上 下
111 / 148
これだけは誰にも負けない

「頑張ったな」

しおりを挟む
年の瀬、ふと今年の自分を振り返る。

果たして僕は、今年、頑張っただろうか。

僕は、何か意味を残すことが出来ただろうか。

僕が過ごした今年は果たして、本当にあったのだろうか。

誰かの記憶に、今年の僕はいるのだろうか。

僕は僕なりに、なんとか頑張ってきたと思う。

お疲れ様、大変だったね、頑張ったね。

そうやって、今年の自分をいたわる自分がいる。

さて、来年は何をしよう?

どんな僕でいよう?

お気に入りのジャズを流して、
ソファに深く腰掛けて、ヒーターの熱い風に冷え性の足をかざしながら、目を閉じる。

すると、さっき入れたばかりのココアが、早く飲まないと冷めてしまう、と言うもんだから、はいはいと仕方なくカップに手を伸ばす。

夜は蕎麦を食べた。年越し蕎麦だ。

こうやって静かに年明けを待つのも、たまには悪くない。

お世話になった人、仲良くしてくれる友人達、愛しい家族、全ての人に感謝して、少し頬を緩ませた。

お酒を飲んでいるからかな、少し、気分がいい。



「………疲れたなぁ」


嗚呼、本当に、頑張ったな。

お疲れ様、僕。

良いお年を。

また来年、頑張れ。
しおりを挟む

処理中です...