30 / 123
兎と狼 第1部
第30話 先回り作戦
しおりを挟む
「ご、ごめんって、急にどうしたんだアリス」
「だって、わたし。みんなに……」
きっと、アリスは変に目立って迷惑をかけたことに落ち込んでいるのだろう。俺は彼女の小さな背中をさする。グスンと鼻を鳴らして泣く姿は、人と同じ。しっかりした感情を持っているようだ。
小刻みに震える身体。ケイもフォルテさんも一緒になってアリスを慰める。しかし、バレンさんはそっぽを向いて、興味なさげな表情をした。ヤマトは逆に見守る一方。まとまりがあるとしたら一部の人だけだ。
俺もあまり協調性を求めるタイプじゃないが、アリスを放っておけない。そう思うようになってから過保護になりつつある。
ケイも同じようで彼女のことを注視するようになっているのかもしれない。だけど、今になっても俺と彼女を認めていないバレンさんがいる以上、安泰のギルドにはならなそうだ。
「アリスは悪くないよ。僕たちが見つけるのが遅かった。もっと早くわかっていればこうなならなかったと僕は思う」
「そうだ、自分を責める必要はない。だけど……」
「カケル?」
「実はというとケイ。昨日俺がアリスに案内所の外に出ないでくれって言ったんだ。もしかしたらそれを破ったことに反省しているのかもしれない」
俺の言葉に納得したらしいケイは少し考え込む。俺だってアリスを自由に行動させたい。だけど、もともとアリスは敵キャラ的な扱いを受けてきた裏キャラ。他プレイヤーから狙われる身だ。
リーダーのケイはどう考えるのか? それが今後にかかっている。
「なるほどね……。僕もカケルと同意見かな? やっぱり野放しにして危険にさらすことはできない」
「そうだよな」
「けど……」
「ん?」
ケイが言葉に詰まる。かなり難儀しているのだろう。リーダーだからこそ、メンバーの自由をできるだけ尊重したい。でも、ホワイトゴブリンのアリスが一人で歩くのは不自然すぎる。今日みたいに注目されて、逃げ場を失う可能性もある。
「よし、こうなったらみんなで昆虫狩りでもしよう」
「わたし賛成!!」
昆虫狩りと聞いてケロッと泣き止んだアリス。まだまだ子供というか、泣き止むトリガーが昆虫狩りというのがちょっと変わっている。やっぱり身体を動かすことが好きなのかもしれない。
でもゲームをプレイをしている身としては、フルダイブゲームは運動にはならない。そうケイが言っていた。非常に当てはまってることなので、何も言えない。
そんな俺たちは案内所を出るとアリスを隠すような配置で歩きアンデスの外に出た。昨日もそうだったが、昆虫は何者かに狩られていて羽音すら聞こえてこない。
これではまたアリスの機嫌が悪くなってしまう。どうにかして昆虫を見つけてバトルに持ち込まないと。なのに、肝心な彼女は何かを悟ったそように止まった。
「カケル。本当の目的あるんでしょ?」
「それってどういう意味?」
「わたしをアンデスの外に出した理由」
みんなの視線が俺の方に集まる。俺が昆虫狩りしてリフレッシュしようと言ったのは事実。だけど、見つからないのも原因があるんだとしたら、ロゼッタヴィレッジの仕業かもしれない。
「本当のことを言う。リーダーではない俺が仕切るのはちょっと違うだろうけど、今から第3の街スターに行こうと思う」
「カケルそれって」
ケイが俺の発言に疑問を持った。メンバーの身勝手な行動は俺以外にも出てくると思うが、これは戦略としての提案。
「ロゼッタヴィレッジがスターの拠点建造物を占領する前に先回りして、全部を俺たちの拠点にする。そして、その拠点をロゼッタヴィレッジ以外のギルドに貸すんだ」
「なるほど……」
「ケイ、この案どうだ?」
「たまには僕もメンバーに従ってみようかな? アンデスに来たばかりだけどいつでも戻ってこれるし」
スターのある場所は攻略サイトで調査済み。ケイにはソルダムのマップを提供してくれた。今度はそのお返しがしたい。
「じゃあ、ここは俺とアリスの2人だけで行かせてくれ。スターに着いたらマップを一斉送信する」
「りょう――」
「いやダメだ」
ケイの了解を遮ったバレンさん。不満でもあるのだろう、空気がピンと張り詰める。
「アル中。こいつらの監視を頼む」
「な、なんでオレなんだよ……」
突然の指名にあたふたするフォルテさん。でも、すぐに意味を理解したのかコクンとうなずいた。残るメンバーはケイ・ヤマト・バレンさん。スターに行くメンバーは俺・アリス・フォルテさん。
これで決まった。フォルテさんは早速ビーストモードを発動しヒグマの姿になる。アリスはロデオでもするかのように、フォルテさんの背中に跨った。
俺はビーストモードよりも人型の方が移動が早いので――違う意味でビーストモードが楽だけど――このままの状態でスターを目指す。
「じゃあ、進展あったらすぐ僕に連絡して」
「了解」
こうして解散となった。
「だって、わたし。みんなに……」
きっと、アリスは変に目立って迷惑をかけたことに落ち込んでいるのだろう。俺は彼女の小さな背中をさする。グスンと鼻を鳴らして泣く姿は、人と同じ。しっかりした感情を持っているようだ。
小刻みに震える身体。ケイもフォルテさんも一緒になってアリスを慰める。しかし、バレンさんはそっぽを向いて、興味なさげな表情をした。ヤマトは逆に見守る一方。まとまりがあるとしたら一部の人だけだ。
俺もあまり協調性を求めるタイプじゃないが、アリスを放っておけない。そう思うようになってから過保護になりつつある。
ケイも同じようで彼女のことを注視するようになっているのかもしれない。だけど、今になっても俺と彼女を認めていないバレンさんがいる以上、安泰のギルドにはならなそうだ。
「アリスは悪くないよ。僕たちが見つけるのが遅かった。もっと早くわかっていればこうなならなかったと僕は思う」
「そうだ、自分を責める必要はない。だけど……」
「カケル?」
「実はというとケイ。昨日俺がアリスに案内所の外に出ないでくれって言ったんだ。もしかしたらそれを破ったことに反省しているのかもしれない」
俺の言葉に納得したらしいケイは少し考え込む。俺だってアリスを自由に行動させたい。だけど、もともとアリスは敵キャラ的な扱いを受けてきた裏キャラ。他プレイヤーから狙われる身だ。
リーダーのケイはどう考えるのか? それが今後にかかっている。
「なるほどね……。僕もカケルと同意見かな? やっぱり野放しにして危険にさらすことはできない」
「そうだよな」
「けど……」
「ん?」
ケイが言葉に詰まる。かなり難儀しているのだろう。リーダーだからこそ、メンバーの自由をできるだけ尊重したい。でも、ホワイトゴブリンのアリスが一人で歩くのは不自然すぎる。今日みたいに注目されて、逃げ場を失う可能性もある。
「よし、こうなったらみんなで昆虫狩りでもしよう」
「わたし賛成!!」
昆虫狩りと聞いてケロッと泣き止んだアリス。まだまだ子供というか、泣き止むトリガーが昆虫狩りというのがちょっと変わっている。やっぱり身体を動かすことが好きなのかもしれない。
でもゲームをプレイをしている身としては、フルダイブゲームは運動にはならない。そうケイが言っていた。非常に当てはまってることなので、何も言えない。
そんな俺たちは案内所を出るとアリスを隠すような配置で歩きアンデスの外に出た。昨日もそうだったが、昆虫は何者かに狩られていて羽音すら聞こえてこない。
これではまたアリスの機嫌が悪くなってしまう。どうにかして昆虫を見つけてバトルに持ち込まないと。なのに、肝心な彼女は何かを悟ったそように止まった。
「カケル。本当の目的あるんでしょ?」
「それってどういう意味?」
「わたしをアンデスの外に出した理由」
みんなの視線が俺の方に集まる。俺が昆虫狩りしてリフレッシュしようと言ったのは事実。だけど、見つからないのも原因があるんだとしたら、ロゼッタヴィレッジの仕業かもしれない。
「本当のことを言う。リーダーではない俺が仕切るのはちょっと違うだろうけど、今から第3の街スターに行こうと思う」
「カケルそれって」
ケイが俺の発言に疑問を持った。メンバーの身勝手な行動は俺以外にも出てくると思うが、これは戦略としての提案。
「ロゼッタヴィレッジがスターの拠点建造物を占領する前に先回りして、全部を俺たちの拠点にする。そして、その拠点をロゼッタヴィレッジ以外のギルドに貸すんだ」
「なるほど……」
「ケイ、この案どうだ?」
「たまには僕もメンバーに従ってみようかな? アンデスに来たばかりだけどいつでも戻ってこれるし」
スターのある場所は攻略サイトで調査済み。ケイにはソルダムのマップを提供してくれた。今度はそのお返しがしたい。
「じゃあ、ここは俺とアリスの2人だけで行かせてくれ。スターに着いたらマップを一斉送信する」
「りょう――」
「いやダメだ」
ケイの了解を遮ったバレンさん。不満でもあるのだろう、空気がピンと張り詰める。
「アル中。こいつらの監視を頼む」
「な、なんでオレなんだよ……」
突然の指名にあたふたするフォルテさん。でも、すぐに意味を理解したのかコクンとうなずいた。残るメンバーはケイ・ヤマト・バレンさん。スターに行くメンバーは俺・アリス・フォルテさん。
これで決まった。フォルテさんは早速ビーストモードを発動しヒグマの姿になる。アリスはロデオでもするかのように、フォルテさんの背中に跨った。
俺はビーストモードよりも人型の方が移動が早いので――違う意味でビーストモードが楽だけど――このままの状態でスターを目指す。
「じゃあ、進展あったらすぐ僕に連絡して」
「了解」
こうして解散となった。
0
あなたにおすすめの小説
異世界宇宙SFの建艦記 ――最強の宇宙戦艦を建造せよ――
黒鯛の刺身♪
SF
主人公の飯富晴信(16)はしがない高校生。
ある朝目覚めると、そこは見たことのない工場の中だった。
この工場は宇宙船を作るための設備であり、材料さえあれば巨大な宇宙船を造ることもできた。
未知の世界を開拓しながら、主人公は現地の生物達とも交流。
そして時には、戦乱にも巻き込まれ……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
この世界、貞操が逆で男女比1対100!?〜文哉の転生学園性活〜
妄想屋さん
SF
気がつけば、そこは“男女の常識”がひっくり返った世界だった。
男は極端に希少で守られる存在、女は戦い、競い、恋を挑む時代。
現代日本で命を落とした青年・文哉は、最先端の学園都市《ノア・クロス》に転生する。
そこでは「バイオギア」と呼ばれる強化装甲を纏う少女たちが、日々鍛錬に明け暮れていた。
しかし、ただの転生では終わらなかった――
彼は“男でありながらバイオギアに適合する”という奇跡的な特性を持っていたのだ。
無自覚に女子の心をかき乱し、甘さと葛藤の狭間で揺れる日々。
護衛科トップの快活系ヒロイン・桜葉梨羽、内向的で絵を描く少女・柊真帆、
毒気を纏った闇の装甲をまとう守護者・海里しずく……
個性的な少女たちとのイチャイチャ・バトル・三角関係は、次第に“恋と戦い”の渦へと深まっていく。
――これは、“守られるはずだった少年”が、“守る覚悟”を知るまでの物語。
そして、少女たちは彼の隣で、“本当の強さ”と“愛し方”を知ってゆく。
「誰かのために戦うって、こういうことなんだな……」
恋も戦場も、手加減なんてしてられない。
逆転世界ラブコメ×ハーレム×SFバトル群像劇、開幕。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました
まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。
その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。
理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。
……笑えない。
人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。
だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!?
気づけば――
記憶喪失の魔王の娘
迫害された獣人一家
古代魔法を使うエルフの美少女
天然ドジな女神
理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ
などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕!
ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに……
魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。
「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」
これは、追放された“地味なおっさん”が、
異種族たちとスローライフしながら、
世界を救ってしまう(予定)のお話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる