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愛を育む

クリスマスイブは君と

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クリスマスイブの夜。


恋人達が賑やかに街を歩く。


そんな中を、
僕はいつも通り疲れた体で
冷たい風を受けながら家路を急ぐ。


コートのボタンを全部閉じて、
ポケットに手を突っ込んで、
マフラーに頭を沈めながら、
僕は街を歩く。


クリスマスのイルミネーションを
視界にチラつかせながら、
なんでもない顔をして
クリスマスツリーの横を通り過ぎる。


そこらには
人目も気にせずイチャつくカップルの山。


大きなラッピングされたプレゼントを
抱えてはしゃぐ子供の姿。


僕には、眩しく思えた。




僕は足を急がせた。



早く、君の待っている
あたたかい家へ帰りたい。



僕は息を切らせて、玄関のドアを開けた。




「…ただいま」




そこには僕の大好きな、
君の優しい笑顔があった。




「おかえりなさい」




僕はこの笑顔にいつもほっとする。


帰ってきたんだ、と。




部屋に入ると、なんだかほんのりと、
甘い匂いがした。


「なにか作ってたの?」


「うん。ケーキとか、クッキーとか…
   あっ、見て見て。これ、可愛いでしょ?」



イチゴで作ったサンタクロース。


ホイップクリームで顔が作ってある。


帽子のクリームも大したものだ。



「わぁ、すごいね。
   なんか食べるの勿体無い気がするけど…」


「ふふふっ、私もそう思った。
   だから写真撮っておいたわよ?」


「流石、ぬかりないね」


「えっへん」



こんな当たり障りの無い会話も、
君となら特別。


イチゴのサンタさんを見つめて、
達成感に浸る君は可愛らしくて。


この特別な夜、
君とこのあたたかい家で、
笑って過ごす。


今まで過ごしてきたどんな夜より
幸せな時間。


君とイチゴのサンタを並べて、
微笑んでいたい。


布団に一緒にくるまって、
話していたい。


眠そうになった君を、
僕がデコピンをして起こすんだ。


ベランダで星を見て、
流れ星に願う。




世界中の全ての人が、幸せになれるといい。




たまには、そんな夜も悪くは無いよね。






君が、生まれてきてくれて良かった。


僕と、出会ってくれて良かった。




誰もが、
大切な人と過ごせる
素敵な夜になれるといい。





メリークリスマス_____________…。
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