インステニート 〜インフレ・ステータスじゃなくても規格外のニート少女で、ぶっきらぼうに話す私は異世界からの転生者でした

八ッ坂千鶴

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第2章 WWM 〜世界魔法大戦〜

第39話 賑やかな我が家、昆虫駆除に兵庫県へ

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(なんでこうなったんだ!!)


「ウェンドラさん。ギルドの制服です。どうですか?」

「サイズはピッタリね。ありがとう、ガロン」


(なぜ、こうなったんだ!!)


「お姉ちゃ~ん。一緒にグリちゃん観ようよ~♡」

「わかった。今、そっちに行く」


(どうしてこうなったんだ!!)


「おい!! 普通、楓と私は敵同士なんだから、ギルメンなる必要なくね!!」


 本音が漏れてしまった。間違ったことは言っていない。むしろ、これが正しい展開なのだから。


「アンゲーマー、ぼく達のギルド宛で新しい依頼が来ていますよ」

「そうか……、っていうより、メンバー増えすぎだろ!?」


 これも、間違えではない事実だ。兄のルクスこと巣籠陸。パーティ結成経験のある、ガイアこと櫻井奏。

 親友のセレス/三上輝夜かぐやとガロン/碓氷沙耶華。セレスのいとこ、ノアン/田室井綾人。

 元クラスメイトの船岸藍、双子の姉・船岸楓。古き戦友のレーナ。ルグアファンのルナ・フランク。

 WWMゲームマスターのゼアン。ギルド最年少メンバー、ノンノ。街の管理人、須田努。

 別宇宙の地球から来た、井出彰。WWMのNPC、フェンリル。

 VWDLから来た、私のテイムモンスター、クリムことクリムゾン・ドラゴン。なぜかログインしている、作者のディガル――ゲーム内なのでガデルだが……。

 合計で15人+1体+私=17人。そんなに大きくはないものの、1人で面倒を見切れるか、心配になってきた。

 少し離れた場所には、アナグリム・ノワールの小屋。私の自宅には、鍛治部屋兼ルグアの部屋。

 高温の室内と外気の差には、完全に慣れていた。今では、ログアウト時に、脳のラグが起きないか、心配になっているくらいだ。


「そんで、ルナ。新しい依頼ってのはなんだ?」

「はい。今度は、兵庫県の方で昆虫種の小型モンスターが、群れを作って襲っているとのことです」

「虫か…………。それって、飛行型だよな?」

「はい、どうしますか? アンゲーマー」


 それにしても、愛称も増えた。ルナは『アンゲーマー』、ルクスは『先輩』、藍は『りんりん』、ガロンとゼアンは『モードレ』。

 ノンノは『モルっち』。他にも、『様』やら『殿』やら、もう、何がなんだかわからない。っというのは置いといて、


「ルナ。一緒に行くか? 私と2人でさ」

「いいんですか?」

「ああ。斬撃武器のコツ、教えてやるよ」


 そう言って家を出たが、空に飛び立つ前に私は、


「楓、藍のことよろしくな!!」

「わかりました。お任せ下さい」


◇◇◇◇◇◇


 私はルナを抱え、日本列島を西に向かって飛行していた。


「アンゲーマー。兵庫まで、あとどれくらいですか?」

「ん? …………そうだな~、今のペースだと20分、全速力だと1分ちょいってとこだ。ルナがはぐれないように、速度を落としてるからな」


 高速移動に馴れない人は、酔いやすい。実は、VR酔いにも種類がある。

 ログイン直後の仮想酔い。地上移動時のジャイロ酔い。飛行時の飛行酔いの3つ。

 仮想酔いした人は、そのタイミングでやめた方がいい。

 これらは全て私の見解のため、鵜呑みにする必要はない。


「ぼくは、早く助けたいです。少しでも多く救った方が、笑顔になれるので」

「わかった。しっかり掴まってろよ!!」


 私は、必死にへばりつくルナを引き寄せて、飛行魔法を全開にする。

 やがて見えてきたのは、黒や茶色のまだら模様になった、兵庫県。ゲーム内なので、リアルは関係ない。


「速い!! アンゲーマーはどうして、こんなことが…………」

「まあ、誰でも出来ることだと、私は思うけどな。ただ、意思が強いだけだ」


 フルダイブゲームでは、思考力が重要になっている。それは、想像力も加わっているため、より素早く判断や処理をするほど、正確に反映される。

 視界には、大量の虫の群れ。着陸を試みたが、地面どころか、建物すら見当たらない。


「アンゲーマー、どうしますか? 地上に降りなければ、ぼくは戦えません。種族がエルフじゃなくて、普通の人族…………」

「大丈夫だ。安心しろ!! 私が、浮遊魔法の永続バフをかけてやるからさ。私の負荷がやばいことになるだろうが…………」

「……それって、どういうことですか?」

「実はだな。魔法詠唱時、他メンバーより5000倍強い負荷が、かかるようになっているんだ」


 私は、ルナを信じた。信じることが出来なければ、こうして、伝えることはない。


「まあ、どうってこともねぇんだが…………。痛覚への威力がさ」


 正直に話す。語りきる。空中でホバリングをしているだけでも、飛行魔法のため、詠唱時の負荷が常時発生。

 戦闘中は、エルフの羽根を使用するが、場合によっては魔法に切り替える。

 そうしている間にも、虫の数が増え続けていた。このままでは、私が嫌いな、めんどくさい状況になってしまう。


「ルナ、一旦この場で離す。2秒後にバフを付与するから、わかったか?」

「了解です」


 ルナの返事で腕を解く。落下していく彼は、すぐにふわりと浮いた。

 それと同時に、脳への負荷は倍増。激痛は予想を遥かに上回り、核心部分にノック音が鳴り響く。

 最初は、意識と魔法を維持するのがやっとだったが、しばらく経つと馴れ始める。

 もしこれが、Z+魔法の同時詠唱だったら、ひとたまりもないだろう。考えただけで虫唾が走るが、いずれその時が来るかもしれない。


「……んじゃ、めんどくせぇことになる前に、終わらせるか……」

「ご指導よろしくお願いします!!」

「おう!! 任せとけ!!」


 左手に〈クリムゾン・ブレード〉、右手にルナが使う用の特注品〈ダレン・ブレード〉。

 〈ダレン・ブレード〉は、ルグア製第2号だ。ルナに渡すと、嬉しそうに、素振りを始めた。

 だが、少々ぎこちない。まるで、小学生のチャンバラごっこ。

 これを、最前線に立てるようにするには、骨が折れるほど大変かもしれないと、私は悟った。
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