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1.はじまりの郷

15.火霊の洞窟

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 ギルドには多くの役割がある。その多くはギルド役員が関わってくるものだが、関わらないものもある。その一つが待ち合わせ場所としての役割だ。この街に住む多くの人は待ち合わせに使う。理由は簡単だ。ギルドはこの街に一つしかない。何を象っているのか分からぬモニュメントよりもよっぽど人が集まっている。



 現在、アレン達はギルドの前にいた。例に漏れず、待ち合わせだ。



「皆さん、準備出来ましたか?」



「うい」



「今日はお金稼ぎは考えず、経験値稼ぎをします。レベルアップを狙っていきます」



「おお。良いな。で、どこに行くんだ?」



「火霊の洞窟と呼ばれる場所です」



 コストイラは細かく何度も頷いて、納得したことを示す。



「ところで」



 アレンは目の前にいる5人のことを見る。



「アストロさんは?」



 この場には、アレンの言う通りアストロの姿が見えない。シキは無反応を貫き、レイドは首を横に振る。エンドローゼはあわあわと慌てながら、首を横に振る。アレンは若干脅した気分になり、謝りたい衝動に駆られた。



 アストロの幼馴染2人はというと。



「さぁ?」



「洞窟嫌いだし拗ねたんじゃね?」



 アシドとコストイラは肩を竦めた。



 ……誰も行方を知らないのか。



「アストロさんって洞窟嫌いなんですか?」



 アシドとコストイラは互いに見つめ合い、どちらが話すのかアイコンタクトで決める。



「ほら、今まで出してた魔法を思い返してみ。派手だし範囲攻撃だし、洞窟内だといちいち確認取ってから魔法を放ったんじゃストレスが溜まりまくるだろ。活躍もできねェしな」



「成る程」



「ま、あいつのことだし、どっかで自分でなんかやってんだろ」



 アレンは報告はしてほしかったと思いながら、少し気になったことを考える。僕、今日は洞窟に行くって今初めて行ったのに、どうしてアストロさんは知っていたんだ?しかし、ここで考えていても仕方がない。6人でも探索はできるか?















 街を出て、15分くらいすると火霊の洞窟が見えてくる。街からは真南に向かうだけで、ここまでは子供でも来れる。しかし、中にいる魔物は凶悪なものと楽に倒せるものとが入り乱れており、基本騎士か冒険者しか入れない。しかも、この洞窟の推奨レベルは6か7。この街の冒険者の平均レベルが9から10だと考えれば相当高いだろう。



『ギャ!』



 コストイラは魔物を斬った刀を振るい、火の粉を払い、そのまま鞘に収める。この洞窟内に出てくる楽な魔物、ファイアエレメントは口から火球を吐いてくる種だが、その速度はエンドローゼでも躱せる。レベル差によるものだろう。



「数だけで、しかもこのレベルなら数で来られても脅威までも至らねェな」



「だから経験値稼ぎに最適なんじゃないですか?そう教わりましたけど」



「それもそうか。教わったって誰にだ?」



「名前は聞いてないですけど、恰幅のいいおばさんでしたよ。確かパンフレットをくれた」



「あ?」



 アシドが反応した。



「あのババァまだそんなことしてたのか」



「あれぼったくり店だって言ったろ。信じんなよ。つかそれで来たオレ達もやばくね?」



 本来、ここに来た目的は経験値稼ぎなのだから敵が倒しやすく、多く出現するのは願ったりではないだろうか。騙されていたとしても許してしまうだろう。



『ハァ』



 ファイアエレメント達の後ろに、別の魔物が出現する。



 ゴブリン程の身長。捻じれ伸びている2本の角。灼熱に彩られた肌。敵を切り裂くのに適した鋭い爪。



 レッドデビルは狩人の目でこちらを見つめる。完全に獲物としてみている。レッドデビルの口から火球が吐き出される。



 ファイアエレメント達を巻き込みながら直進する火球を、アレン達は横に跳び回避する。



 火球によって開かれた道を、アシドとコストイラは疾走する。



『ゴォオオオオオッ!!』



 アシドの槍が届く寸前、レッドデビルが吠え、両者の間に火の壁が出現し、攻撃を中断させる。



 しかし、アシドは飛び退いたが、コストイラは退かない。



「しゃらくせェ!!」



『チョっ!』



 コストイラは火の壁などお構いなしと、火の壁を刀で切り開く。



 レッドデビルは一瞬焦った。想定の範囲外だ。咄嗟に左腕を出し、腕を一本犠牲にして、距離を取る。



『グゥオ、ハァ』



 左腕から止めどなくダラダラと血を流しながら、こちらを窺う。



 アレンは弓を引き、エンドローゼは少し下がる。レイドは二人の前に立ち塞がり、楯で壁となる。アシド、コストイラ、シキはじりじりと距離を詰めていく。



 そして、一気に距離を縮めるシキに反射的に爪を合わせる。シキのナイフは爪を滑っていき、通り過ぎながら、右腕を斬りつけていく。



 レッドデビルの両腕はもう機能しない。



『グオオオオ!!』



 しかし、吠えた。



 覚悟に満ちた、怒りの眼差しで、シキを見る。



 唸りを上げるその閉じられた口の端からは、炎が漏れ出ている。



 その口を大きく開け、最大級の火球を発射する。シキは軽々と躱し、火球は洞窟の奥に消えていく。アシドはレッドデビルを後ろから刺す。



『グルア』



 レッドデビルの命が消える。



「割と手応えのある奴もいたな。弱ェ奴を狩り続けるよりこっちの方が合ってるぜ」



 アシドはにやにやとしながら髪を掻き上げながら顔を上げる。そして目を見開く。



「シキッ!」



 ゴッッ!!



 重い音と共にシキの体が吹き飛び、派手に壁に激突した。
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