上 下
87 / 148
目頭が熱い

君色の夏

しおりを挟む
素敵だね。


こんなにも星空が美しく見える。


君が隣にいてくれたあの夏をまた、
思い出すようで…。




七夕には浴衣を着て二人で歩いた。

空に輝く天の川と、
彦星と織姫を見ながら微笑んだ。


河原のベンチに座って手を繋いだ。


僕が力を少し入れると、
それに応えるように握り返してくれた。


屋台で買ったりんご飴を
とても美味しそうに食べるものだから、
僕も一口貰ってみたり。


ラムネを振りすぎて、
中身が全部溢れてしまった。


ヨーヨーすくいで勝負してみたり、
金魚すくいで夢中になって、
浴衣の裾を濡らしてしまったこともあった。


その度君が笑ってくれるから、
僕までつられて笑ってしまう。


その時間が、いつまでも続くと、
その時はそう思っていたんだ。




だけど____________________…。




もう僕の隣に、君はいない。




ずっと手を繋いでいたかった。


ずっと笑いあっていたかった。



儚い願いはこの空には届かない。




今日も一年に一度の日がやってきた。


一年に一度二人が出会える奇跡の日。




僕は君に、一年に一度でも会えない。



もう、会えないんだ。



僕は雨に打たれて灰色の空を眺めていた。



今頃、あの分厚い雲の上で、
二人は幸せでいるのだろうか…。
しおりを挟む

処理中です...