24 / 73
兎と狼
第24話 紋章の噂
しおりを挟む
◇◇◇◇◇◇
『ねぇねぇ。知ってる?』
『何?』
『ビースト・オンラインってゲームで、変な模様を手の甲につけたプレイヤーがいるんだって』
『変な模様?』
『うん。坂東先輩が言ってた』
『私もその人に会ってみたい』
(作戦は上々ね……。これならギルド狩りも楽しくなる)
大和大樹を利用した紋章の噂拡散作戦は失敗した。そこであたしは作戦を変更し、全教室分のビースト新聞を作成。各クラスに飾ってもらった。
そのおかげか、アーサーラウンダーの頭領ケイの情報を、たくさん広めることができた。
こうすれば、アーサーラウンダーの価値は上がるが、あたしのギルド"ロゼッタヴィレッジ"のメンバーも増やせる。
ゲーム恐怖症の人を増やして、かの異次元女性プロゲーマーが築いてきた世界を壊す。あたしはゲームが好きでやってる訳ではない。
本当のことを言えばゲームは嫌いだ。だから、この世界からゲームを消す。いつかの誰かさんが達成できなかったという、それを成功させる。
今、そのプロゲーマーはこの世界にはいないらしい。噂によれば、年間10万タイトルを遊ぶ人との事。
少し前に引退したようだけど、彼女の処理能力は誰も真似できないと、樋上中央病院という東京にある病院の研究者が論文で話していた。
それは、大手ゲーム会社アルファセントリアの初代取締役社長・寺山悟が手掛けた、スーパーコンピュータを負かすほどだったという。
しかし、あたしのような通常の人間の脳内処理能力では不可能。絶対ありえないことだと思っていた。たしかに人の脳は一日に何万もの些細な思考を繰り返している。
だけど、それをゲーム一つに絞るのはゲームを仕事としている。かつ、かなりのゲーム厨でないとできない。
けれども、彼女は趣味程度で遊んでたそうで、1ゲームのクリアタイムはタイムアタックで出禁になるほど早いらしい。
『坂東先輩!! 例の変な模様をつけたプレイヤーの名前ってなんて名前なんですか?』
「ケイだったはずよ。ただ気をつけた方がいいわ。あの強さはキチガイすぎるもの」
『ありがとうございますっ! 後でビースト・オンライン買います!』
(これで大丈夫。さて、プレイヤー狩りの始まりよ……)
◇◇◇◇◇◇
「翔斗。なんか学校内ざわついてないか?」
「そうだな……。ん?」
俺は教室に入った時違和感を感じた。教室の壁に、見た事のない張り紙が貼ってある。そこには、"ビースト・オンラインに、謎の模様をつけた人物現る"と書かれていた。
そして、ケイが昨日ヤサイダーに向けて言った言葉の一部始終まで掲載されている。
「これ、団長のことだよな」
「ああ。一体誰がこんなことを……。きっと作成者の名前が書かれているはず」
俺と大樹は張り紙をしっかり読む。そこには、坂東美玲先輩の名前が。ヤサイダー=坂東美玲は大当たりだったようだ。
だけど、これは大事件だ。一ノ瀬先輩はゲーム内のアリスのことをスッキリさっぱり忘れてたので良いとして、坂東先輩はまだアリスを狙っている。
「大樹。パソコンはノーパソか?」
「ノーパソだが……」
「んじゃ、それぞれでダイブギアとノーパソを持って行こう」
「団長の家でログインするってことか。わかった、乗ってやる」
「頼む。顧問の先生には俺から部活休むってこと伝えとくから」
「助かるよ、翔斗」
「まあな」
俺は顧問の先生のところへ行く。顧問の齋藤先生は、過去にオリンピックに出たことがあり、引退後俺の学校の教師になった。
男女問わず厳しく優しい先生で、下級の入部率を押し上げる火付け役の一人。それもあってか、陸上部の生徒は60人から80人はいる。
職員室に着くと、扉をコンコンと2回ノックして開く。
「2年12組の飛鳥翔斗です。齋藤先生はいらっしゃいますか?」
「はい。いますよ」
「ありがとうございます」
俺は職員室の中に入って齋藤先生を探す。齋藤先生は最中陸上部部員のレポートを書いてたところだった。
「齋藤先生。今大丈夫ですか?」
「はい。大丈夫ですが……」
「今日大和大樹と俺は部活休んでもいいでしょうか?」
「いいですが……。なにか理由はありますか?」
「それは……」
どう説明しようか悩む。俺と大樹はゲームで休むことになってる。だが、それは正当な理由にはならない。
俺は考える。できるだけ最もらしいことを。しかし、齋藤先生は直感がすごいせいで……。
「もしかして、ゲーム内の友達間なにかあったんですか?」
と言ってきた。
「はい」
そう答えるしかない俺。
「かなり表情に強ばりと緊張が見えますね。わかりました。仲間を大事することはとても必要なことです。ですが、ライバルも必ずいます。飛鳥さんと大和さんのように。友達以上の仲間を大切にしてあげてください」
「ありがとうございます。齋藤先生」
(よし。大樹に報告だ……)
『ねぇねぇ。知ってる?』
『何?』
『ビースト・オンラインってゲームで、変な模様を手の甲につけたプレイヤーがいるんだって』
『変な模様?』
『うん。坂東先輩が言ってた』
『私もその人に会ってみたい』
(作戦は上々ね……。これならギルド狩りも楽しくなる)
大和大樹を利用した紋章の噂拡散作戦は失敗した。そこであたしは作戦を変更し、全教室分のビースト新聞を作成。各クラスに飾ってもらった。
そのおかげか、アーサーラウンダーの頭領ケイの情報を、たくさん広めることができた。
こうすれば、アーサーラウンダーの価値は上がるが、あたしのギルド"ロゼッタヴィレッジ"のメンバーも増やせる。
ゲーム恐怖症の人を増やして、かの異次元女性プロゲーマーが築いてきた世界を壊す。あたしはゲームが好きでやってる訳ではない。
本当のことを言えばゲームは嫌いだ。だから、この世界からゲームを消す。いつかの誰かさんが達成できなかったという、それを成功させる。
今、そのプロゲーマーはこの世界にはいないらしい。噂によれば、年間10万タイトルを遊ぶ人との事。
少し前に引退したようだけど、彼女の処理能力は誰も真似できないと、樋上中央病院という東京にある病院の研究者が論文で話していた。
それは、大手ゲーム会社アルファセントリアの初代取締役社長・寺山悟が手掛けた、スーパーコンピュータを負かすほどだったという。
しかし、あたしのような通常の人間の脳内処理能力では不可能。絶対ありえないことだと思っていた。たしかに人の脳は一日に何万もの些細な思考を繰り返している。
だけど、それをゲーム一つに絞るのはゲームを仕事としている。かつ、かなりのゲーム厨でないとできない。
けれども、彼女は趣味程度で遊んでたそうで、1ゲームのクリアタイムはタイムアタックで出禁になるほど早いらしい。
『坂東先輩!! 例の変な模様をつけたプレイヤーの名前ってなんて名前なんですか?』
「ケイだったはずよ。ただ気をつけた方がいいわ。あの強さはキチガイすぎるもの」
『ありがとうございますっ! 後でビースト・オンライン買います!』
(これで大丈夫。さて、プレイヤー狩りの始まりよ……)
◇◇◇◇◇◇
「翔斗。なんか学校内ざわついてないか?」
「そうだな……。ん?」
俺は教室に入った時違和感を感じた。教室の壁に、見た事のない張り紙が貼ってある。そこには、"ビースト・オンラインに、謎の模様をつけた人物現る"と書かれていた。
そして、ケイが昨日ヤサイダーに向けて言った言葉の一部始終まで掲載されている。
「これ、団長のことだよな」
「ああ。一体誰がこんなことを……。きっと作成者の名前が書かれているはず」
俺と大樹は張り紙をしっかり読む。そこには、坂東美玲先輩の名前が。ヤサイダー=坂東美玲は大当たりだったようだ。
だけど、これは大事件だ。一ノ瀬先輩はゲーム内のアリスのことをスッキリさっぱり忘れてたので良いとして、坂東先輩はまだアリスを狙っている。
「大樹。パソコンはノーパソか?」
「ノーパソだが……」
「んじゃ、それぞれでダイブギアとノーパソを持って行こう」
「団長の家でログインするってことか。わかった、乗ってやる」
「頼む。顧問の先生には俺から部活休むってこと伝えとくから」
「助かるよ、翔斗」
「まあな」
俺は顧問の先生のところへ行く。顧問の齋藤先生は、過去にオリンピックに出たことがあり、引退後俺の学校の教師になった。
男女問わず厳しく優しい先生で、下級の入部率を押し上げる火付け役の一人。それもあってか、陸上部の生徒は60人から80人はいる。
職員室に着くと、扉をコンコンと2回ノックして開く。
「2年12組の飛鳥翔斗です。齋藤先生はいらっしゃいますか?」
「はい。いますよ」
「ありがとうございます」
俺は職員室の中に入って齋藤先生を探す。齋藤先生は最中陸上部部員のレポートを書いてたところだった。
「齋藤先生。今大丈夫ですか?」
「はい。大丈夫ですが……」
「今日大和大樹と俺は部活休んでもいいでしょうか?」
「いいですが……。なにか理由はありますか?」
「それは……」
どう説明しようか悩む。俺と大樹はゲームで休むことになってる。だが、それは正当な理由にはならない。
俺は考える。できるだけ最もらしいことを。しかし、齋藤先生は直感がすごいせいで……。
「もしかして、ゲーム内の友達間なにかあったんですか?」
と言ってきた。
「はい」
そう答えるしかない俺。
「かなり表情に強ばりと緊張が見えますね。わかりました。仲間を大事することはとても必要なことです。ですが、ライバルも必ずいます。飛鳥さんと大和さんのように。友達以上の仲間を大切にしてあげてください」
「ありがとうございます。齋藤先生」
(よし。大樹に報告だ……)
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
いや、一応苦労してますけども。
GURA
ファンタジー
「ここどこ?」
仕事から帰って最近ハマってるオンラインゲームにログイン。
気がつくと見知らぬ草原にポツリ。
レベル上げとモンスター狩りが好きでレベル限界まで到達した、孤高のソロプレイヤー(とか言ってるただの人見知りぼっち)。
オンラインゲームが好きな25歳独身女がゲームの中に転生!?
しかも男キャラって...。
何の説明もなしにゲームの中の世界に入り込んでしまうとどういう行動をとるのか?
なんやかんやチートっぽいけど一応苦労してるんです。
お気に入りや感想など頂けると活力になりますので、よろしくお願いします。
※あまり気にならないように製作しているつもりですが、TSなので苦手な方は注意して下さい。
※誤字・脱字等見つければその都度修正しています。
【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~
夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。
多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』
一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。
主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!!
小説家になろうからの転載です。
ーOnly Life Onlineーで生産職中心に遊んでたらトッププレイヤーの仲間入り
星月 ライド
ファンタジー
親友の勧めで遊び、マイペースに進めていたら何故かトッププレイヤーになっていた!?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
注意事項
※主人公リアルチート
暴力・流血表現
VRMMO
一応ファンタジー
もふもふにご注意ください。
Bless for Travel ~病弱ゲーマーはVRMMOで無双する~
NotWay
SF
20xx年、世に数多くのゲームが排出され数多くの名作が見つかる。しかしどれほどの名作が出ても未だに名作VRMMOは発表されていなかった。
「父さんな、ゲーム作ってみたんだ」
完全没入型VRMMOの発表に世界中は訝、それよりも大きく期待を寄せた。専用ハードの少数販売、そして抽選式のβテストの両方が叶った幸運なプレイヤーはゲームに入り……いずれもが夜明けまでプレイをやめることはなかった。
「第二の現実だ」とまで言わしめた世界。
Bless for Travel
そんな世界に降り立った開発者の息子は……病弱だった。
モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件
こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。
だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。
好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。
これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。
※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ
Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。
後方支援なら任せてください〜幼馴染にS級クランを追放された【薬師】の私は、拾ってくれたクラマスを影から支えて成り上がらせることにしました〜
黄舞
SF
「お前もういらないから」
大人気VRMMORPGゲーム【マルメリア・オンライン】に誘った本人である幼馴染から受けた言葉に、私は気を失いそうになった。
彼、S級クランのクランマスターであるユースケは、それだけ伝えるといきなりクラマス権限であるキック、つまりクラン追放をした。
「なんで!? 私、ユースケのために一生懸命言われた通りに薬作ったよ? なんでいきなりキックされるの!?」
「薬なんて買えばいいだろ。次の攻城戦こそランキング一位狙ってるから。薬作るしか能のないお前、はっきり言って邪魔なんだよね」
個別チャットで送ったメッセージに返ってきた言葉に、私の中の何かが壊れた。
「そう……なら、私が今までどれだけこのクランに役に立っていたか思い知らせてあげる……後から泣きついたって知らないんだから!!」
現実でも優秀でイケメンでモテる幼馴染に、少しでも気に入られようと尽くしたことで得たこのスキルや装備。
私ほど薬作製に秀でたプレイヤーは居ないと自負がある。
その力、思う存分見せつけてあげるわ!!
VRMMORPGとは仮想現実、大規模、多人数参加型、オンライン、ロールプレイングゲームのことです。
つまり現実世界があって、その人たちが仮想現実空間でオンラインでゲームをしているお話です。
嬉しいことにあまりこういったものに馴染みがない人も楽しんで貰っているようなので記載しておきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる