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兎と狼 第2部
第70話 ゲーム内の結人
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アリスが再び消える。俺はケイとメルの3人で、メルたちが昨日どのようなことをしていたのかを尋ねることにした。
「昨日は、お姉ちゃんとギルド案内所で遊んでました。カケルやケイがいる世界のおもちゃがたくさんあるので、それで遊びました」
「例えばどんなものだ?」
「えーと。とらんぷというカードで遊びました。色んな模様があって、絵合わせをしました」
「絵合わせ……。神経衰弱か……」
神経衰弱は誰でも出来る遊び方。そんなに難しくないので、メルたちも楽しめたのかもしれない。
それから、俺たちが昨日スターで見つけた裏世界の話題になった。裏世界では逃げることしかできなかったが、バレンさんやフォルテさんの活躍で無事全員帰還できた。
アイテムロスト0。ゲームオーバー0の完全勝利は、ある意味ズルをしたような感じだが良かった。
「へぇ……。裏世界ね……。ちょっとマップ見せて」
「いいけど、ほとんど埋まってないぞ?」
「大丈夫。カケルたちが受けたクエストの内容知ってるし」
「内容を知ってる? それはいったい?」
すると、遠くから亀のアバターをした人が歩いてきた。長身で、背中には宝石でできた甲羅。オーラもものすごく強く、存在感の塊。これはもしや……。
「やあやあ! ケイたちここにいたんだねぇ。会えて良かった」
「もしかして……」
「何かな?」
「結人さん?」
「うん。正解。そうだよ。まあここではGVって呼んでくれればいいから」
「GV……。言い難いから、俺もこっちでは黒白様って呼んでいいですか?」
「そこはお好きにどうぞ。まあ、黒白様と呼ぶなら優先権はケイになるけどねー」
じゃあ、Gさん? おじいさんになってしまうし、見方を変えればゴキブリだ。ここはVさんと呼ぶことにしよう。
「じゃ、じゃVさんで」
「了解。よろしくねカケルくん」
「よろしくお願いします」
どうやら本当にギルドには入っていないようだ。結人さん。いやVさんの左手甲は紋章が常に光っている。
どうしてそんなことが出来るのか分からないけど、Vさんは空間を開いては閉じてを繰り返している。
そして、アリスが帰ってきた。今度はパフェやカップケーキなどスイーツがたくさんあるおぼんごと持ってきた。
そこには抹茶チョコがたくさん乗っかった抹茶チョコタワーがあった。これにVさんはかなり目を光らせている。
もしかしてVさんって抹茶好き? するとVさんは……。
「僕も食べたいから、アリスちゃん場所教えて!」
「いいですよ。3000アニマと高いですが大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫。僕やケイには大金持ちがいるからね。無限に課金していいよって言われてるし」
そう言ってVさんとアリスは抹茶チョコタワーを買いに出掛けていった。ここに残るメンバーは再び俺とメル。ケイの3人になる。
「それでケイ、なんで地下ダンジョンを知っているんだ?」
「それはね」
◇◇◇その頃◇◇◇
「あんなところにアーサーラウンダーのリーダーとお仲間がいるわね……」
あたしは賑わう焼肉ブースで食事をしていた。学校が閉鎖になったので、アーサーラウンダーの観察をするためにログインしていた。
少しして、カケルたちがいるところにアリスと亀のアバターがやってくる。亀のアバターの人はGVと書かれているだけで、ギルド名が表記されていない。
ギルドには無所属ということが分かる。彼――彼女は大きな抹茶チョコタワーを持ってきていて、美味しそうに頬張っていた。
一口一口食べるごとに幸せそうな顔をする人物は、食べ終わるとこっちの方にやってくる。
「君。さっき僕のことずっと見てたよね?」
「み、見てたわ……。それのどこが悪いのよ……」
「いやぁ、悪いって訳ではないんだけどね」
この人は男性だったようだ。程よく低い声がとても聞き取りやすい。そして、とてもフレンドリーすぎる。
アーサーラウンダーと行動しているのに、アーサーラウンダーのメンバーではないのは謎だけど……。
「貴方。あたしのギ……」
「あ、ごめん。僕はね、ギルドには興味がないんだ。気持ちだけ受け取っておくよ」
「そう……なのね……」
「それに僕にはこれがあるからね」
そう言ってGVは左手甲を見せる。そこには白と黒が半分ずつある紋章が刻んであった。
そして、手の平を正面にしてかざすと、空間がぐにゃりとねじ曲がった。これがどういう現象なのか気になったが、GVは何事もなかったように入っていく。
行先はカケルたちがいるテーブルだった。いったい何が起こったのだろうか?
すると、もう一度ぐにゃりと空間が歪む。そこからGVが顔を出した。
「そうだ、裏世界の情報を10万アニマで提供してあげようか?」
「裏世界?」
「うん。このゲームの超高難易度エリアのことだよ。もし一緒に行くなら僕と勝負する?」
なんか分からない空間魔法を使う男性。そういえば、リアゼノン事件で空間魔法の使い手の男性が2人いたはず。
彼がそのうちの1人の可能性が高い。だが、その1人は無限の空間を操るディメンションマスター。1個しか作らない彼がディメンションマスターなわけが無い。
でも、裏世界の情報を購入すれば、相手の正体がわかるはず。あたしはその申し出を買うことにした。
「わかったわ。10万アニマを支払うから詳しく教えてちょうだい」
「昨日は、お姉ちゃんとギルド案内所で遊んでました。カケルやケイがいる世界のおもちゃがたくさんあるので、それで遊びました」
「例えばどんなものだ?」
「えーと。とらんぷというカードで遊びました。色んな模様があって、絵合わせをしました」
「絵合わせ……。神経衰弱か……」
神経衰弱は誰でも出来る遊び方。そんなに難しくないので、メルたちも楽しめたのかもしれない。
それから、俺たちが昨日スターで見つけた裏世界の話題になった。裏世界では逃げることしかできなかったが、バレンさんやフォルテさんの活躍で無事全員帰還できた。
アイテムロスト0。ゲームオーバー0の完全勝利は、ある意味ズルをしたような感じだが良かった。
「へぇ……。裏世界ね……。ちょっとマップ見せて」
「いいけど、ほとんど埋まってないぞ?」
「大丈夫。カケルたちが受けたクエストの内容知ってるし」
「内容を知ってる? それはいったい?」
すると、遠くから亀のアバターをした人が歩いてきた。長身で、背中には宝石でできた甲羅。オーラもものすごく強く、存在感の塊。これはもしや……。
「やあやあ! ケイたちここにいたんだねぇ。会えて良かった」
「もしかして……」
「何かな?」
「結人さん?」
「うん。正解。そうだよ。まあここではGVって呼んでくれればいいから」
「GV……。言い難いから、俺もこっちでは黒白様って呼んでいいですか?」
「そこはお好きにどうぞ。まあ、黒白様と呼ぶなら優先権はケイになるけどねー」
じゃあ、Gさん? おじいさんになってしまうし、見方を変えればゴキブリだ。ここはVさんと呼ぶことにしよう。
「じゃ、じゃVさんで」
「了解。よろしくねカケルくん」
「よろしくお願いします」
どうやら本当にギルドには入っていないようだ。結人さん。いやVさんの左手甲は紋章が常に光っている。
どうしてそんなことが出来るのか分からないけど、Vさんは空間を開いては閉じてを繰り返している。
そして、アリスが帰ってきた。今度はパフェやカップケーキなどスイーツがたくさんあるおぼんごと持ってきた。
そこには抹茶チョコがたくさん乗っかった抹茶チョコタワーがあった。これにVさんはかなり目を光らせている。
もしかしてVさんって抹茶好き? するとVさんは……。
「僕も食べたいから、アリスちゃん場所教えて!」
「いいですよ。3000アニマと高いですが大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫。僕やケイには大金持ちがいるからね。無限に課金していいよって言われてるし」
そう言ってVさんとアリスは抹茶チョコタワーを買いに出掛けていった。ここに残るメンバーは再び俺とメル。ケイの3人になる。
「それでケイ、なんで地下ダンジョンを知っているんだ?」
「それはね」
◇◇◇その頃◇◇◇
「あんなところにアーサーラウンダーのリーダーとお仲間がいるわね……」
あたしは賑わう焼肉ブースで食事をしていた。学校が閉鎖になったので、アーサーラウンダーの観察をするためにログインしていた。
少しして、カケルたちがいるところにアリスと亀のアバターがやってくる。亀のアバターの人はGVと書かれているだけで、ギルド名が表記されていない。
ギルドには無所属ということが分かる。彼――彼女は大きな抹茶チョコタワーを持ってきていて、美味しそうに頬張っていた。
一口一口食べるごとに幸せそうな顔をする人物は、食べ終わるとこっちの方にやってくる。
「君。さっき僕のことずっと見てたよね?」
「み、見てたわ……。それのどこが悪いのよ……」
「いやぁ、悪いって訳ではないんだけどね」
この人は男性だったようだ。程よく低い声がとても聞き取りやすい。そして、とてもフレンドリーすぎる。
アーサーラウンダーと行動しているのに、アーサーラウンダーのメンバーではないのは謎だけど……。
「貴方。あたしのギ……」
「あ、ごめん。僕はね、ギルドには興味がないんだ。気持ちだけ受け取っておくよ」
「そう……なのね……」
「それに僕にはこれがあるからね」
そう言ってGVは左手甲を見せる。そこには白と黒が半分ずつある紋章が刻んであった。
そして、手の平を正面にしてかざすと、空間がぐにゃりとねじ曲がった。これがどういう現象なのか気になったが、GVは何事もなかったように入っていく。
行先はカケルたちがいるテーブルだった。いったい何が起こったのだろうか?
すると、もう一度ぐにゃりと空間が歪む。そこからGVが顔を出した。
「そうだ、裏世界の情報を10万アニマで提供してあげようか?」
「裏世界?」
「うん。このゲームの超高難易度エリアのことだよ。もし一緒に行くなら僕と勝負する?」
なんか分からない空間魔法を使う男性。そういえば、リアゼノン事件で空間魔法の使い手の男性が2人いたはず。
彼がそのうちの1人の可能性が高い。だが、その1人は無限の空間を操るディメンションマスター。1個しか作らない彼がディメンションマスターなわけが無い。
でも、裏世界の情報を購入すれば、相手の正体がわかるはず。あたしはその申し出を買うことにした。
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