インステニート 〜インフレ・ステータスじゃなくても規格外のニート少女で、ぶっきらぼうに話す私は異世界からの転生者でした

八ッ坂千鶴

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第3章 150年の月日

第47話 待ちに待った鬼畜ゲー(WM53年)

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「ふぅ~。やっと溜まってた依頼が一段落ついた。他のメンバーは、3年間の合宿を兼ねたクエ攻略でいねぇし」

 私は、自宅で押し印がされた大量の依頼用紙をまとめながら、壁に貼られた鬼畜ゲー開催ポスターを眺めていた。

 鬼畜ゲーというのは、残酷な要素が入ったものや、攻略不可に近い内容のゲームのこと。

 ちょうど明日から、WWM全体が約2年の間鬼畜ゲームになることになっている。

 基本情報として、敵モンスターのレベルが、日を重ねるごとに上昇していくとのこと。

 レベル補正として、全プレイヤーに全ステータス上昇バフも付与されるが、特別仕様が気になっていた。

 内容はすでに、ゼアンから聞いているが、どのように反映されるのかは、知らされていない。

 反映内容はともかく、その内容を説明すると、他プレイヤーはステータスが数百倍上昇するが、私だけが真逆でステータスが全て5桁に固定される。

 もっと言うと、私のステータスが5桁なのに対して、他プレイヤーは10桁を超える見込みだ。

 そして、この企画は楓も参加していて、ステータス反映はゲームシステムではなく〈レコード・ノート〉で行われる。

 ウェンドラは本調子の私だと、いくらステータスを減少させても、意味がないと言うので、ゲーム内日時変更と同時に、50億の負荷を期間中に常時反映させることになった。

 まずまず、50億の周波数が存在するのかが怪しいが、〈レコード・ノート〉を使えば関係ない。

 整理が終わり、依頼用紙を片付けると、私は装備の準備を始める。武器も攻撃力が低いものに変更し、防具は全解除。裸はさすがに嫌なので、普段着として使っているボロ服を着る。

 これで、防御力の追加値は0になり、鬼畜さが倍増した。あとは、日付けが変わるのを待つだけ。

 反映情報の確認を頼まれているので、切り替わるまで、かまどの中でゴロゴロしながら暇を潰した。


 ◇◇◇翌日0時◇◇◇


 ついに、書き換えが始まった。私の情報の変更は1番最後で、もう間もなく反映される。直前の反映開始メッセージを、開き15秒後に終わるのを確認。

「5……4……3……2……1…………」

 0のタイミングでステータスを表示。そこには、

 プレイヤー名:巣籠 明理
 Lv.1
 性別:WOMAN 種族:妖精族
 ジョブ:エルフソードマン
 国民番号:005791871
 HP:17.895
 ATK:24,700
 DEF:37,690
 MAT:25,631
 MDE:43,185


 と、しっかり変更されたことを、ウェンドラに報告。その直後、初めてに近いような、強烈で地獄でしかない負荷が脳を貫き、挙句の果てに意識を失った。



 しばらく経って目が覚めると、日付けが3日も過ぎていた。今は、鬼畜イベントの真っ最中。

 ようやく、負荷の痛みに慣れて、長時間かかっていても問題なく動けるようになって、早速かまどの外に出る。

 外の様子に変化はなく、穏やかな世界が広がっていた。

「んじゃ、早速いきますか…………。レベルロックもそのまんまだし。ロックの解除は………………。しねぇ方が面白いか……」

 私は、飛行魔法で空を飛ぶ。索敵で敵が多い場所を探して、見つけたのはカナダ。

 飛行速度を上げて北西へ向かうと、たくさんのプレイヤーが、まるで虐待にあっているように、モンスターに襲われていた。

「おーい、大丈夫かー?」

『は、はい…………。ですが、相当押されています!! ちょっと、ステータス見てもいいですか?』

 地上にいる、小柄な少年に声を掛けて、私は高度を下げる。

「いいぜ。ま、おまえらとは反映の仕方が違うけどな」


 プレイヤー名:巣籠 明理
 Lv.1
 性別:WOMAN 種族:妖精族
 ジョブ:エルフソードマン
 国民番号:005791871
 HP:17.895
 ATK:24,700
 DEF:37,690
 MAT:25,631
 MDE:43,185


「国民番号にしては、とても低いですね。このイベント中は、数値が数倍上がると聞きましたが…………。これでは、一緒に戦ってもらうことは、許可…………」


 ――グゥゥゥ…………。


「ん? 許可できねぇってか? 普通にこいつら雑魚じゃないか!!」

「えっ? 明理さん、さっきなんと言いましたか?」

「私はただの雑魚と言った。私にゃ屁でもねぇぜ。あ~。ん~。やっぱこの武器じゃ物足んないなぁ~。もっと弱い武器ってあるか? できれば、攻撃力1桁のやつ」

「ひ、1桁!? な、なくはないですが、1桁ですか!? まさか本当に、1桁の武器を使おうとする人が、いるなんて…………」

「あともう1つ言っておく。私のプレイヤーネームは、ルグア。【アンゲーム・ブラスター】のルグアだ」

「…………。ってあのルグアですか?! ということは、ここにいるみんなよりも、能力値が低いのは納得できます。確か、負荷も比べものにならないくらい、強力なのを常に受けていると聞きましたが、本当ですか?」

「もちろんだ」

 私は、少年と話しながら次々と敵を倒していく。HPの減りが激しいが、問題ない。むしろこの方が鬼畜ゲーとして成り立つ。

「明理さん、この武器はどうでしょうか? なかなか長剣が見つからなくて…………。武器種違うと大変ですよね?」

「種類が何か教えてくれないか?」

「えーと。ゆ、弓です。剣と弓じゃあ戦い方も違うし、いらな…………」

「その武器、使わせてくれ。一応定番武器、定番じゃない武器も全部使えるからさ」

「わ、わかりました……」

 少年から弓を受け取って、魔法で矢と矢筒を生成。試しに矢を射ると、最弱武器ならではの命中率の低さに、思わず笑ってしまった。。
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