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第2章 WWM 〜世界魔法大戦〜
第38話 ガデルのノート、ルグアvs最初の特異点
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「これって…………」
――ガデル。勝手に書き込んですまない。もとはと言えば、藍なんだけどさ……。こっから先のバトルは、任せてくれ。
「えっ?!」
――その、ノートに書かなくていいと説明した方が、しっくりくるか……。実は、面白いことを思いついたんだ。隠蔽はしてある。安心して欲しい。
執筆用のノートに刻まれた、主人公が書いた文字。主人公が作者のノートに書く日が来るとは、思っていなかった。
ノートのページをめくり、読み進める。そこには、ルグアが書いたのだろう、今後のシナリオがぎっしりと詰め込まれていた。
1ページだけではない。ノートの最後のページまで、文字で埋まっている。
さらに、私が事前に考えていた、別のゲームの詳細設定や、攻略の進行状況まで……。
はじめは、ルグアがやりたいことだけを、書いているのだと思った。
だが、細かい描写やテンポ、彼女自身の挫折や立て直しまで、一執筆者の目線で書かれている。
でも、セリフまではいかないようで、どちらかというと、シナリオチャート。物語の流れだけだ。
「なんでここまで…………。これはただの空想物語だったはずなのに、まるで、現実世界を描いているようにしか…………」
あとは、作者である私が、より詳しく肉付けしていけばいいだけなのだ。
バトルは書かなくてもいい。ルグア達が、思うがままに綴ってくれるから。
私は、ルグアが書いた内容を、1つの物語として、成立させればいい。
そして、ノートの下には同じ表紙のノート。開くと真っ新なページ。
ルグアの記述はまだ続く。
――あと、ストーリーが浮かび過ぎて、ページ全部使っちまったから、全く同じやつのコピーを6冊用意した。消えないようにはしてあるから、好きに使ってくれ。
「…………う、うぅ~。あり……がとう…………。大事に…………使います……」
瞳から零れる水晶が、薄い用紙を濡らしていく。筆は、ルグアのシナリオを使い、新しいノートに書き込んでいく。
物語は、進み続ける。私にも、どこまで書けるかわからない。けれども、私は今までのキャラクター達を見捨てたくない。
物語は、進み続ける。戦いや出会いと別れ。そのような物語を私は書きたい…………。
◇◇◇その頃ルグアは◇◇◇
「楓、試しに一戦しないか? もう、書き換え終わったんだろ?」
光のダンジョンに近い、サバンナ地帯で、楓と交渉していた。
「ええ、いいですよ。自分はとても強いので、手加減を…………」
「不要だ。私は本気のバトルが好きだからさ。ほら、本気でかかってこいよ!!」
相手を挑発して煽り、攻撃を待つルグア。楓は、慎重に武器を取り出す。
柄は両手で持てるサイズで、刀身はとても長く細い。太刀だろうか……。
ルグアも、愛剣の〈クリムゾン・ブレード〉を手に持ち、構える。
そして、2人は同時に刃をぶつけた。
――カキーン…………。
刃と刃が叩きつけられる金属音が、サバンナにこだまする。激しい剣戦。楓の動きは予想よりずっと速い。
けれども私はまだ、本気を出していない。出さなくても、なんとかなるから。
「なかなかやるじゃないですか? ですが、自分の本気はここからですよ? 着いていけますか?」
楓が、黒く禍々しいオーラを纏う。動きもさらに速くなる。ぶつけた時の剣の重さも…………。
その重さは、〈クリムゾン・ブレード〉の倍以上。すぐに体勢が崩れる。
(シナリオ通りだ)
私が書いた内容には、倒れるまでのシナリオは書いたが、勝つまでのシナリオは、書いていない。
勝ちルートは、私自身が作る。
ガデルには申し訳ないことをしてしまった。
「ほんとすまねぇ…………」
「なにか言いましたか?」
「いや、なんでもねぇよ。続けようぜ」
楓の切り返しを、勘が先に予想する。私は、その攻撃をわざと受けて、HPを消費。反映してもらった負荷が、脳全体にかかり、激痛が走る。
でも、気にしない。これが私の目的なのだから。藍が書いた内容は、私の脳についてのことだった。
その数値は、ありえない数字だった。今言えば、ストーリーが大変なことになるため、話すことはできないが…………。
「ルグア、先ほどの攻撃をなぜ受けたのですか? これで、一度負荷を与えられ、しばらく動けないはず…………」
「…………それは、…………どうかな?」
私のゲーム機には、リミッターがいくつかある、特注品。というか、運営が没にした試験品だ。
3ヶ月前まで、兄が買ったゲーム機を使っていた。
その後、運営が直接ゲームをインストールできるようにするため、贈られたデバイスを、今使っている。
だが、運営の手違いで贈られてきた試験品で、リミッターが多い。使用者の意思で解除やロックがかけられるのが、特徴だ。
そうしている間に、私のHPはほとんど消えていた。
(そろそろだな)
「楓、魔法使ってもいいか?」
「ええ、いいですよ。自滅は目に見えてますが…………。この一撃で、貴方のHPは……全損…………」
――Z+魔法 ジャッジメント・レイ・ラビリンス!!
辺り一面緑が広がる。Z+魔法=特異点魔法。自然に最上級魔法として定められた。
鳴り響く雷鳴。天の怒り。相手は1人だけなので、範囲は狭い。
落雷が、楓を目掛けて降り注ぐ。その間に私は回復魔法で、HPを満タンにして、寸止めで刃を向ける。
「ま、こんなもんかな? これでわかっただろ? 私は、戦争以外で害の無い人は倒さない。相手が何考えてんのかはどうであれ、私の実力でわかるんじゃないか?」
「それは、一体何のことでしょう? 自分には、よくわかりません。ですが、敵という考えは、この戦いを通じたとしても、変わらない」
楓が、太刀で勢いよく薙ぎ払う。その反動を使い、私は回転をかけて、太刀を弾く。
「なら、私が全てを覆す。お前が私を殺して世界を戻すか……。私の仲間たちが、別の方法で元に戻すか…………。勝負だ!!」
この発言に、楓が少し俯き、しばらく考えたあと、
「では、その勝負。引き受けましょう」
新たな戦いが始まった?
――ガデル。勝手に書き込んですまない。もとはと言えば、藍なんだけどさ……。こっから先のバトルは、任せてくれ。
「えっ?!」
――その、ノートに書かなくていいと説明した方が、しっくりくるか……。実は、面白いことを思いついたんだ。隠蔽はしてある。安心して欲しい。
執筆用のノートに刻まれた、主人公が書いた文字。主人公が作者のノートに書く日が来るとは、思っていなかった。
ノートのページをめくり、読み進める。そこには、ルグアが書いたのだろう、今後のシナリオがぎっしりと詰め込まれていた。
1ページだけではない。ノートの最後のページまで、文字で埋まっている。
さらに、私が事前に考えていた、別のゲームの詳細設定や、攻略の進行状況まで……。
はじめは、ルグアがやりたいことだけを、書いているのだと思った。
だが、細かい描写やテンポ、彼女自身の挫折や立て直しまで、一執筆者の目線で書かれている。
でも、セリフまではいかないようで、どちらかというと、シナリオチャート。物語の流れだけだ。
「なんでここまで…………。これはただの空想物語だったはずなのに、まるで、現実世界を描いているようにしか…………」
あとは、作者である私が、より詳しく肉付けしていけばいいだけなのだ。
バトルは書かなくてもいい。ルグア達が、思うがままに綴ってくれるから。
私は、ルグアが書いた内容を、1つの物語として、成立させればいい。
そして、ノートの下には同じ表紙のノート。開くと真っ新なページ。
ルグアの記述はまだ続く。
――あと、ストーリーが浮かび過ぎて、ページ全部使っちまったから、全く同じやつのコピーを6冊用意した。消えないようにはしてあるから、好きに使ってくれ。
「…………う、うぅ~。あり……がとう…………。大事に…………使います……」
瞳から零れる水晶が、薄い用紙を濡らしていく。筆は、ルグアのシナリオを使い、新しいノートに書き込んでいく。
物語は、進み続ける。私にも、どこまで書けるかわからない。けれども、私は今までのキャラクター達を見捨てたくない。
物語は、進み続ける。戦いや出会いと別れ。そのような物語を私は書きたい…………。
◇◇◇その頃ルグアは◇◇◇
「楓、試しに一戦しないか? もう、書き換え終わったんだろ?」
光のダンジョンに近い、サバンナ地帯で、楓と交渉していた。
「ええ、いいですよ。自分はとても強いので、手加減を…………」
「不要だ。私は本気のバトルが好きだからさ。ほら、本気でかかってこいよ!!」
相手を挑発して煽り、攻撃を待つルグア。楓は、慎重に武器を取り出す。
柄は両手で持てるサイズで、刀身はとても長く細い。太刀だろうか……。
ルグアも、愛剣の〈クリムゾン・ブレード〉を手に持ち、構える。
そして、2人は同時に刃をぶつけた。
――カキーン…………。
刃と刃が叩きつけられる金属音が、サバンナにこだまする。激しい剣戦。楓の動きは予想よりずっと速い。
けれども私はまだ、本気を出していない。出さなくても、なんとかなるから。
「なかなかやるじゃないですか? ですが、自分の本気はここからですよ? 着いていけますか?」
楓が、黒く禍々しいオーラを纏う。動きもさらに速くなる。ぶつけた時の剣の重さも…………。
その重さは、〈クリムゾン・ブレード〉の倍以上。すぐに体勢が崩れる。
(シナリオ通りだ)
私が書いた内容には、倒れるまでのシナリオは書いたが、勝つまでのシナリオは、書いていない。
勝ちルートは、私自身が作る。
ガデルには申し訳ないことをしてしまった。
「ほんとすまねぇ…………」
「なにか言いましたか?」
「いや、なんでもねぇよ。続けようぜ」
楓の切り返しを、勘が先に予想する。私は、その攻撃をわざと受けて、HPを消費。反映してもらった負荷が、脳全体にかかり、激痛が走る。
でも、気にしない。これが私の目的なのだから。藍が書いた内容は、私の脳についてのことだった。
その数値は、ありえない数字だった。今言えば、ストーリーが大変なことになるため、話すことはできないが…………。
「ルグア、先ほどの攻撃をなぜ受けたのですか? これで、一度負荷を与えられ、しばらく動けないはず…………」
「…………それは、…………どうかな?」
私のゲーム機には、リミッターがいくつかある、特注品。というか、運営が没にした試験品だ。
3ヶ月前まで、兄が買ったゲーム機を使っていた。
その後、運営が直接ゲームをインストールできるようにするため、贈られたデバイスを、今使っている。
だが、運営の手違いで贈られてきた試験品で、リミッターが多い。使用者の意思で解除やロックがかけられるのが、特徴だ。
そうしている間に、私のHPはほとんど消えていた。
(そろそろだな)
「楓、魔法使ってもいいか?」
「ええ、いいですよ。自滅は目に見えてますが…………。この一撃で、貴方のHPは……全損…………」
――Z+魔法 ジャッジメント・レイ・ラビリンス!!
辺り一面緑が広がる。Z+魔法=特異点魔法。自然に最上級魔法として定められた。
鳴り響く雷鳴。天の怒り。相手は1人だけなので、範囲は狭い。
落雷が、楓を目掛けて降り注ぐ。その間に私は回復魔法で、HPを満タンにして、寸止めで刃を向ける。
「ま、こんなもんかな? これでわかっただろ? 私は、戦争以外で害の無い人は倒さない。相手が何考えてんのかはどうであれ、私の実力でわかるんじゃないか?」
「それは、一体何のことでしょう? 自分には、よくわかりません。ですが、敵という考えは、この戦いを通じたとしても、変わらない」
楓が、太刀で勢いよく薙ぎ払う。その反動を使い、私は回転をかけて、太刀を弾く。
「なら、私が全てを覆す。お前が私を殺して世界を戻すか……。私の仲間たちが、別の方法で元に戻すか…………。勝負だ!!」
この発言に、楓が少し俯き、しばらく考えたあと、
「では、その勝負。引き受けましょう」
新たな戦いが始まった?
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