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兎と狼
第5話 蜂の巣はオブジェクト扱い?
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「アリス。取るぞ!」
「お願い……!」
俺は大きな蜂の巣に手をかける。ゲームだから油断していたが、なかなかに重い、これをストレージに入れればクエストクリア。クエストの受注ログがなかったけどクリアだ。
ところで、ここがどこなのか? 古代林はもう終わっていて、ジャングルのように木々が密集した場所に来ていた。
「大丈夫?」
「だ、だいじょ……う……。うわぁ!?」
蜂の巣の重さに負けて俺は木から外した時の反動で尻もちをつく。負傷ダメージが適応され。1メモリほど体力が減少した。
このアバター。ダッシュやジャンプには長けてるけど、バランスが微妙だ。ところで、この蜂の巣をどう分解するか? ただ普通に割るのも悪くは無い。
「カケル。家に帰りましょ?」
「だな……」
「みんなに食べて貰いましょう」
「言っとくが、どれぐらい巣蜜が入ってるかわからないぞ?」
「問題ないよ。ここにいるキラービーの巣蜜は百発百中全部が巣蜜でできてるから」
運営の手抜きかよ。でも、巣蜜の量が多いことは変わりない。俺は蜂の巣をストレージに入れようとしたが、何故か入らなかった。
どうやら、蜂の巣はアイテムではなくエリアオブジェクト扱いらしい。そりゃ入らないわけだ。そして、アリスにこれは重すぎるだろう。これは男仕事だ。力仕事だ。
責任もって俺が集落まで運ぼう。俺は、どのような持ち方をすれば楽に運べるかを考える。担ぐかそれともおんぶするか。抱えるか?
色んな持ち方うぃする俺に、アリスは面白おかしそうにクスクス笑う。そんな表情をされると非常に恥ずかしい。自分がみっともなく感じてしまう。
すると、アリスが俺が持つ蜂の巣に手をかけた。
「わたしも一緒に持ってもいい?」
「2人で持つってこと?」
「うん。なんか試行錯誤するカケルを見ていたら、いてもたってもいられなくて」
「別に構わないが……」
「ありがと」
俺は蜂の巣を一旦地面に置くと。アリスが反対側に両手を差し込んだ。俺も同じようにして息を合わせて持ち上げる。
なんか一人で持つよりも軽い。やっぱり協力することは一番の近道らしい。そういえば親からも言われてきたような気がする。
『もっと協調性を持ちなさい』
……と。
ゲームでも一人で遊ぶことが多く、協力プレイでは俺だけ単独行動。だけど、ギルドがなんなのか気になって蓋を開けたら、なにこれ楽しい。
ケイに出会わなかったら、俺の目の前にアリスはいない。何も知らずに殺していただろう。でも、このAIも衣食住を嗜んでいる。
現実世界にいるみんなと同じように、弱肉強食もある。そう、普段の生活と大差ないのだ。俺はアリスと息を合わせて蜂の巣を運ぶ。
「アリス。重くないか?」
「無問題だよ。カケルのおかげで、ホワイトゴブリン史上最大の蜂の巣だから、食べるのが勝っちゃって」
「そんなこと考えられるなら、もう少しスピード上げろよ」
「えへへ」
この1日でアリスとかなり距離が縮まった気がする。気のせいじゃない。お互いにまだ知らないことが多いが、相手の考えてることが理解できるようになった気もする。
俺たちは一歩づつ一歩づつ、集落への道を辿る。使うルートは行きの時に使った道じゃない。少し遠回りの敵がいない安全ルートだ。
ジャングルを抜け、原生林のツタの道を掻い潜り、古代林の入口へ。だけど、なぜこんな足場の悪い道を突き進むのだろう。
「カケル。ちょっと巣蜜食べる?」
「え?」
「お腹空いたでしょ?」
「お、おん……」
みんなで食べるんじゃなかったの? でもアリスは蜂の巣を手際よく分解して、巣蜜を取り出す。サクリと割ると、不自然に崩れた部分から蜂蜜がこぼれ落ちた。
ゲーム内とはいえ、よだれが止まらない。俺はアリスから巣蜜の欠片を受け取ると、一口で頬張った。
ジュワーと広がり鼻から抜ける甘い香り。これはリピーターになるわけだ。ホワイトゴブリンの大好物だということがよくわかる。
「ね? 美味しいでしょ?」
「うん。美味しい。ケイたちの分は残さないのか?」
「もちろん残すよ。それに、一度分解するとエリアオブジェクトじゃなくて、普通のイートアイテムになるから、ストレージに入るんじゃないかな? って」
「そういう理由かよ」
でも、このAI。自ストレージを持ってないのにも関わらず、エリアオブジェクトがアイテムに変換される仕組みとかを知っている。
どうやら普通のAIではないらしい。もしかしてAIがゲームにログインしてる? そんなはずがない。少し前に言った通りプレイヤーは動物の二足歩行アバターしか使えない。
でもアリスはホワイトゴブリンだ。どう考えてもありえない。
「カケル。巣蜜しまって急いで帰りましょ。真っ暗になっちゃう」
「たしかに。行こう」
そうして俺とアリスは一息ついたのち、帰路の続きを歩いた。集落に着いたのはそれから30分ほど経った頃だった。
ケイたちが豪華な料理を振舞ってくれて、療養中失いかけてた団欒の良さを改めて知る機会にもなった。
俺は、今日アリスとあったことを全部彼らに報告。その後、集落のテントの中でログアウトした。
それからは、現実世界でちゃんとした食事をして、20時にゲーム内へと集合。今後の行動内容のすり合わせをすることになった。ー
「お願い……!」
俺は大きな蜂の巣に手をかける。ゲームだから油断していたが、なかなかに重い、これをストレージに入れればクエストクリア。クエストの受注ログがなかったけどクリアだ。
ところで、ここがどこなのか? 古代林はもう終わっていて、ジャングルのように木々が密集した場所に来ていた。
「大丈夫?」
「だ、だいじょ……う……。うわぁ!?」
蜂の巣の重さに負けて俺は木から外した時の反動で尻もちをつく。負傷ダメージが適応され。1メモリほど体力が減少した。
このアバター。ダッシュやジャンプには長けてるけど、バランスが微妙だ。ところで、この蜂の巣をどう分解するか? ただ普通に割るのも悪くは無い。
「カケル。家に帰りましょ?」
「だな……」
「みんなに食べて貰いましょう」
「言っとくが、どれぐらい巣蜜が入ってるかわからないぞ?」
「問題ないよ。ここにいるキラービーの巣蜜は百発百中全部が巣蜜でできてるから」
運営の手抜きかよ。でも、巣蜜の量が多いことは変わりない。俺は蜂の巣をストレージに入れようとしたが、何故か入らなかった。
どうやら、蜂の巣はアイテムではなくエリアオブジェクト扱いらしい。そりゃ入らないわけだ。そして、アリスにこれは重すぎるだろう。これは男仕事だ。力仕事だ。
責任もって俺が集落まで運ぼう。俺は、どのような持ち方をすれば楽に運べるかを考える。担ぐかそれともおんぶするか。抱えるか?
色んな持ち方うぃする俺に、アリスは面白おかしそうにクスクス笑う。そんな表情をされると非常に恥ずかしい。自分がみっともなく感じてしまう。
すると、アリスが俺が持つ蜂の巣に手をかけた。
「わたしも一緒に持ってもいい?」
「2人で持つってこと?」
「うん。なんか試行錯誤するカケルを見ていたら、いてもたってもいられなくて」
「別に構わないが……」
「ありがと」
俺は蜂の巣を一旦地面に置くと。アリスが反対側に両手を差し込んだ。俺も同じようにして息を合わせて持ち上げる。
なんか一人で持つよりも軽い。やっぱり協力することは一番の近道らしい。そういえば親からも言われてきたような気がする。
『もっと協調性を持ちなさい』
……と。
ゲームでも一人で遊ぶことが多く、協力プレイでは俺だけ単独行動。だけど、ギルドがなんなのか気になって蓋を開けたら、なにこれ楽しい。
ケイに出会わなかったら、俺の目の前にアリスはいない。何も知らずに殺していただろう。でも、このAIも衣食住を嗜んでいる。
現実世界にいるみんなと同じように、弱肉強食もある。そう、普段の生活と大差ないのだ。俺はアリスと息を合わせて蜂の巣を運ぶ。
「アリス。重くないか?」
「無問題だよ。カケルのおかげで、ホワイトゴブリン史上最大の蜂の巣だから、食べるのが勝っちゃって」
「そんなこと考えられるなら、もう少しスピード上げろよ」
「えへへ」
この1日でアリスとかなり距離が縮まった気がする。気のせいじゃない。お互いにまだ知らないことが多いが、相手の考えてることが理解できるようになった気もする。
俺たちは一歩づつ一歩づつ、集落への道を辿る。使うルートは行きの時に使った道じゃない。少し遠回りの敵がいない安全ルートだ。
ジャングルを抜け、原生林のツタの道を掻い潜り、古代林の入口へ。だけど、なぜこんな足場の悪い道を突き進むのだろう。
「カケル。ちょっと巣蜜食べる?」
「え?」
「お腹空いたでしょ?」
「お、おん……」
みんなで食べるんじゃなかったの? でもアリスは蜂の巣を手際よく分解して、巣蜜を取り出す。サクリと割ると、不自然に崩れた部分から蜂蜜がこぼれ落ちた。
ゲーム内とはいえ、よだれが止まらない。俺はアリスから巣蜜の欠片を受け取ると、一口で頬張った。
ジュワーと広がり鼻から抜ける甘い香り。これはリピーターになるわけだ。ホワイトゴブリンの大好物だということがよくわかる。
「ね? 美味しいでしょ?」
「うん。美味しい。ケイたちの分は残さないのか?」
「もちろん残すよ。それに、一度分解するとエリアオブジェクトじゃなくて、普通のイートアイテムになるから、ストレージに入るんじゃないかな? って」
「そういう理由かよ」
でも、このAI。自ストレージを持ってないのにも関わらず、エリアオブジェクトがアイテムに変換される仕組みとかを知っている。
どうやら普通のAIではないらしい。もしかしてAIがゲームにログインしてる? そんなはずがない。少し前に言った通りプレイヤーは動物の二足歩行アバターしか使えない。
でもアリスはホワイトゴブリンだ。どう考えてもありえない。
「カケル。巣蜜しまって急いで帰りましょ。真っ暗になっちゃう」
「たしかに。行こう」
そうして俺とアリスは一息ついたのち、帰路の続きを歩いた。集落に着いたのはそれから30分ほど経った頃だった。
ケイたちが豪華な料理を振舞ってくれて、療養中失いかけてた団欒の良さを改めて知る機会にもなった。
俺は、今日アリスとあったことを全部彼らに報告。その後、集落のテントの中でログアウトした。
それからは、現実世界でちゃんとした食事をして、20時にゲーム内へと集合。今後の行動内容のすり合わせをすることになった。ー
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