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第2章 WWM 〜世界魔法大戦〜

第33話 受注クエスト:エネミー雪崩警戒区域

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――とは言ったものの…………。


「りんり~ん♡ どこまで歩くのぉ~?」

「なんで、お前だけ着いて来てんだよ!!」


 私の背中を追ってくる藍に、力強いツッコミを入れて、ため息をつく。

 藍はどうしても、私の近くに居たいらしい。自分の本音は、1人で素早く終わらせたいのだが、そう簡単にはいかないようだ。


(まあ、藍がどこまで着いていけるのか、試してみるか…………全てはそこからだな)


 ルグアは、藍を残して最大加速の5000倍速で駆け抜ける。目的地は、青森県の津軽地方。

 今回は、飛行船等を使わずに徒歩で移動していた。理由は、基本ソロで活動するのが1つ、もう1つは、乗り物扱いにされたくないという、自分のわがままである。

 ルクスやセレス、努たちは、しっかり受け止めてくれたが、約1名話を聞かない人がいた。

 そう、問題児の藍のことだ。彼女は、確かに戦いの腕はとても良い。でも、この案件、建物や自然等への被害を最小限に抑えるという難題付き。

 爆破魔法と投擲しかできない藍には、相性が最悪だった。そのため何度も、拒否の弁を述べたが、勝手にくっついてきたわけだ。


(ま、普通の徒歩じゃ6日以上かかるから、その頃には解決するだろうし……)


 等倍速から×5000倍。舗装されていないゲーム内では6日以上かかる旅路も、数分で踏破できるスピード。

 白神山地を通り過ぎると、モンスターで溢れ返った村を見つけた。

 向かって正面に、村長らしき高齢男性が手を振っている。


「ルグア様!! こちらでございます。どうかお助けを…………」


 ボロボロに破れた衣服を身につけていることから、絶大な被害に見舞われているようだ。

 ルグアは、ボールのように転がる生き物を指差し、こう問いかけた。


「じいさん、敵はあのアルマジロみたいなやつか?」

「ええ、そのモンスターです。名前は〈アナグリム・ノワール〉。最近繁殖力が増して、手に負えなくなり、依頼しました」

「そういうことだったのか…………。ん? うわやべっ!? 拠点に武器置いて来ちまった。なにか代わりになるものは…………。じいさん、素手で戦ってもいいか?」

「構いませんが、〈アナグリム・ノワール〉は、人肌に触れた瞬間、コンクリート造りの建物を消し炭にするくらい強力な電流を…………」

「ハハハ、それおもしれぇじゃん。決めた、やっぱ素手でやる!!」


 両手を胸の前に持っていき、敵の方向に身体を向けた。

 続いて、無言魔法で自分に注目を集めると、〈アナグリム・ノワール〉が一直線にルグアの方へ転がってくる。

 1体ではなく、一度に50体。もちろん、まとめて相手するしかない。

 加速を最大で使うと、運搬ほどではないが、膨大な疲労感に襲われるが、短時間で到着したことで回復済み。


  ――ウュウォーン!!


 可愛いらしい、子犬のような鳴き声が、村全体に響き渡る。けれども、それは害獣の声。

 迫りくる〈アナグリム・ノワール〉を、黒髪の少女が拳で弾き飛ばす。

 津軽地方の村は、何とか生活できるのではないか、と言っても過言ではないほど損傷が激しい。

 穴だらけの住宅、焼け焦げた小屋と思われるいびつな建物、枯れ果てた井戸の水。

 空っぽの商品棚、引っかかっているのがやっとの割れたハンガーラック。

 異臭が漂う家畜の死骸。これらは、全てモンスターの仕業に違いない。

 目の前で、つぶらな瞳を輝かせる子供の〈アナグリム・ノワール〉が、戦意がないことを訴えてきた。

 私も殺したくはない、ないけど倒さねばならない。その場で屈み子供の頭を優しく撫でる。


 ――ビリビリッ!!


 芯まで伝わる電流が、ルグアの身体に流れ始めた。彼女の脳にも同様な影響を与えるが、撫でるのをやめない。


「ルグア様。一体何をされて……。おや? 敵が襲って……来ませんね」


 私も気付かなかったが、確かに他の〈アナグリム・ノワール〉は、足を止めて立ち上がり子供を見守っている。

 と、その時。


『りんり~ん!! 速いよ~、でも追いついてよかった~♡』


 遠方から、置き去りにしたはずの藍が、なにかをばら撒きながら猛ダッシュで駆け寄ってきた。

 ルグアが、東京から津軽地方まで、約37分。対して藍は、20分後に到着。

 自分の勘がここで初めてハズレを引いた。後日、ルクスこと兄の巣籠陸に、地形情報を加えて計算してもらったところ、

 685km=142時間+山道5箇所各40分仮定で3時間=145時間=6日と1時間

 その先は、細かく計算しすぎで何一つ理解出来なかった。


 ◇◇◇◇◇◇


 ずれたので、現在に戻す。ルグアは、藍がばら撒いている物が気になっていた。


「なあ、お前何やってんだ?」

「これのこと~? グリちゃんの餌だよ~、ねぇ? グリちゃん飼いた~い!!」

「はぁあ?」


 害獣をペットにできるわけない、と思ったが、撫で続けたことで完全に懐いたのが1個体。


「連れて行こうよ~」

「しょうがねぇなぁ~。…………全部引き取るか…………」


 私以上にわがままで、自分勝手で、自己中で、歯向かうと機嫌を悪くする藍の言うことは、絶対守らなければならない。

 というのも、反対しても言うこと聞かないし、拒絶すると精神暴走で、被害が拡大しかねない分、めんどくさいことになるからだ。

 ルグアは、藍に餌付けを頼み、通常飛行で東京に戻った。


 ◇◇◇◇◇◇


「って、ことで~、前回に引き続き、みんなの底辺アイドル、藍がお送りしま~す」


 ◇◇◇◇◇◇


 はい、ハート♡


(いらねぇわ!! あとまたやんのかよ……。ファンサービスほどほどにな。 by.ルグア)


 おけおけ、了解!! それじゃあ行っくよ~!!


(絶対わかってねぇだろ。by.ルグア)


 東京に戻ったりんりんは、早速空き地を見つけて、耐電付きの巨大牧場をその日のうちに建設!!

 群馬県1つ分の牧場は、餌箱や餌の栽培施設などなど、様々な設備が整っているんだよ~。

 そして、ルグア特製の巨大ケージに、約200万匹のグリちゃん入れて、牧場に放牧!!

 なんということでしょう!? グリちゃんたちが、のびのびと生活を始めたではないですか……!!


(何とか○○○、みたいな語りになっているのは気のせいだよな。 by.ルグア)


 餌箱に向かって転がるグリちゃんかわゆい♡ 転がりながらじゃれ合うグリちゃんかわゆい♡

 丸まってコロコロ転がって昼寝するグリちゃんかわゆい♡ 寝返りうって転がり落ちるグリちゃんかわゆい♡

 転がりながら跳ねるグリちゃんもかわゆい♡


(さっきから、転がってばかりじゃねぇか!! by.ルグア)

(モードレさんと藍さん、コンビ組んでも良さそうなくらい、息ぴったりです。 by.ガロン)


(組むわけねぇだろ!! リアルの私がどう思っているは、わからないが……。 by.ルグア)

(いいよ~♡ by.明理)

(マジかよ!! ってか、どうやって干渉してきたんだよ!! by.ルグア)


(ルグアさんって、二重人格者なのでしょうか? by.セレス)

(違うわ!! ・違います!! ルグア&明理)


 それは、置いといて…………。


(でも、リアルの私はツッコミ苦手だからよろしくね~。 by.明理)

(丸投げかよ!! 嗚呼、めんど……。 by.ルグア)


 ねぇ、これで説明終わりだけど、みんな話聞いてる~?

(聞いていませんでした……。 by.全員)


 ◇◇◇◇◇◇


「ということで、次回予告!! 次回は、りんりんからの依頼で、武器強化素材集めだよ~」


 ポジティブ過ぎる藍が、堂々と発表する。みんなは顔を合わせて、ガイアが、


「なぜ、ルグアさんが依頼したのですか?」


 と、問いかける。


「それはだな。日本軍全員の装備を新調しようと思ったからだ。もちろん、手伝ってくれるよな?」

「「はい!!」」


 私の回答にみんなが頷き、


「おふざけ、お遊び禁止で、集中して作業してくれ!!」

「「了解しました!!」」


 そして、ルグアの我が家は、私とフェンリルの2人だけになった。
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