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第1章 レイチの魔法
第1話 最初の授業
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◇◇◇メレス1599年2月◇◇◇
『皆さん、〈私立ロザリア花園魔法学園〉の試験合格、おめでとうございます。本日から皆さんは寮で生活することになります』
入学試験の合格発表が終わり、心を躍らせる仲間たち。
「レイチ!! やったね!! これからも一緒だよ!!」
「うん!! ミルキーもおめでとう!!」
「ありがとう!!」
私は親友のミルキーを抱きしめ、喜びを分かち合う。
『これから、入学時に必要なアイテムを配ります。まず、学園からの支給品として〈ロイヤルローズ・スティック〉を手元に…………』
ポンッ!! と出現した白銀の薔薇をあしらった杖。私の手には大きいと思ったが、手に取ると自分の手に合った大きさになる。
『そして、皆さん一律で40万レイズを渡します。皆さんはそのお金を使って、箒、教科書、魔力瓶、ローブを購入してください』
本当に魔法学園に通うんだ。楽しみで、胸いっぱいにワクワクが溢れ出る。
「はいっ!! 先生!! 質問です!!」
すぐ後ろの男子が手を挙げた。
『なんでしょうか?』
「購入後余ったレイズは、どうすればいいですか?」
『お答えします。余った分はは貯金するも良し、私用に使うのも良し。管理の仕方は、皆さんにお任せします』
へぇー、自由に使っていいんだぁー。お昼でも買おうかなぁー。
『では、これにて解散となります。一度寮に向かってから、行動を始めてください』
◇◇◇ヴィレス文具街◇◇◇
「レイチ、部屋も一緒だったね」
「うん!!」
私は、文具を買うために、ミルキーと文具街を歩いていた。指定された道具を一式揃え、今は寮への帰り道。
――グワァー!!
突然、得体の知れない魔物が現れ、私の箒を奪い取った。走っていく魔物を追いかけるが、間に合わない。
すると、
『フラワーアレンジメント!! アイシクル!! フォアアロー!!』
どこからともなく飛んでくる、氷の矢。それは魔物に命中し、箒を落として去っていく。
「大丈夫だったかい? マイプリンセス。君たちは…………。今度入ってくる新入生だね」
私の箒を持ってやってきたのは、この上ないくらいの美男子だった。
「はじめまして、僕はクレイ・アイシクル。ロザリア学園中等部次期2年生です」
「ここ、こちらこそ……。たた、助けて…………くだ……さり……。あ、あり…………。あり……がとう……ござい……ます」
「ちょっとレイチ、緊張しすぎ」
「だだ、だって…………」
クレイは、私が大好きなアイドルユニット〈凍結蓮華〉の人で、ファンクラブまで入っている。
そんな彼が今、私の目の前で箒を返しに来ているのだ。思わず顔を赤らめて、凍てつくように固まってしまう。
「普段通りでいいですよ。リラックスしてください。レイチさん。えーと、下の名前は…………」
「さ、サフランです。レイチ・サフラン」
「で、お隣は」
「ミルキー・ライ。今回は親友を助けてくださり、ありがとうございます」
なんで、ミルキーは緊張してないの!! も、もう、限界なんですけど!! 私は、緊張を通り越して意識を失った。
◇◇◇2ヶ月後 魔法学園女子寮◇◇◇
「レイチ!! 起きて!! 今日から学校だよ!!」
私の親友の声がする。
――バサッ!!
頭まですっぽり覆っていた布団を剥がされ、差し込む光に目を細める。しばらくして慣れてくると、頬を膨らませているミルキーの顔。
「レイチったら!! 今日から学校!! 忘れてたでしょ?」
夢の世界が気持ち良すぎて、すっかり忘れていた。私は急いで登校準備を終わらせて、朝食を食べることなく学校へ。
〈私立ロザリア花園魔法学園〉は、中高一貫校の魔法学校で、入学時に、精霊が付くと聞いていた。私はどんな精霊なのか楽しみにしていたのだが…………。
◇◇◇◇◇◇
「なんで、 私だけいないのぉー!!」
『以上で、 中等部入学式を閉式と致します』
教頭先生の言葉を聞き終えた私は、頭を抱えて愕然とする。他の人たちには、可愛いらしい精霊がふわふわと飛んでいるのに、なぜか私だけ精霊が付かなかった。
これから楽しい学校生活が始まるのに……。もしかして、元々の魔力が少ないから?
「そんなの、聞いてないよぉ…………」
余計にテンションが落ち込んでしまう。
「レイチ!! いつか精霊がやってくると思いますよ!!」
「う、うん…………。そうだといいんだけど…………」
明るく声を掛けてくれたミルキーには、桃色の精霊。 魔力量が最底辺の私にとって、とても羨ましかった。
◇◇◇その翌日◇◇◇
「もう何回言ったらわかるの!! いい加減起きなさぁーい!!」
朝に弱い私は、また親友に起こされる。
「ミルキー!! 今起きます!!」
昨日と同じように身支度を整え、通学路へ向かうが…………。
「ごめん!! 箒忘れちゃった!! ちょっと待ってて、取ってくる!!」
魔力最底辺のレイチと、忘れっぽいミルキーの学園生活が始まった。
◇◇◇中等部1年8組◇◇◇
「みなさ~ん!! おはようございま~す!! このクラスの担任になりましたー!! ミレス・ローズマリーで~す!! よろしくね~!!」
私の担任の先生が、軽快な口調と高いテンションで挨拶する。1クラス36人。全10クラスの360人だ。そして私のクラスは8組。
「ではではぁ~。出席確認しまーす。呼ばれたら、手を挙げてねぇ~!! それじゃあ。フェレス・トゥルペ」
ミレス先生の声にパステルイエローの少女が手を挙げる。続いて、
「ラズベリー・ローズ」
今度は桃色がかった赤髪の少女。
「メレナ・ブロッサム」
手を挙げたのは、桜色の髪の少年。そして、
「レイチ・サフラン」
名前を呼ばれて、私は手を挙げる。その後も全員の名前が呼ばれて、お待ちかねの、
「では、最初の授業に入りまーす!! みなさ~ん!! 〈ロイヤルローズ・スティック〉を出してくださーい!!」
魔法の授業だ。一斉に机の横に引っ掛けたカバンから、スティックを取り出す。
「みなさんも、知っていると思いますが、魔法を使用する時には必ず、『フラワーアレンジメント』と言う必要がありま~す!! では早速言ってみましょう!!」
ものすごいトントン拍子に進める、ミレス先生。短い説明なのに、覚えやすい。ミレス先生の「せーの!!」という合図で、
「「フラワーアレンジメント!!」」
クラス全員が唱えたのだが…………。
「ふりゃりゃ?! りょ、りょりぇちゅりゃみゃりゃりゃりゃい(呂律が回らない)」
私だけ、上手く唱えることができなかった。何度も試すが失敗の連続。それを見兼ねたミレス先生が、
「良い例ですね~。魔法は魔力が足りない状態で使うと、発音すらできなくなります。レイチさん。ちょっと良いですか?」
「は、はい…………」
先生が私の近くまで来て、額に手を添えた。一瞬何をするのだろうと思い、じっとする。
「やっぱり、思った通りだわ……。この授業が終わったら、学園長室に案内するので、わかりましたか?」
「…………わかりました。よろしくお願いします」
時が過ぎ授業が終わると、私は状況を読めぬまま、学園長室に向かった。持っていくように伝えられたのは、魔力瓶。どうしてなのかは、よく分からない。
長い廊下を歩き、4、5回角を曲がり。何度も同じ場面を見る。前方を歩くミレス先生は、迷いすら感じられないペースで進んでいた。
「レイチさん、あと少しで到着します。この学園、広すぎますよね? その気持ちはよくわかります。私も初めてここに就いた時は、右も左もわかりませんでしたから…………」
「そうですよね…………。ちょっと歩き疲れてしまいました。ですが、どうして学園長室なんですか?」
「それは着いてからのお楽しみです」
「は、はい…………」
ようやく見えてきた、学園長室の大きな扉。ミレス先生は数回扉を叩き、中に入った。
『皆さん、〈私立ロザリア花園魔法学園〉の試験合格、おめでとうございます。本日から皆さんは寮で生活することになります』
入学試験の合格発表が終わり、心を躍らせる仲間たち。
「レイチ!! やったね!! これからも一緒だよ!!」
「うん!! ミルキーもおめでとう!!」
「ありがとう!!」
私は親友のミルキーを抱きしめ、喜びを分かち合う。
『これから、入学時に必要なアイテムを配ります。まず、学園からの支給品として〈ロイヤルローズ・スティック〉を手元に…………』
ポンッ!! と出現した白銀の薔薇をあしらった杖。私の手には大きいと思ったが、手に取ると自分の手に合った大きさになる。
『そして、皆さん一律で40万レイズを渡します。皆さんはそのお金を使って、箒、教科書、魔力瓶、ローブを購入してください』
本当に魔法学園に通うんだ。楽しみで、胸いっぱいにワクワクが溢れ出る。
「はいっ!! 先生!! 質問です!!」
すぐ後ろの男子が手を挙げた。
『なんでしょうか?』
「購入後余ったレイズは、どうすればいいですか?」
『お答えします。余った分はは貯金するも良し、私用に使うのも良し。管理の仕方は、皆さんにお任せします』
へぇー、自由に使っていいんだぁー。お昼でも買おうかなぁー。
『では、これにて解散となります。一度寮に向かってから、行動を始めてください』
◇◇◇ヴィレス文具街◇◇◇
「レイチ、部屋も一緒だったね」
「うん!!」
私は、文具を買うために、ミルキーと文具街を歩いていた。指定された道具を一式揃え、今は寮への帰り道。
――グワァー!!
突然、得体の知れない魔物が現れ、私の箒を奪い取った。走っていく魔物を追いかけるが、間に合わない。
すると、
『フラワーアレンジメント!! アイシクル!! フォアアロー!!』
どこからともなく飛んでくる、氷の矢。それは魔物に命中し、箒を落として去っていく。
「大丈夫だったかい? マイプリンセス。君たちは…………。今度入ってくる新入生だね」
私の箒を持ってやってきたのは、この上ないくらいの美男子だった。
「はじめまして、僕はクレイ・アイシクル。ロザリア学園中等部次期2年生です」
「ここ、こちらこそ……。たた、助けて…………くだ……さり……。あ、あり…………。あり……がとう……ござい……ます」
「ちょっとレイチ、緊張しすぎ」
「だだ、だって…………」
クレイは、私が大好きなアイドルユニット〈凍結蓮華〉の人で、ファンクラブまで入っている。
そんな彼が今、私の目の前で箒を返しに来ているのだ。思わず顔を赤らめて、凍てつくように固まってしまう。
「普段通りでいいですよ。リラックスしてください。レイチさん。えーと、下の名前は…………」
「さ、サフランです。レイチ・サフラン」
「で、お隣は」
「ミルキー・ライ。今回は親友を助けてくださり、ありがとうございます」
なんで、ミルキーは緊張してないの!! も、もう、限界なんですけど!! 私は、緊張を通り越して意識を失った。
◇◇◇2ヶ月後 魔法学園女子寮◇◇◇
「レイチ!! 起きて!! 今日から学校だよ!!」
私の親友の声がする。
――バサッ!!
頭まですっぽり覆っていた布団を剥がされ、差し込む光に目を細める。しばらくして慣れてくると、頬を膨らませているミルキーの顔。
「レイチったら!! 今日から学校!! 忘れてたでしょ?」
夢の世界が気持ち良すぎて、すっかり忘れていた。私は急いで登校準備を終わらせて、朝食を食べることなく学校へ。
〈私立ロザリア花園魔法学園〉は、中高一貫校の魔法学校で、入学時に、精霊が付くと聞いていた。私はどんな精霊なのか楽しみにしていたのだが…………。
◇◇◇◇◇◇
「なんで、 私だけいないのぉー!!」
『以上で、 中等部入学式を閉式と致します』
教頭先生の言葉を聞き終えた私は、頭を抱えて愕然とする。他の人たちには、可愛いらしい精霊がふわふわと飛んでいるのに、なぜか私だけ精霊が付かなかった。
これから楽しい学校生活が始まるのに……。もしかして、元々の魔力が少ないから?
「そんなの、聞いてないよぉ…………」
余計にテンションが落ち込んでしまう。
「レイチ!! いつか精霊がやってくると思いますよ!!」
「う、うん…………。そうだといいんだけど…………」
明るく声を掛けてくれたミルキーには、桃色の精霊。 魔力量が最底辺の私にとって、とても羨ましかった。
◇◇◇その翌日◇◇◇
「もう何回言ったらわかるの!! いい加減起きなさぁーい!!」
朝に弱い私は、また親友に起こされる。
「ミルキー!! 今起きます!!」
昨日と同じように身支度を整え、通学路へ向かうが…………。
「ごめん!! 箒忘れちゃった!! ちょっと待ってて、取ってくる!!」
魔力最底辺のレイチと、忘れっぽいミルキーの学園生活が始まった。
◇◇◇中等部1年8組◇◇◇
「みなさ~ん!! おはようございま~す!! このクラスの担任になりましたー!! ミレス・ローズマリーで~す!! よろしくね~!!」
私の担任の先生が、軽快な口調と高いテンションで挨拶する。1クラス36人。全10クラスの360人だ。そして私のクラスは8組。
「ではではぁ~。出席確認しまーす。呼ばれたら、手を挙げてねぇ~!! それじゃあ。フェレス・トゥルペ」
ミレス先生の声にパステルイエローの少女が手を挙げる。続いて、
「ラズベリー・ローズ」
今度は桃色がかった赤髪の少女。
「メレナ・ブロッサム」
手を挙げたのは、桜色の髪の少年。そして、
「レイチ・サフラン」
名前を呼ばれて、私は手を挙げる。その後も全員の名前が呼ばれて、お待ちかねの、
「では、最初の授業に入りまーす!! みなさ~ん!! 〈ロイヤルローズ・スティック〉を出してくださーい!!」
魔法の授業だ。一斉に机の横に引っ掛けたカバンから、スティックを取り出す。
「みなさんも、知っていると思いますが、魔法を使用する時には必ず、『フラワーアレンジメント』と言う必要がありま~す!! では早速言ってみましょう!!」
ものすごいトントン拍子に進める、ミレス先生。短い説明なのに、覚えやすい。ミレス先生の「せーの!!」という合図で、
「「フラワーアレンジメント!!」」
クラス全員が唱えたのだが…………。
「ふりゃりゃ?! りょ、りょりぇちゅりゃみゃりゃりゃりゃい(呂律が回らない)」
私だけ、上手く唱えることができなかった。何度も試すが失敗の連続。それを見兼ねたミレス先生が、
「良い例ですね~。魔法は魔力が足りない状態で使うと、発音すらできなくなります。レイチさん。ちょっと良いですか?」
「は、はい…………」
先生が私の近くまで来て、額に手を添えた。一瞬何をするのだろうと思い、じっとする。
「やっぱり、思った通りだわ……。この授業が終わったら、学園長室に案内するので、わかりましたか?」
「…………わかりました。よろしくお願いします」
時が過ぎ授業が終わると、私は状況を読めぬまま、学園長室に向かった。持っていくように伝えられたのは、魔力瓶。どうしてなのかは、よく分からない。
長い廊下を歩き、4、5回角を曲がり。何度も同じ場面を見る。前方を歩くミレス先生は、迷いすら感じられないペースで進んでいた。
「レイチさん、あと少しで到着します。この学園、広すぎますよね? その気持ちはよくわかります。私も初めてここに就いた時は、右も左もわかりませんでしたから…………」
「そうですよね…………。ちょっと歩き疲れてしまいました。ですが、どうして学園長室なんですか?」
「それは着いてからのお楽しみです」
「は、はい…………」
ようやく見えてきた、学園長室の大きな扉。ミレス先生は数回扉を叩き、中に入った。
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