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帰巣本能

逃れたい

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どうしようもなくて、


泣きたくて。泣きたくて。


誰かの目の前で泣きたくて。


誰かの胸の中で泣きたくて。


でも出来なくて、


誰かの目の前で泣く事も、
誰かの胸の中で泣く事も、


僕には出来ない。


僕にはそんな人がいなかった。


そんな自分が悲しくて、
辛くて、寂しくて、


泣きたいのに、
涙をぐっと堪えてしまう自分がいる。


その事も苦しくて。


自分がもう、分からない。


どうして好きなものをする事が
許されないのか、


どうしてやりたい事を
諦めなければならないのか、


どうして自分は
否定されなければならないのか、


分からなくて。


どうしてもっと
楽しく生きる事が出来ないのだろう。


僕の青春の全ての期待が打ち砕かれて、粉々になってしまった。


そこには希望も興奮もなくて、
ただ絶望と憎しみが生まれている。


もう、いっそ、何もしたくない。


大声で泣きたい。


声が枯れるまで、ずっと、ずっと、


ただ泣きたいだけなのに、
それすら僕には出来ない。


苦しい。辛い。寂しい。


負の感情だけが、込み上げる。


泣いていい場所が無いと言うのは、
激しく辛い。
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