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戯言はお言葉

親父の説教

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引っ込み思案で、人見知り。

でも、一人は嫌なんだ。

本当は、僕もあの仲に入れてほしい。

入れて…くれないだろうか。



「は?なにを甘ったれているんだお前は。

   自分から行かなければ、
   仲良くなんて、出来るはずがないだろう。

   いつもいつも受け身だから
   お前はダメなんだ。

   相手が常に何かしてくれると思っていたら
   大間違いだぞ。

   何かしてくれるまで待ってなんかいたら、
   チャンスは一生やって来ない。

   お前も、分かっているんだろう?

   分かっていて、
   性格の所為にしているんだろう?

   お前はただ逃げているだけだ。

   人と向き合うことを。
   
   自分が傷つくことを。

   逃げたら、遠ざかるだけだ。

   本当にそうしたいと思うのなら、
   少しでも、行動にしてみせろ。

   挨拶をしてみるとか、
   手伝ってあげるとか、
   たくさんあるだろ。

   …でもまぁ、
   お前もそんな年頃になったんだ。

   そろそろ、大人になってみろよ。

   もう、泣けば許してもらえる
   年でもないだろ。

   喚けば手を貸してもらえる
   年でもないだろ。

   いい加減、腹くくれ。

   俺はな、お前がいつか
   大きな世界に旅立って、
   多くの人と笑っている姿を
   みてみたいんだ。

   いつまでも、好き嫌いしてらんないぞ?


   言えるだけのことは言ったからな。

   この後どうするかはお前次第だ。

   本当にそう思っているのならば、
   俺に、それを示してくれ。

   俺はお前じゃないから、
   変わってやりたくても
   変わってやれねぇんだよ。

   本当、俺がお前だったら、
   お前はこんなことで
   悩まずに済んだのかもしれないのにな。

   お前の本気、俺に見せてくれよ。」



そう言って親父は、
僕の頭を鷲掴みするように撫で回した。

強くたくましい腕の向こうには、
泣き出しそうな顔をした親父が
微笑んでいた。



「親父の説教は、長すぎんだよ…。」



僕は、変われるだろうか。
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