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君を守りたい

決意

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思い出話をしよう。


愛しくて、憎くて、
尊くて、儚い…………昔の話______…。




「おい、待ってよ。待ってくれって。」


「殺し屋が何を言っているの。
   早くしないと、私を殺せないよー。」


「だから、
   そのからかい方はやめてくれよ…。    
   もう殺しはやめたんだ。」


「でも…今までの罪は、
   あなたを許してはくれない。
  それは、あなたが一番よく分かってる。」


「………。」




分かってる。


どれだけ重い罪が、僕についてくるのか。


君に出会って、思い知った。



君を殺すことが出来ないと知った時、
僕は、殺しが出来なくなったんだ。


大事にしたいと、守りたいと思ったのは、
君がはじめてだったから。


銃を構える手が震えて、
銃弾は、君の横をすり抜けた。


あの瞬間から、
僕は……人を殺める事が出来ない。


君に出会ってから早5年_________。


僕はすっかり、
綺麗になった気になっていた。


君といることで、僕の汚れは浄化される。


僕のこの汚れた右手は、
銃を持つためのものだった。


でも君の綺麗な左手に、
僕の右手は洗われていく。


もう大丈夫だと思ってた。


きっと、やり直せる______と……。


そう、思っていたんだ。






体が強く地面に叩きつけられる。


起き上がろうとした瞬間、
頭を掴まれ、地面に擦り付けられた。



「っ!!…………てめ……。」


「お前ならこの程度の攻撃、
   避けられたんじゃねぇの?
   平和ボケしてんじゃねぇぞ!!」


「………………。」


「…あぁ、こいつか。」


「!!」



奴等は君の腕を強引に引っ張り、
すでにぼろぼろの体を無理矢理立たされた。



「う……」


「やめろ!!そいつは関係ない!!」


「関係大有りだっつの。
   今回の殺しのターゲットは
   こいつだったはずだ。
   5年も音信不通になって
   何してるのかと思ったら…。
   俺たちを裏切っておいて、
   任務遂行出来なかった奴は
   どこのどいつだぁ?」


「……っ。」



確かにそうだ…
僕は任務を遂行出来なかった。


でも、君にはいろんな事を教えてもらった。


汚れて暗闇しか知らなかった僕に、
君は幸せを教えてくれた。


光を教えてくれた。


希望を……やり直せると……
そんな眩しい考えをくれた。



だから__________________。



「頼む……やめてくれ……っ…。」



どうして僕は、
君と出会ってしまったんだろう。



「……いや………いやだ……!!」



どうして僕は、
君を殺せなかったのだろう。



「助けて………いやだ……やだよ……!!」



どうして僕は、こんなに弱いのだろう。



「死にたくない……死にたくないよ…っ、
    助けて…………。」




「やめろぉぉぉォォォ!!!!!!!!」





パァンッ________________________。








“死にたくない”


そう言って、
君は僕の目の前で殺されたんだ。


その後の記憶は無い。


気が付いたら、
奴等が地面に転がっていて、
僕の両手が
血まみれになっていたことだけだ。


右手だけでなく、左手まで……。



大切なものを失う事が
こんなに辛いものだというのなら、
大切なものなんて、要らない。


君が居なくなって、
僕は、人を殺せるようになってしまった。


僕はまた、泥沼の暗闇の中に落ちていった。






だから、今も悩んでる。


人を殺せなくなった自分のことを。


守りたいと、
思ってしまうようになった自分のことを。




______い…。


____________ぉぃ。




「________________________おい!!」



「!?」


「なに、お前…泣いてるんだよ。
    大丈夫か?」



再び手に入れた、光……。


もう、二度と、失いたくない……。



「いや……夢を見てたんだよ……。」


「ふーん…どんな?」


「昔の……懐かしくて、愛しい夢。」


「そっか…。ほら、早く起きろよ。
   仕事を始める。」



手を差し出された。

でも、
僕はその手を取ることが出来なかった。


まだ、お前を守れるくらいまで、
僕は強くなれてない。



「大丈夫だよ、一人で起きれる。」


「でもお前、傷が______。」


「大丈夫だから…行こう。」


「あ、あぁ…。」




ごめん。


まだお前の手を取ることは出来ない。


でも、大事な仲間なんだ。


だから、僕は強くなる。


お前を守れるくらい強くなったら、
僕にまた、手を差し伸べてほしい。


その時は、きっと、
お前の手を力強く取れると思うから。
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