インステニート 〜インフレ・ステータスじゃなくても規格外のニート少女で、ぶっきらぼうに話す私は異世界からの転生者でした

八ッ坂千鶴

文字の大きさ
上 下
46 / 48
第3章 150年の月日

第46話 街を活性化(WM46年)

しおりを挟む
 ガロンとセレス、レーナの3人は、努の街を歩いていた。理由は、世界大戦で活気がなくなったからだ。

「そういえば、あなたたちのリアルネームは教えてもらったけど、アタシの名前は伝えてなかったわね」

「ですね。今思ったのですが。この前、自分のことを『わたくし』って言っていませんでしたっけ?」

「あの時はあの時よ。今では、無関係だわ」

 セレスの質問に、冷静に答えるレーナ。わたしは、そんな2人のやり取りを聴きながら、広場に向かう。

 努の街は、地上と地下に拠点があり、基本的に地上を中心として機能している。

 エリアも複数別れていて、大きく分けて北の【ノースエリア】、南の【サウスエリア】、西の【マーケットエリア】、東の【インダストリアルエリア】、中央と地下の【タウンエリア】の5つ。

 さらに詳しくすると、サウスエリアには、運搬船等の発着地。ノースエリアには、〈アナグリム・ノワール〉の小屋。

 マーケットエリアは、野菜等の畑。インダストリアルエリアには、鉱山があって、それぞれに適した環境になっている。

 だが、最近不作が続き、住民の笑顔が消えていたため、活気を戻すために街を歩いている。

「セレス、ガロン。自己紹介いいかしら?」

「いいですよ」 「はい、お願いします」

「じゃあ。アタシの本名は東間麗奈。プレイヤー名は、そこから取ったものなの」

 女3人、タウンエリアを見回りながら街を活気づける方法を探す。そして、中央広場に行くと、やけに騒がしい声がしていた。

 良く見ると、人だかりができていたのだ。エルフのわたしは空を飛び、中心を確認する。

 老若男女問わず盛り上がっていて、安全高度の100mでも、やっと視認できるかできないかくらい。

 何とか中心を見ることができたが、そこにいたのは、ルグアだった。

『おっ!! ガロンたちも来ていたのか!!  よかったら見ていけよ? 今から魔法で面白いことすっからさ』

 たったの高度100mという低い位置にいるのに、ルグアが気づいたのは驚いてしまう。加えて、ちょうどやることが終わっていたので、ここは甘えて見ることにした。


◇◇◇◇◇◇


「んじゃ、早速始めるか…………」

 まさか、ガロン達に会うとは思ってなかった。私としてはどうでもいいことだが…………。


 ――Z+魔法 ジャッジメント・オーシャン・ラビリンス!! フロル・ラビリンス!!

 ――マジックガトリング絶!! 吹雪!! 同時展開!!

 ――ガトリング!! ラピットファイア!!


 魔法で発生させた、台風と津波。台風は津波の水を巻き上げ水しぶきを上げて雨になり、数多の氷結弾が水滴を凍らせる。

 そして、凍った水滴は雪になって降り注いだ。手間と強い負荷がかかる方法ではあるが、少しでも住民の笑顔を取り戻すには、こうする必要があった。

 住民達の反応はというと、盛り上がり具合は上々だ。努の街は雪が降らないので、きっと珍しいのだろう。

 たちまち、街全体が雪で覆われ、白一色の銀世界になった。住民は、不思議そうに雪を踏みしめ、ザクザク、ズクズクと音を立てて遊び出す。

 すると、突然遠くから雪玉が飛び始め、良く見ると、ガロン達が的を定めずに住民へ投げつけていた。

 住民は慌てて逃げ回るが、ただ1人意味を理解した男児NPCが、見よう見まねで雪玉を作り、投げ返す。

 それを見た他のNPCも、同じように雪を掻き集めて投げる。人数が人数で、広場の周辺だけ雪が無くなり、私は追加で降雪量を増やした。

 しかし、瞬く間に雪が減ってしまう。なんせ、全体の80%の953人が参加しているのだ。

 ここまで好評だとは思わなかった。最初の特異点のウェンドラに提案した、"魔法発動時負荷5000倍反映倍率100%"は、少し前に変更して、現在は、"負荷10000倍反映倍率250%、常時適用"にしてもらっている。

 なので、魔法を使うと解除するまで負荷がかかり続ける。通常の周波数を0.6Hzヘルツと仮定して計算すると、6000Hzの負荷になる。

 ありえないことだが、ウェンドラが生み出した〈レコード・ノート〉だからこそ、可能にしてしまう。

 それにも関わらず生きている私も、普通ならありえないことなので、全く気にしていない。

 と言うのも、負荷による脳への刺激で遊んでいるのだから。時々、「どういう遊びをしてるんだ!!」と、自問するが、全て「どうでもいいや」で放棄している。

 雪はどんどん積もり、気付けば住宅を覆いつくして1階が見えなくなっていた。

 雪合戦もデットヒートを繰り広げ、自然と半分に分かれた2つのチームは、どちらが勝ってもおかしくないほど、熱くなっている。

 私も、こうしてはいられないと、さらに量を増やして、熱狂に満ちた戦いを盛り上げた。


 雪合戦が終わり、すっかり落ち着いた中央広場。雪が積もり積もって住民は帰ることが困難な状況になっていた。

 このゲームには除雪機は存在しない。対して、人の手で除雪するにも、積もった雪の高さは40mを超えているため、時間がかかってしまう。

 加えて、火属性の魔法を使うと、一瞬で洪水になって危険だ。別に、魔法解除スペルクリアでチャラにすることもできるが、ここはぜひ、雪掻きを体験してもらいたい。

 でも、これでは作業もままならない。そう考えた私は、ガロン達3人に加え、偶然居合わせていた兄ルクスとガイアの5人を一括で、雪の上まで移動させた。

 明らかに人数オーバーだが、正確には、レーナとセレスを両脇、ガロンは背負って、ルクスとガイアは浮遊魔法で浮かばせた。

 私以外の5人には低温燃焼魔法を使ってもらい、私は虚無魔法で解けた水を除去。

 積雪量が5mを切ったあと、魔法で雪掻き用のスコップを準備。住民全員に行き渡ってから、本格的な除雪作業を始める。

 人数が多かったのでので、作業はあっという間に終わった。住民達はみんな笑顔で帰っていく。

 以降、このイベントは毎年恒例になって、日に日に活気が戻っていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】

一樹
SF
ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。 しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。 ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。 以前投稿した短編 【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて の連載版です。 連載するにあたり、短編は削除しました。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【おんJ】 彡(゚)(゚)ファッ!?ワイが天下分け目の関ヶ原の戦いに!?

俊也
SF
これまた、かつて私がおーぷん2ちゃんねるに載せ、ご好評頂きました戦国架空戦記SSです。 この他、 「新訳 零戦戦記」 「総統戦記」もよろしくお願いします。

海道一の弓取り~昨日なし明日またしらぬ、人はただ今日のうちこそ命なりけれ~

海野 入鹿
SF
高校2年生の相場源太は暴走した車によって突如として人生に終止符を打たれた、はずだった。 再び目覚めた時、源太はあの桶狭間の戦いで有名な今川義元に転生していた― これは現代っ子の高校生が突き進む戦国物語。 史実に沿って進みますが、作者の創作なので架空の人物や設定が入っております。 不定期更新です。 SFとなっていますが、歴史物です。 小説家になろうでも掲載しています。

処理中です...