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兎と狼 第2部
第58話 カケルの作戦
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ヤマトに促され俺は説明の準備をする。自分のマップを開くとまず最初に出てきたのは裏世界エリアのマップ。
画面の左上には表世界の画面に切り替えるボタンが追加されている。俺は画面を仲間にも見えるようにオープンウィンドウに切り替える。
みんなの視線が俺からマップに移動する。ここで確認しておきたいのが表世界と裏世界の共通点となりそうなところ。
それは、表世界の街の中心にあった必ずそこにあるというサークルだった。俺の見間違いじゃないかを確認するため、メルに尋ねる。
「なあメル」
「なんですか? カケルさん」
「んーと。メルが俺を案内所に案内する時。スターの中心を横切っただろ?」
「はい、横切りましたね」
「そこの中心になにかあったの覚えてるか?」
俺が彼女に質問すると、彼女は首を傾げて思い出そうとする仕草をした。アリスもそうだけど、メルもめちゃくちゃ可愛い。
数秒後答えが返ってくる。
「中央広場の円形の床ですか?」
「そう。きっとそこがここと表世界を繋げるポータルなんじゃないか? って考えてる」
「「ぽーたる?」」
アリスとメルの発言が重なる。どうやらポータルという言葉を知らないらしい。俺は彼女らに移動装置と説明すると、すぐに理解してくれた。
表世界に出るにはこのポータルを起動させないといけない。だから、火力重視のヤマトに手伝ってもらう必要があった。
「作戦は、俺とヤマトの2人で中心部を目指す。バレンさんとフォルテさんはメルとアリスを守るの重視で」
「カケル。それなら心配ご無用ですぞ」
「? ヤマトそれってどういうこと?」
「我らBチームの方でボスドロップした宝箱に"NPC保護ボール"ってアイテムが入ってましてな。このアイテムの中にアリス殿とメル殿を入れるというわけで……」
「す、ストップストップ!」
なんでこんなにも便利なアイテムがあるんだよ。俺は一瞬頭を抱えた。NPC保護ボールはかなりレア度高そうだけど。
よく見たらお父さんが昔から持っている、かのアニメの"○○○○○ボール"によく似た見た目だった。
俺が生まれた頃にはそのアニメは終わっていたが、スマホの配信で見ていたから使い方はわかる。
魔物を入れるのではなく、NPCを入れるボール。これがあればアリスたちを安全に移動できる。うん作戦変更。
「じゃあこうしよう。ヤマト。その保護ボールを一つ貰っていいか?」
「もちろんですとも」
「ありがとう。じゃ、アリスは俺の保護ボールに、メルはヤマトが様子を見てくれ。できるだけ早く2人を表世界に運ぶ。これがミッションだ」
「わかりました」
「了解です」
そうして俺とヤマトはお互い保護ボールを起動させ、アリスとメルを入れる。これで常に安全な状態を維持できる。
ただ、この状態でゲームオーバーしたらどうなるのか? それが疑問だった。ここは長くプレイしているであろう、フォルテさんとバレンさんに聞く。
すると2人は揃ってストレージアイテムのロストはしないと答えた。つまり、アリスとメルが入ってる保護ボールをオブジェクト化させてなければロストしない。
2人にとってなんて居心地がいいのか。心からほっとした。そろそろ作戦開始といこう。
「では、本当の本題に入る。さっき言った通り、俺とヤマトの2人でこのフィールドの中心部を目指す。バレンさんとフォルテさんは俺とヤマトが安全に向かえるように魔物の掃討をお願いしたい」
「なんでザコの言うことを」
まだ認め切れていないバレンさん。さっきから俺の指示への好き嫌いが激しい。それが彼なのだろうけど、ケイの場合はしっかり理解して正しく行動できているのだろうか?
でも、バレンさんもきっと俺より歳は上。そう考えれば、俺の発言は全部わがまま程度にしか聞こえないのかもしれない。
「バレンさん。ケイの時はどう指示してるのか教えて貰ってもいいですか?」
「ど、どうって、フツーに決まってるだろ……」
「その"フツー"がなにか知りたいんだけど……」
シラケた顔でそっぽを向くバレンさん。俺はどう反応すればいいのかわからなくなった。
と、ここでフォルテさんが割り込み発言をする。
「酒ダチが言ってるフツーってのはだな。まあ、アイサインってとこかな? 基本は通信魔法で極秘任務的な感じだからさ」
「通信魔法ってそんなに便利なんですか?」
「便利便利。超便利だぜ。ま、普段はアイサインだけで意思疎通して行動してるから、通信魔法は遠距離で会話するか、ケイが誤って紋章を発動した時くらいだが……」
「そうなんですね……」
なかなか始まらない作戦。それよりもなんだか気配を感じ始めている人がいた。フォルテさんが話してる時、彼が短いスパンでキョロキョロ周囲を見ていたことが気になった。
きっと何かが近づいて来ている。ここに留まってたらポータルを起動させることができずに終わってしまう。
俺はマップを見ながら中心部への一本道を決める。障害物はあるだろうけど、直線距離で考えた方が楽だ。
俺は指を指してみんなに今回の最後の指示を出す。
「この位置はポータルから見て北の方。つまり南に進めばポータルがあるはず。だから、俺が指さす方向に進めば着くと思う」
「「ラジャー!」」
「作戦開始!!」
画面の左上には表世界の画面に切り替えるボタンが追加されている。俺は画面を仲間にも見えるようにオープンウィンドウに切り替える。
みんなの視線が俺からマップに移動する。ここで確認しておきたいのが表世界と裏世界の共通点となりそうなところ。
それは、表世界の街の中心にあった必ずそこにあるというサークルだった。俺の見間違いじゃないかを確認するため、メルに尋ねる。
「なあメル」
「なんですか? カケルさん」
「んーと。メルが俺を案内所に案内する時。スターの中心を横切っただろ?」
「はい、横切りましたね」
「そこの中心になにかあったの覚えてるか?」
俺が彼女に質問すると、彼女は首を傾げて思い出そうとする仕草をした。アリスもそうだけど、メルもめちゃくちゃ可愛い。
数秒後答えが返ってくる。
「中央広場の円形の床ですか?」
「そう。きっとそこがここと表世界を繋げるポータルなんじゃないか? って考えてる」
「「ぽーたる?」」
アリスとメルの発言が重なる。どうやらポータルという言葉を知らないらしい。俺は彼女らに移動装置と説明すると、すぐに理解してくれた。
表世界に出るにはこのポータルを起動させないといけない。だから、火力重視のヤマトに手伝ってもらう必要があった。
「作戦は、俺とヤマトの2人で中心部を目指す。バレンさんとフォルテさんはメルとアリスを守るの重視で」
「カケル。それなら心配ご無用ですぞ」
「? ヤマトそれってどういうこと?」
「我らBチームの方でボスドロップした宝箱に"NPC保護ボール"ってアイテムが入ってましてな。このアイテムの中にアリス殿とメル殿を入れるというわけで……」
「す、ストップストップ!」
なんでこんなにも便利なアイテムがあるんだよ。俺は一瞬頭を抱えた。NPC保護ボールはかなりレア度高そうだけど。
よく見たらお父さんが昔から持っている、かのアニメの"○○○○○ボール"によく似た見た目だった。
俺が生まれた頃にはそのアニメは終わっていたが、スマホの配信で見ていたから使い方はわかる。
魔物を入れるのではなく、NPCを入れるボール。これがあればアリスたちを安全に移動できる。うん作戦変更。
「じゃあこうしよう。ヤマト。その保護ボールを一つ貰っていいか?」
「もちろんですとも」
「ありがとう。じゃ、アリスは俺の保護ボールに、メルはヤマトが様子を見てくれ。できるだけ早く2人を表世界に運ぶ。これがミッションだ」
「わかりました」
「了解です」
そうして俺とヤマトはお互い保護ボールを起動させ、アリスとメルを入れる。これで常に安全な状態を維持できる。
ただ、この状態でゲームオーバーしたらどうなるのか? それが疑問だった。ここは長くプレイしているであろう、フォルテさんとバレンさんに聞く。
すると2人は揃ってストレージアイテムのロストはしないと答えた。つまり、アリスとメルが入ってる保護ボールをオブジェクト化させてなければロストしない。
2人にとってなんて居心地がいいのか。心からほっとした。そろそろ作戦開始といこう。
「では、本当の本題に入る。さっき言った通り、俺とヤマトの2人でこのフィールドの中心部を目指す。バレンさんとフォルテさんは俺とヤマトが安全に向かえるように魔物の掃討をお願いしたい」
「なんでザコの言うことを」
まだ認め切れていないバレンさん。さっきから俺の指示への好き嫌いが激しい。それが彼なのだろうけど、ケイの場合はしっかり理解して正しく行動できているのだろうか?
でも、バレンさんもきっと俺より歳は上。そう考えれば、俺の発言は全部わがまま程度にしか聞こえないのかもしれない。
「バレンさん。ケイの時はどう指示してるのか教えて貰ってもいいですか?」
「ど、どうって、フツーに決まってるだろ……」
「その"フツー"がなにか知りたいんだけど……」
シラケた顔でそっぽを向くバレンさん。俺はどう反応すればいいのかわからなくなった。
と、ここでフォルテさんが割り込み発言をする。
「酒ダチが言ってるフツーってのはだな。まあ、アイサインってとこかな? 基本は通信魔法で極秘任務的な感じだからさ」
「通信魔法ってそんなに便利なんですか?」
「便利便利。超便利だぜ。ま、普段はアイサインだけで意思疎通して行動してるから、通信魔法は遠距離で会話するか、ケイが誤って紋章を発動した時くらいだが……」
「そうなんですね……」
なかなか始まらない作戦。それよりもなんだか気配を感じ始めている人がいた。フォルテさんが話してる時、彼が短いスパンでキョロキョロ周囲を見ていたことが気になった。
きっと何かが近づいて来ている。ここに留まってたらポータルを起動させることができずに終わってしまう。
俺はマップを見ながら中心部への一本道を決める。障害物はあるだろうけど、直線距離で考えた方が楽だ。
俺は指を指してみんなに今回の最後の指示を出す。
「この位置はポータルから見て北の方。つまり南に進めばポータルがあるはず。だから、俺が指さす方向に進めば着くと思う」
「「ラジャー!」」
「作戦開始!!」
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