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兎と狼
第1話 暇人
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「ぶぇっくしゅん……。ううぅ……」
朝からくしゃみが止まらない……。もう学校行けなくなって1週間だよ……。どうして、インフルエンザにかかるんだ……。
――コンコン
『翔斗? 朝ごはんよ』
「と言ってもまたお粥だろ? へっくしゅん……。うっ……鼻水が……。ティッシュティッシュ……。ってないじゃん……!」
『ティッシュないの? 新しいの持って来るよ?』
「ごめん母さん……。助かる」
2055年1月16日朝7時32分。俺はとある夢を見てから目が覚めた。インフルエンザがない動物たちの楽園。
こんな世界あったらいいのに……。そう思ったのもやはり夢だったようで、現実に引き戻された一発目が大きなくしゃみだった。
今頃同級生のみんなは本命の受験先を考えてる頃だろうなぁ……。俺も説明会に行きたかったけど、この酷いくしゃみでは行けそうにもないや。
1週間経っても治らないのは不自然だ。これは神様からの天罰か? そういうのは考えたくない。
俺の部屋にはたくさんのゲームがある。この1週間全部のゲームを遊び尽くしていた。
どれも一度遊んだゲームだったのも理由の一つ。一巡するだけでもつまらないのに、何周もしてたら飽きてしまう。
「こんな時に学校行けたらなぁ……。ぶぇっくしょん……ゴホッ!」
咳も止まらない。喉が痛い。ヒリヒリする。この状態なので今の俺は非常に暇だ。
もはやゲームする気も予習する気も起きない。ずっと寝た状態でできるやつないかな? 俺は部屋を見回す。
すると、部屋と廊下を繋ぐ扉の隙間の手前にゲームソフトを発見した。俺はよろよろとベッドから降りてソフトを拾いあげる。
「これ、初めて見るゲームだ……。ビースト・オンライン? 裏面は……」
"ビースト・オンライン。
30種類の動物から1種類を選択し、その能力を活かして戦うオープンワールドロールプレイングゲームです。
ゲームをプレイするには、ディスクをパソコンに挿入し、事前にアバターを選択してください。ダイブギアとパソコンを連携させると遊べます。大自然に恵まれたフィールドで、冒険を楽しみましょう!"
『あれ? 翔斗拾ってくれたのね……』
「これ母さんが俺に? へっくしゅん……」
『そうよ。そろそろ部屋にあるゲームに飽きて来てるんじゃないかなって。面白そうなのを探してきたの』
「ありがとう。母さん……」
『だけど無理しないでね。まだくしゃみが止まってないんだから』
「わかってるよ」
そうして俺はパソコンの方へと向かった。閉じた画面を開き、電源を入れる。しばらくすると画面が点灯し、パスワード画面にたどり着く。
"*****h"
「確定っと。ディスクトレイを開いて……。ダイブギアをブルートゥースで繋げて……」
そして、ゲームソフトのディスクをディスクトレイにセットして閉じると、全体に森の絵が描かれた画面が現れる。
そこからログインページに移動し、アカウントを作成する。プレイヤー名もここで決めるみたいだ。俺は、翔斗から翔だけを取って"カケル"と名付けた。
次にアバター選択。熊や猫、狼にライオン。チーターになぜか分からないけどネズミまである。一番弱そうな亀まで。
本当にこのゲームは動物だらけなんだ。そう思ってスクロールしていくと、ランダムって書いてあるところを見つけた。自分で選ぶのが苦手な人用だろう。
するとここで悲劇が起こる。
「へっくしゅん!」
"【ランダム】が選択されました。自動でアバターを選択します。この操作はキャンセルできません"
「え!?」
最悪だ……。やらかしてしまった。これで微妙な動物が選ばれたらどうしよう。それが亀だったらさらに最悪だ。素早く動けそうな気がしない……。はたまた亀仙人アバターか?
まずいじいちゃんになっちまう。それだけは嫌だ……。
"選択されたアバターはログイン時に確認できます。ログイン後はチュートリアルにしたがって完了させてください。それでは大自然での冒険の中での活躍ができるよう、運営一同楽しみにしています"
俺は落ち込んだ。高熱で学校に行けなくなった時以上に落ち込んだ……。そうだ、これは俺への挑戦状と思えばいい。
とにかくダイブしよう。話はそれからだ。そこから強くなっていけばいい。武器があれば装備して。アバターの個性を引き出せば結果オーライだ。
俺はダイブギアを持ってベッドに向かう。装着したらログインワードを唱えた。
「ゲームアクティベート!」
すると、仮想空間に俺を誘った。長い長い洞窟を駆け抜けて行く。やがてそのロード画面は終わりを告げ、最初の街にやってきた。
右上にマップが表示されていて、ソルダムと書かれていた。ソルダムというのは、プラムの名前だ。
この世界の名前は果物になっているんだと思う。それ以上に気になったのは俺のアバターだ。
絶対変なのになってるって!!
両手を見ると、真っ白のふっかふか。足は細く、身軽で高く跳べそうなイメージだ。近くに噴水があったので覗いてみると、頭のてっぺんに長く細長い耳。顔も丸顔で愛嬌のある印象だ。
「これって……。兎?」
気付くのが遅いよ俺。ってか、兎って項目見てなかったんだけど。でも、なんか強そうな気がする。
まあ、それは置いておいて、チュートリアルを進めることにした。
朝からくしゃみが止まらない……。もう学校行けなくなって1週間だよ……。どうして、インフルエンザにかかるんだ……。
――コンコン
『翔斗? 朝ごはんよ』
「と言ってもまたお粥だろ? へっくしゅん……。うっ……鼻水が……。ティッシュティッシュ……。ってないじゃん……!」
『ティッシュないの? 新しいの持って来るよ?』
「ごめん母さん……。助かる」
2055年1月16日朝7時32分。俺はとある夢を見てから目が覚めた。インフルエンザがない動物たちの楽園。
こんな世界あったらいいのに……。そう思ったのもやはり夢だったようで、現実に引き戻された一発目が大きなくしゃみだった。
今頃同級生のみんなは本命の受験先を考えてる頃だろうなぁ……。俺も説明会に行きたかったけど、この酷いくしゃみでは行けそうにもないや。
1週間経っても治らないのは不自然だ。これは神様からの天罰か? そういうのは考えたくない。
俺の部屋にはたくさんのゲームがある。この1週間全部のゲームを遊び尽くしていた。
どれも一度遊んだゲームだったのも理由の一つ。一巡するだけでもつまらないのに、何周もしてたら飽きてしまう。
「こんな時に学校行けたらなぁ……。ぶぇっくしょん……ゴホッ!」
咳も止まらない。喉が痛い。ヒリヒリする。この状態なので今の俺は非常に暇だ。
もはやゲームする気も予習する気も起きない。ずっと寝た状態でできるやつないかな? 俺は部屋を見回す。
すると、部屋と廊下を繋ぐ扉の隙間の手前にゲームソフトを発見した。俺はよろよろとベッドから降りてソフトを拾いあげる。
「これ、初めて見るゲームだ……。ビースト・オンライン? 裏面は……」
"ビースト・オンライン。
30種類の動物から1種類を選択し、その能力を活かして戦うオープンワールドロールプレイングゲームです。
ゲームをプレイするには、ディスクをパソコンに挿入し、事前にアバターを選択してください。ダイブギアとパソコンを連携させると遊べます。大自然に恵まれたフィールドで、冒険を楽しみましょう!"
『あれ? 翔斗拾ってくれたのね……』
「これ母さんが俺に? へっくしゅん……」
『そうよ。そろそろ部屋にあるゲームに飽きて来てるんじゃないかなって。面白そうなのを探してきたの』
「ありがとう。母さん……」
『だけど無理しないでね。まだくしゃみが止まってないんだから』
「わかってるよ」
そうして俺はパソコンの方へと向かった。閉じた画面を開き、電源を入れる。しばらくすると画面が点灯し、パスワード画面にたどり着く。
"*****h"
「確定っと。ディスクトレイを開いて……。ダイブギアをブルートゥースで繋げて……」
そして、ゲームソフトのディスクをディスクトレイにセットして閉じると、全体に森の絵が描かれた画面が現れる。
そこからログインページに移動し、アカウントを作成する。プレイヤー名もここで決めるみたいだ。俺は、翔斗から翔だけを取って"カケル"と名付けた。
次にアバター選択。熊や猫、狼にライオン。チーターになぜか分からないけどネズミまである。一番弱そうな亀まで。
本当にこのゲームは動物だらけなんだ。そう思ってスクロールしていくと、ランダムって書いてあるところを見つけた。自分で選ぶのが苦手な人用だろう。
するとここで悲劇が起こる。
「へっくしゅん!」
"【ランダム】が選択されました。自動でアバターを選択します。この操作はキャンセルできません"
「え!?」
最悪だ……。やらかしてしまった。これで微妙な動物が選ばれたらどうしよう。それが亀だったらさらに最悪だ。素早く動けそうな気がしない……。はたまた亀仙人アバターか?
まずいじいちゃんになっちまう。それだけは嫌だ……。
"選択されたアバターはログイン時に確認できます。ログイン後はチュートリアルにしたがって完了させてください。それでは大自然での冒険の中での活躍ができるよう、運営一同楽しみにしています"
俺は落ち込んだ。高熱で学校に行けなくなった時以上に落ち込んだ……。そうだ、これは俺への挑戦状と思えばいい。
とにかくダイブしよう。話はそれからだ。そこから強くなっていけばいい。武器があれば装備して。アバターの個性を引き出せば結果オーライだ。
俺はダイブギアを持ってベッドに向かう。装着したらログインワードを唱えた。
「ゲームアクティベート!」
すると、仮想空間に俺を誘った。長い長い洞窟を駆け抜けて行く。やがてそのロード画面は終わりを告げ、最初の街にやってきた。
右上にマップが表示されていて、ソルダムと書かれていた。ソルダムというのは、プラムの名前だ。
この世界の名前は果物になっているんだと思う。それ以上に気になったのは俺のアバターだ。
絶対変なのになってるって!!
両手を見ると、真っ白のふっかふか。足は細く、身軽で高く跳べそうなイメージだ。近くに噴水があったので覗いてみると、頭のてっぺんに長く細長い耳。顔も丸顔で愛嬌のある印象だ。
「これって……。兎?」
気付くのが遅いよ俺。ってか、兎って項目見てなかったんだけど。でも、なんか強そうな気がする。
まあ、それは置いておいて、チュートリアルを進めることにした。
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