらに心が抉られる。とても気にしているところを平然と言ってくる。



 アレンは顔を覆った。エンドローゼがオロオロし始める。コストイラとアシド、アストロは面倒なことをしたと後悔する。



「えっと、魔物はこれで終わり?」



「い、いえ、話によると、ここで現れる魔物はゾンビという話だったので」



 アレンは顔を覆ったまま、正直に答える。きょろきょろと辺りを見渡す。そのゾンビはどこにもいない。じゃあ。どこに?



 皆がとっとと帰りたいので、さらりと見渡す。



 警戒が強まる。



 シキが口を開く。



「下」



 言われて、皆が下を向く。



 地面がうっすらと盛り上がり、ボコりと手が現れる。エンドローゼの足元から出てきた手は、エンドローゼの足首を摑んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する

土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。 異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。 その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。 心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。 ※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。 前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。 主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。 小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

処理中です...