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兎と狼
第13話 紋章の力
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ケイの不思議な瞳の色の変化に、俺の脳がバグってしまった。彼はよろよろと、フラフラとヤサイダーの方へ向かっていく。
「ケイ!!」
「……」
何故だ。俺の声が全く届かない。彼の焦点が合ってないのか? それとも見えないのか? その答えはケイだけが知っている。
「君? 僕を本気にさせたね?」
「何よ……。貴方まともに歩けてないじゃない!」
「ごめん。何も聞こえないや。目も見えてないしね」
「じゃ、じゃあ。それで何が出来るってのよ?」
「それはね……」
ケイは右手の甲を見せる。すると、歪な文字が浮き上がってきた。
「この紋章はリアルでもどんなゲームでも発動できるんだ。僕の両親に龍神様がいてね。その人に埋め込んでもらったものさ」
「そ、その紋章がなんなのよ……!」
「さあ。僕も……イマイチ……わからないんだよね!!」
――ザシュッ!!
ケイの尖爪が宙を舞うように繰り出される。彼は今目も見えてなければ耳も聞こえていない。全て勘で受け答えと攻撃をしているのだろう。
それにしても、さっきの一撃でヤサイダーの身体が30メートルほど吹き飛んだ。とてつもないノックバックだ。
ケイは攻撃を止めない。一瞬彼の右目が黄色く光る。直後暴風を呼び寄せたかのように木々が荒れる。さっきの攻撃で起きた突風か?
そのまま、彼は何も容赦せずにヤサイダーを肉薄。やがてヤサイダーはポリゴンとなって消えた。
これは約5分から10分の出来事だった。ケイの動きが止まる。敵の気配が無くなったからのようだ。
そして彼はその場で崩れ落ちた。
「ケイ大丈夫?」
「……」
「「ケイ!!」」
「……」
まだ声が届かない。瞳の色は青に戻っているが、紋章による反動が大きかったのだろう。俺たちはケイが回復するまで待つと、ようやく第一声を放った。
「ふぅ……。やっと感覚戻ってきた……」
「良かった」
「ケイすごいよ。わたしびっくりしちゃった」
アリスがものすごく大喜びしている。しかし、ケイはこうしている暇がないようで。右手の甲を見るとまだ紋章の影が見えていた。
「ケイ。その紋章は一体なんなんだ?」
「これは黒白様がアーサーラウンダーのメンバー全員につけた、メンバー証明書的なものだよ」
「メンバー証明書?」
「あとでカケルにもつけて貰わないとね……。それにしても、ゲームなのに両肩が痛いや……。両親はこの紋章の力を使いこなしてるんだけど。僕はまだまだ未熟と感じるよ」
黒白様? 誰? それよりも、この紋章危険すぎなんだけど。いずれ俺も埋め込むの? 絶対いや、なんか痛そう……。
「痛くないよ。魔法で埋め込むから」
「魔法?」
「そういえばそうだった。カケルはリアルで魔法を使えること知らないよね。昔、僕たちの地球は多くの魔物に侵略された。それを解決したのが3人の龍神様。片翼。冷酷。黒白の3人。魔法は1割未満が使えるくらいで、普及はしてないかな?」
そんなことがあったのか。この世界には色々不可思議なことがあるもんだ。俺は魔法が使えない側の人――ゲームは例外――だが、ケイやバレンたちは場所問わず使えるのだろう。
このアーサーラウンダーというギルドは謎が多すぎる。これには何かがあるはずだ。いずれは俺も魔法が使えるようになるかもしれない。
いや、そんなこと考えてはダメだ。あまりにもおかしすぎる。
「その感情は何かな?」
「?」
「カケルの今の考え、当ててあげようか」
「ケイ。わかるのか?」
「なんとなくだけどね。魔法なんかありえないって思ってるんでしょ?」
「そうだが……」
ケイはうんうんと頷いて共感の表情を見せる。俺は現実世界で魔法が使えることを知って、これが世間に知られたら弾幕バトルでも起こるのではないか? と思った。
だけど、彼はそのことを教えてくれた。そこに一言追加する。
「このことは、内緒にして欲しい。たしかに君が思ってる通りのことになるからね」
「つまり、ケイも世間には公表していない?」
「うん。見られたら必ず無詠唱で相手の記憶を消してるから」
「魔法使いって大変なんだ……」
「まあ、極秘が基本だから」
やっぱりそうなのか……。で、もしかして俺記憶消される? アリスのことも、ケイたちのことも……。
なんか大掛かりなことになってきたぞ。この状況をどうしろと。俺の思考はぐちゃぐちゃどろどろになった形すらないカップアイスみたいになっていた。
こんなもの美味しいものでもなんでもない。知りたくなかったことだ。情報渋滞が巻き起こっていて、整理整頓も難度が高すぎる。
「あ、カケルの記憶は消さないよ。だって同じギルドメンバーだからね。僕たちがリアルで魔法を使えることを公に出さないと約束してくれれば大丈夫」
「わかった。約束する」
そうして、戦いのオフトークは終了し。5人でアンデスに向かう。道は全てケイが暗記してくれため、迷いなく到着することができた。
途中で新しい仲間が増えたくらいだ。アリスはちょっと腰が引ける人みたいだが、とても優しい人だった。
しかし、そこに至るまでに一悶着あったのは、また別の話。ところで、紋章を俺に埋め込むタイミングはいつなのか? ケイに問いかけてみる。
「ケイ。俺に紋章を埋め込むタイミングっていつ頃なのか知りたいんだけど……」
「条件ってこと?」
「そう」
「条件は、アーサーラウンダーに一ヶ月以上在籍していることと、決まったら僕の家に直接来ること。そして、黒白様との相性診断で合格することだね」
「ありがとう」
「ケイ!!」
「……」
何故だ。俺の声が全く届かない。彼の焦点が合ってないのか? それとも見えないのか? その答えはケイだけが知っている。
「君? 僕を本気にさせたね?」
「何よ……。貴方まともに歩けてないじゃない!」
「ごめん。何も聞こえないや。目も見えてないしね」
「じゃ、じゃあ。それで何が出来るってのよ?」
「それはね……」
ケイは右手の甲を見せる。すると、歪な文字が浮き上がってきた。
「この紋章はリアルでもどんなゲームでも発動できるんだ。僕の両親に龍神様がいてね。その人に埋め込んでもらったものさ」
「そ、その紋章がなんなのよ……!」
「さあ。僕も……イマイチ……わからないんだよね!!」
――ザシュッ!!
ケイの尖爪が宙を舞うように繰り出される。彼は今目も見えてなければ耳も聞こえていない。全て勘で受け答えと攻撃をしているのだろう。
それにしても、さっきの一撃でヤサイダーの身体が30メートルほど吹き飛んだ。とてつもないノックバックだ。
ケイは攻撃を止めない。一瞬彼の右目が黄色く光る。直後暴風を呼び寄せたかのように木々が荒れる。さっきの攻撃で起きた突風か?
そのまま、彼は何も容赦せずにヤサイダーを肉薄。やがてヤサイダーはポリゴンとなって消えた。
これは約5分から10分の出来事だった。ケイの動きが止まる。敵の気配が無くなったからのようだ。
そして彼はその場で崩れ落ちた。
「ケイ大丈夫?」
「……」
「「ケイ!!」」
「……」
まだ声が届かない。瞳の色は青に戻っているが、紋章による反動が大きかったのだろう。俺たちはケイが回復するまで待つと、ようやく第一声を放った。
「ふぅ……。やっと感覚戻ってきた……」
「良かった」
「ケイすごいよ。わたしびっくりしちゃった」
アリスがものすごく大喜びしている。しかし、ケイはこうしている暇がないようで。右手の甲を見るとまだ紋章の影が見えていた。
「ケイ。その紋章は一体なんなんだ?」
「これは黒白様がアーサーラウンダーのメンバー全員につけた、メンバー証明書的なものだよ」
「メンバー証明書?」
「あとでカケルにもつけて貰わないとね……。それにしても、ゲームなのに両肩が痛いや……。両親はこの紋章の力を使いこなしてるんだけど。僕はまだまだ未熟と感じるよ」
黒白様? 誰? それよりも、この紋章危険すぎなんだけど。いずれ俺も埋め込むの? 絶対いや、なんか痛そう……。
「痛くないよ。魔法で埋め込むから」
「魔法?」
「そういえばそうだった。カケルはリアルで魔法を使えること知らないよね。昔、僕たちの地球は多くの魔物に侵略された。それを解決したのが3人の龍神様。片翼。冷酷。黒白の3人。魔法は1割未満が使えるくらいで、普及はしてないかな?」
そんなことがあったのか。この世界には色々不可思議なことがあるもんだ。俺は魔法が使えない側の人――ゲームは例外――だが、ケイやバレンたちは場所問わず使えるのだろう。
このアーサーラウンダーというギルドは謎が多すぎる。これには何かがあるはずだ。いずれは俺も魔法が使えるようになるかもしれない。
いや、そんなこと考えてはダメだ。あまりにもおかしすぎる。
「その感情は何かな?」
「?」
「カケルの今の考え、当ててあげようか」
「ケイ。わかるのか?」
「なんとなくだけどね。魔法なんかありえないって思ってるんでしょ?」
「そうだが……」
ケイはうんうんと頷いて共感の表情を見せる。俺は現実世界で魔法が使えることを知って、これが世間に知られたら弾幕バトルでも起こるのではないか? と思った。
だけど、彼はそのことを教えてくれた。そこに一言追加する。
「このことは、内緒にして欲しい。たしかに君が思ってる通りのことになるからね」
「つまり、ケイも世間には公表していない?」
「うん。見られたら必ず無詠唱で相手の記憶を消してるから」
「魔法使いって大変なんだ……」
「まあ、極秘が基本だから」
やっぱりそうなのか……。で、もしかして俺記憶消される? アリスのことも、ケイたちのことも……。
なんか大掛かりなことになってきたぞ。この状況をどうしろと。俺の思考はぐちゃぐちゃどろどろになった形すらないカップアイスみたいになっていた。
こんなもの美味しいものでもなんでもない。知りたくなかったことだ。情報渋滞が巻き起こっていて、整理整頓も難度が高すぎる。
「あ、カケルの記憶は消さないよ。だって同じギルドメンバーだからね。僕たちがリアルで魔法を使えることを公に出さないと約束してくれれば大丈夫」
「わかった。約束する」
そうして、戦いのオフトークは終了し。5人でアンデスに向かう。道は全てケイが暗記してくれため、迷いなく到着することができた。
途中で新しい仲間が増えたくらいだ。アリスはちょっと腰が引ける人みたいだが、とても優しい人だった。
しかし、そこに至るまでに一悶着あったのは、また別の話。ところで、紋章を俺に埋め込むタイミングはいつなのか? ケイに問いかけてみる。
「ケイ。俺に紋章を埋め込むタイミングっていつ頃なのか知りたいんだけど……」
「条件ってこと?」
「そう」
「条件は、アーサーラウンダーに一ヶ月以上在籍していることと、決まったら僕の家に直接来ること。そして、黒白様との相性診断で合格することだね」
「ありがとう」
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