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1.はじまりの郷
5.大通りの店には気を付けろ
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いつも依頼されているからか、アルミラージの角と肉は換金額が低かった。コストイラはこんなもんだろ、と言うとどこかに行ってしまった。互いに連絡を取り合う手段がないので、どこに行くのかは伝えてほしい。コストイラに続いて、全員がどこかに行ってしまった。
1人になってしまった。どうしよう。何をしよう。
アレンは何かするわけでもないので、ただただ街の中をぶらつくことにした。アレンはこの街について何も知らない。昨日着いたばかりで、まだカフェと宿にしか訪れていない。
(都会って凄いなぁ。あのお店もあっちのお店も初めて見た)
これはアレンの知らないことだが、実はこの街も都会ではない。都会ではなく、田舎に近い。街を5段階評定した時、アレンのいた村は1、この街は2である。
キョロキョロとお上りさんの如く歩くアレンは客観的に見ればただの鴨である。
「やぁやぁお兄さん。あんたこの街初めてかい?」
「え、は、はい」
「なら良かった。これこの街のパンフレットよ。おすすめのお店がいっぱい載っているのよ」
アレンに話しかけてきたのは恰幅のいい女性だ。一般的に成金趣味といわれる格好をしているが、アレンには本物の成功者に見える。
「い、良いんですか!?」
「良いのよ。彼方が載っているお店の商品を買ってくれるだけで、身に着けてくれればいい宣伝になるのよ」
「成る程」
「まぁ、行ってみなさいよ。この羊皮紙なんて見てても店の良さは分かんないわ」
女性は豪快に笑うと、アレンの背中を叩く。
アレンはパンフレットを読み込むために大通りから外れる。
「フムフム。このお店は装備屋さんでこっちはレストランか。あのカフェが載ってないな。なんでだろ」
「よぉお兄さん何してんだ?」
声を掛けてきたのは目のところに切り傷のある男だ。後ろには2メートル近い巨漢と露出の多い装備の女性がいる。アレンはチンピラの文字が頭に浮かぶ。嫌な顔をすると余計に絡まれそうなので努めて平常心で答える。
「ぱ、パンフレットを」
「んおぉ! こいつパンフレット持ってるぜ!良いよなこのパンフレット。俺等もこのパンフレットに助けられたんだよ」
「あぁ。この装備もそのパンフレットに載っている装備屋のものだ。以前のものなら耐えられなかったが、そこの店のは耐えることができたんだ」
「なんと!」
アレンは巨漢の言葉を信じた。普通に考えればどこのお店でも、以前のものよりも良い装備を身に着ければ可能な話だ。お店が100%とは言えない。アレンは全く気付いていない。
「ええ。それにこのレストランにはこの街の領主も通っているのよ。お店に来れない時は出前までして頼んでいるそうよ」
「へ、へぇ!」
女性は自身の体をアレンにすり寄らせ、耳元で囁く。拙いハニートラップだが、アレンは気付かない。レストランも領主は2回しか行ったことがないのに、誇張している。というか領主もグルだ。カフェはこの件に加担してないのでパンフレットに載っていない。
そう、このパンフレットは観客用のぼったくり店のパンフレットだ。アレンはまんまと騙されたのである。
アレンは路地裏を通って装備屋に向かう。
「やぁ君」
「ん?」
アレンはまた呼び止められる。壁に凭れ掛かった女性だ。さらりとした茶色の短髪を揺らしてこちらを伺う。
「そのパンフレット。そうか」
何かを察したようにうんうんと頷く。
「君はさ、この街をどう思う?」
「どう? そうですね、優しいですかね?」
「優しい?」
「はい。このパンフレットだって渡してくれましたし、道も案内してくれましたし」
「そうかそうか。君はピュアだね」
「え?」
女性は壁から背を離す。
「じゃあ、頑張りなよ」
女性の臀部には尻尾がある。獣人は初めて見た。女性が角を曲がる。後を追うように覗き込むと女性はもういなかった。
装備屋の前に着くと店員が品出しをしていた。アレンが店員に声を掛けようとすると、肩を叩かれた。
「よぉ、アレン。何してんだ」
「あ、コストイラさん。さっきこのパンフレットを貰いまして」
「あん?」
コストイラはアレンの持っているパンフレットを覗き込む。
「お前これ、ぼったくり店のパンフじゃねーの?」
「えっ!?」
アレンは穴が開くほどにパンフレットを見る。
「オレの小手がだいたい2000リルだ。ほらあの店のやつを見てみろ。いくらだ」
「えっと。4000リル? 2倍? それだけ良い物使っているんですかね?」
「馬鹿か。オレの方が高性能だよ」
「え……。じゃあ」
「アァ。ぼったくりだ」
アレンは肩を落とした。コストイラはアレンの手からパンフレットを抜くとくしゃくしゃに丸めた。
その後は、コストイラにお得な装備屋に連れていかれた。どうして知っているのかを聞くと来たことがあるかららしい。知っている人と知らない人の差が出た。やはり知っているのは強い。
1人になってしまった。どうしよう。何をしよう。
アレンは何かするわけでもないので、ただただ街の中をぶらつくことにした。アレンはこの街について何も知らない。昨日着いたばかりで、まだカフェと宿にしか訪れていない。
(都会って凄いなぁ。あのお店もあっちのお店も初めて見た)
これはアレンの知らないことだが、実はこの街も都会ではない。都会ではなく、田舎に近い。街を5段階評定した時、アレンのいた村は1、この街は2である。
キョロキョロとお上りさんの如く歩くアレンは客観的に見ればただの鴨である。
「やぁやぁお兄さん。あんたこの街初めてかい?」
「え、は、はい」
「なら良かった。これこの街のパンフレットよ。おすすめのお店がいっぱい載っているのよ」
アレンに話しかけてきたのは恰幅のいい女性だ。一般的に成金趣味といわれる格好をしているが、アレンには本物の成功者に見える。
「い、良いんですか!?」
「良いのよ。彼方が載っているお店の商品を買ってくれるだけで、身に着けてくれればいい宣伝になるのよ」
「成る程」
「まぁ、行ってみなさいよ。この羊皮紙なんて見てても店の良さは分かんないわ」
女性は豪快に笑うと、アレンの背中を叩く。
アレンはパンフレットを読み込むために大通りから外れる。
「フムフム。このお店は装備屋さんでこっちはレストランか。あのカフェが載ってないな。なんでだろ」
「よぉお兄さん何してんだ?」
声を掛けてきたのは目のところに切り傷のある男だ。後ろには2メートル近い巨漢と露出の多い装備の女性がいる。アレンはチンピラの文字が頭に浮かぶ。嫌な顔をすると余計に絡まれそうなので努めて平常心で答える。
「ぱ、パンフレットを」
「んおぉ! こいつパンフレット持ってるぜ!良いよなこのパンフレット。俺等もこのパンフレットに助けられたんだよ」
「あぁ。この装備もそのパンフレットに載っている装備屋のものだ。以前のものなら耐えられなかったが、そこの店のは耐えることができたんだ」
「なんと!」
アレンは巨漢の言葉を信じた。普通に考えればどこのお店でも、以前のものよりも良い装備を身に着ければ可能な話だ。お店が100%とは言えない。アレンは全く気付いていない。
「ええ。それにこのレストランにはこの街の領主も通っているのよ。お店に来れない時は出前までして頼んでいるそうよ」
「へ、へぇ!」
女性は自身の体をアレンにすり寄らせ、耳元で囁く。拙いハニートラップだが、アレンは気付かない。レストランも領主は2回しか行ったことがないのに、誇張している。というか領主もグルだ。カフェはこの件に加担してないのでパンフレットに載っていない。
そう、このパンフレットは観客用のぼったくり店のパンフレットだ。アレンはまんまと騙されたのである。
アレンは路地裏を通って装備屋に向かう。
「やぁ君」
「ん?」
アレンはまた呼び止められる。壁に凭れ掛かった女性だ。さらりとした茶色の短髪を揺らしてこちらを伺う。
「そのパンフレット。そうか」
何かを察したようにうんうんと頷く。
「君はさ、この街をどう思う?」
「どう? そうですね、優しいですかね?」
「優しい?」
「はい。このパンフレットだって渡してくれましたし、道も案内してくれましたし」
「そうかそうか。君はピュアだね」
「え?」
女性は壁から背を離す。
「じゃあ、頑張りなよ」
女性の臀部には尻尾がある。獣人は初めて見た。女性が角を曲がる。後を追うように覗き込むと女性はもういなかった。
装備屋の前に着くと店員が品出しをしていた。アレンが店員に声を掛けようとすると、肩を叩かれた。
「よぉ、アレン。何してんだ」
「あ、コストイラさん。さっきこのパンフレットを貰いまして」
「あん?」
コストイラはアレンの持っているパンフレットを覗き込む。
「お前これ、ぼったくり店のパンフじゃねーの?」
「えっ!?」
アレンは穴が開くほどにパンフレットを見る。
「オレの小手がだいたい2000リルだ。ほらあの店のやつを見てみろ。いくらだ」
「えっと。4000リル? 2倍? それだけ良い物使っているんですかね?」
「馬鹿か。オレの方が高性能だよ」
「え……。じゃあ」
「アァ。ぼったくりだ」
アレンは肩を落とした。コストイラはアレンの手からパンフレットを抜くとくしゃくしゃに丸めた。
その後は、コストイラにお得な装備屋に連れていかれた。どうして知っているのかを聞くと来たことがあるかららしい。知っている人と知らない人の差が出た。やはり知っているのは強い。
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